きらめき高校吹奏楽部 ~もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら~ 再会
ごめんなさいw
こんちは。
本当にごめんなさい!
この小説読んでる人で渡瀬 公一のファンがいらっしゃったら申し訳ないです本当に。おられなかったら幸いなんですけど…。
渡瀬 公一を出したんですけど、まったく中身が違いますw
竹崎先輩や池上先輩はそのままで出したんですけど、渡瀬の場合はオリキャラになっちゃいました。ごめんなさい。
なんでこうしたかって言われると…完全にぼくの趣味というかノリなので、本当になんとも言えないです。
ひとつ言うことがあるとしたら、よくある「小説に自分を出す」みたいな奴の延長線で書きました。
ぼくは勿論あんなことやこんなことを言ったりするキャラではありませんし楽器もそんなに上手なわけではありませんが、立ち位置としては自分のつもりで書いています。あっ意味がわかりませんよね、そのうち詳しく説明しようと思います。
いつにも増して意味不明な前書きになってますが、本当すいません
では
以下本文
----------------------------------------------
それから食事を済ませ、席を立って店を出ようとした時、華澄さんは急に「あっ、ごめん。ちょっと待っててくれるかな?」って言い出した。どうやら、誰かから電話がかかってきたらしい。
「あっ、うん」
「ごめんね」
彼氏からかな?
…居るか居ないかもわからない華澄さんの交際相手のことを想像しながら、俺は遠ざかっていく背中を見て、ちょっとだけ溜め息をつく。
別に俺が華澄さんと付き合えるなんてまったく思ってないし、居たって居なくたってかまわないけど、なんかなぁ…。だいたい、電話の相手かどうかなんてわかんないよな。学校の人って可能性もあるし。
…それにしても、もう少し食べとけばよかったかな?
1人で席に座ってケータイをいじりながらちょっと思う。
周り見ると、みんな新発売のハンバーガー食べてるし、俺もそれにすればよかったかなぁ。
ほら、なんか前からやってくる若者もハンバーガー食べながら歩いてき……。
……俺と、ハンバーガーを立ち食いしながら歩いてくる男の目線が合う。
その時、まるで誰かに上に持ち上げられたみたいに、心臓がどきっとした。
「あ、あれ?お前…」
「……あァ、久しぶりだなぁ…」
相変わらずのかすれた低いぼそぼそとした声、細い長身、細くて鋭い目、かきあげたような髪型…。
間違いない。
俺はこの若者の名前を知っていた。どんな奴かも、だいたい…。
「渡瀬!渡瀬じゃないか!」
俺がそうこいつの名前を呼ぶと、相手もハンバーガーから口を離し、細い目をより細くして微笑んだ。
「…高見かァ……久しぶりじゃないか」
語尾の方をかすれさせて、向こうも俺の名前を呼んでくる。
こいつはもともと感情を表に出すようなタイプじゃない。コンクールで金賞を貰っても、「それがどうした」っていう
ような顔をしていたような奴だ。
だけど、嬉しそうな顔をするのにはワケがある。
――渡瀬 公一。
…この男は、中学時代俺と同じ楽器だった。
それだけじゃない、俺が「あの出来事」以来グレた時も、俺と一緒にケンカややんちゃをして廻ったような仲だ。
よく先生に怒られたり、受験の心配をされたっけ。
お互い価値観や意見は違うけど、気心はよく知れてる。
こいつの顔を見てるだけで、苦し紛れに何かを探し続けたような中学時代を思い出す。
「大門に行ったあいつ」から連想するそれとはまた違った思い出ばかりだ。
なかなか居場所を見つけるのが難しい、女だらけの吹奏楽部の中で、俺たちはよくつるんで色んな話をしたもんだ。
中学時代はいい思い出ばかりではなかったけれど、頑張った時期でもある。そんな時期を一緒に生き抜いた仲間の顔を見て、俺も嬉しくなった。
「お前、相変わらずハンバーガー食べてんだな」
「……あァ、当たり前だ。
…こいつだけは、世知辛い世の中でも美味いからなァ…」
このボソボソした低くて小さい声。音楽室だと楽器の音にかき消されて全然聞こえなかったっけ。懐かしいよまったく。
表情もあの頃のままだ。殆ど変わらない表情は、「何考えてんのかわかんないしキモい」って女子たちから言われてることもあった。けど、こいつはその実誰よりも、「ある事」に関しては思考を止めることはなかった。
…如何に上手く吹けるか。
こいつは基本練習を「おもしろくねぇ」って言って全然しないから音色が全然だったが、楽器での唄い方が最高だった。
ピアニッシモでもフォルテッシモでも魅せる歌い方ができたし、盛り上げ方もクライマックスの歌いまわしも、何もかもすごかった。数々の講師の先生も、「是非基本練習をした方がいい」って言ってこいつの才能を埋もれさせまいとアドバイスをしたものだった。
だけど、こいつは「面白くないものはやりたくねぇ」ってある意味片桐さんみたいなことを言って、結局基本練習はしなかった。渡瀬の練習からは、ロングトーンのロの字も聞こえてきやしないのは有名だった。
「高見君くらい基礎を積めば絶対もっと素晴らしい
プレイヤーになれるのに」
大門に行ったあいつも、そんな風に勿体なさそうに言ってたっけ。
「……元気だったか?」
「ああ、この通り。そっちは?
ひびきのに通ってんだろ?お前」
俺がそう言うと、ハンバーガーをまた口にして、渡瀬は「……あァ」とまたかすれそうな声で答える。
「……お前ずるいぞ。
俺と散々やんちゃして廻ったくせに、自分だけは
きら高に受かるなんて……」
「はは、それは言うなよ。
俺だって最後の方は努力したんだから」
「……ぁァ、こんなとこでもその差が出るもんだよなァ…。
お前は、つまんねぇ基礎練でもバカみたいに
ずーーっと続けてたからなァ……」
「悪かったな。誰がバカだよ…ったく」
そう言ってお互い談笑する。だが、美味そうにハンバーガーを食べていた渡瀬の手が、ふと止まる。それと同時に、微笑も渇いていった。
「……お前の音は、最高だったからなァ…。
…歌い方はセンスなかったけど」
「一言余計だっつの」
…そう、こいつは良い物は良い、悪い物は悪いってはっきり言う。
だからこそ俺はこいつが好きだったのかもしれない。好雄みたいに気を遣ってくれるのも優しいとは思うけど、中学ん時は、シロクロはっきりつけてくれた方がすっきりしたからな。
だからこそ大門に行ったあいつとはぶつかることもあった。けど、渡瀬は確かに上手いところは上手いから、こっちもそれは認めつつ、悪いところ…つまり基本の脆弱さを指摘するしかなかった。
そこがムカつくんだけどな。
でも、こいつは俺の音を認めてくれた。
練習嫌いの天才が、延々と反復練習をするしか能の無い俺を認めてくれた…俺にとっては、すごく嬉しかったっけ。ただ、今みたいに唄い方については手厳しく言われてたけどさ。
事実、こいつの唄い方には俺も着いていけない。
…TomorrowのSoliが片桐さんじゃなくてこいつだったら、吹くのに必死で俺はジャンプできてなかっただろうな。
…あの頃は厳しい練習だったけど、周りのみんなが上手くなろうとしてた。
渡瀬も、あいつも、俺も…。
厳しくて、辛くて、けど、一生懸命だった。
今のきら高とは比べ物にならないくらい厳しい練習だったけど、県内じゃそれなりに上手かったみたいだもんな、俺たちも。
…そういや、渡瀬は今何してんだろ。
ひびきのに居るってことは、吹奏楽に入ったのかな。爆裂山先生も言ってたけど、ひびきのの吹奏楽は、強いもんな。
「…なぁ、渡瀬。
お前、今部活は…やってんの?」
――俺がそう聞くと、明らかに渡瀬の様子が変わった。
ピクリと顔が少し上がったと思うと、ハンバーガーを美味しそうに食べていた顔に、不満の色がにじんでいく。
「……ぁァ?部活?
…やるわけねーだろ。
……あんな不味いもの、煮ても焼いても食えねーよ」
「えっ、やってないのか。
お前ほどの奴はなかなか居ないのに…」
「…いくら楽器吹くのが美味くても、あれだけはダメだ。
……お前もよく知ってるだろう?
…人が丹精込めて練習して作り上げた音を、
一番太って脂の乗った時に、美味そうに食う連中たちのことを…」
そう言ってハンバーガーばかり食う癖に美食家気取りな言い方で表現した渡瀬の言い方は、かなり遠まわしだが何を言いたいかは伝わった。
あれだけ一生懸命練習したこいつが、こんなに吹奏楽のことを悪く言うなんて。
…無理もない。残念だけど、俺にも否定できないからな…。
「…そりゃ、わかるけど…」
「……もしかしてお前、まだ部活なんてやってんのか…?」
「…ああ、まぁ…」
「おいおい、どうかしてるんじゃないのか?」
渡瀬の声が少し大きく、聞き取りやすくなった。
熱くなっている証拠だ。
「……あそこはな、人が一生懸命やってきたことを
良い様に食い物にする場所だろうがァ……。
それがわかっててなんであそこに戻る?
お前の最高の音を、あんな奴らにご馳走する気かよ……?」
「いや、そんなつもりはない!
…それに、俺はもう以前の俺じゃない。
一生懸命やれば色んなことが見えてくるってわかって…」
「……お前、なァ…。
まァ…そういうこと言う奴ってのはわかってるけどよ…。
……和泉のこと、忘れたわけじゃないだろ…?」
――心臓が喉のとこまで上がってきたかと思った。
それくらい、その名前を聞いた時、俺の心臓が高鳴った。動揺していた。
「……大概にしとけよ。
じゃないとお前…また良いように食われちまうぞ…。
……頭から、むしゃり。
となァ……」
…そう言って、渡瀬はハンバーガーの残りの一切れを美味しそうにぱっくり口に入れる。
…俺は、何も言い返せなかった。
まだ心臓がバクバク言ってる。視界にはもう、店のチェックの床のタイルしか見えてない。
「……まァいいや。
こんな話やめよう。……こいつ(ハンバーガー)が不味くなっちまう。
…また今度ゆっくり話そうや、夏にでも。
じゃあなぁ……」
「あ、あぁ…」
そう言うと、渡瀬はまた新しいハンバーガーを包みから出して、一口目を味わいながら去っていった。
「ごめんね、直人君、お待たせ」
華澄さんが戻ってきて、俺に声をかける。微笑を浮かべてやってきた先生だったけれど、俺の顔を見るなり、なんだか心配そうに顔を覗き込んできた。
「…どうしたの?顔色悪いみたいだけど…。
それに、立って待ってたの?どうしたのよいったい…」
「あっいや…。
ちょっと、偶然知り合いに会って。
それで少し話しただけ」
「…そう?
……何か、言われたの?」
「あっ、ううん、そんなことない!
大丈夫、本当になんともないから。
さっ、きらめきに戻ろうよ」
「え、ええ…」
…帰りの車、俺はまた華澄さんと話をしながら30分を過ごした。
けれど、行きの時に思ったように、風景を見るような余裕はなかった。
…渡瀬に会って、思った。
あいつは、中学の時のままだ。吹奏楽の世界の厳しさをよく思い知って、その認識をしっかりしていた。でも、俺はどうだ?
「俺はもう、以前の俺じゃない」
そう言ったけど、本当にそれは前に進んだって言えるのか?
確かに全校集会を乗り越えて、俺は成長できた。充実感もある。
でも…それは、良い演奏をしたからなのか?
結局は、勝ったから充実してるってとこもある。
そんなんじゃ俺は、またあの時の二の舞になってしまう…。
「…頭から、むしゃり。
……となァ…」
…俺が光や佐倉さんみたいな人たちを吹奏楽に連れてきたことは、悪いことじゃないとは思う。でも、俺だって吹奏楽の厳しさをよく知ってる。…俺は、そんな世界にあの人達を連れてきてしまったのか。
……でも、俺は信じたい。
全校集会で得た充実感は、絶対に人から貰ったものなんかじゃない。
俺が感じたものなんだ。
…どうして和音も決まってないしリズムもばらけてた箇所があんなにあったのに、みんなが歓声を上げてくれたのか、俺も満足して舞台を降りられたのか…。
それはいまいちわからないけど、きっとそこにこそ俺の求めてるものがあるはずなんだ。毎日毎日バカみたいに同じ練習ばっかして、たくさんの時間や可能性を費やして…そうした末に見たいものが。
「さて、もうすぐ高見家の前ね」
「あっ、うん」
[目的地、周辺です]
これから野球応援があって、吹コンがあって…。
俺は本当に成長できたのか、以前のままじゃないのか、これから試されていくんだ。
「じゃあ、直人君。今日はお疲れ様」
「華澄さんも、運転ご苦労様。
…ハンバーガー、ご馳走さまでした」
「ふふ、どういたしまして。
それじゃまた明日、頑張りましょうね」
…そうだ。ゆっくりしてる暇なんかない。
俺がいるのは、厳しい世界なんだ。今は片隅かもしれないけど、忘れちゃいけないことだった。
……もう二度と、和泉のようなことを繰り返してたまるか!
「うん!それじゃあ…」
「ええ、また明日」
家の前から車が去っていく。
俺の後ろには高見家がある。
14時半か。
ケータイをポケットから出して、時間を確認する。
…行こう、きら高に。
YAMAHAの標語では、「1日休むと3日分失われる」んだ。ゆっくりしてなんていられない。
俺は家に入ると、階段を駆け上って自分の部屋に戻った。
…制服に着替えるために。
多分、つづく
こんちは。
本当にごめんなさい!
この小説読んでる人で渡瀬 公一のファンがいらっしゃったら申し訳ないです本当に。おられなかったら幸いなんですけど…。
渡瀬 公一を出したんですけど、まったく中身が違いますw
竹崎先輩や池上先輩はそのままで出したんですけど、渡瀬の場合はオリキャラになっちゃいました。ごめんなさい。
なんでこうしたかって言われると…完全にぼくの趣味というかノリなので、本当になんとも言えないです。
ひとつ言うことがあるとしたら、よくある「小説に自分を出す」みたいな奴の延長線で書きました。
ぼくは勿論あんなことやこんなことを言ったりするキャラではありませんし楽器もそんなに上手なわけではありませんが、立ち位置としては自分のつもりで書いています。あっ意味がわかりませんよね、そのうち詳しく説明しようと思います。
いつにも増して意味不明な前書きになってますが、本当すいません
では
以下本文
----------------------------------------------
それから食事を済ませ、席を立って店を出ようとした時、華澄さんは急に「あっ、ごめん。ちょっと待っててくれるかな?」って言い出した。どうやら、誰かから電話がかかってきたらしい。
「あっ、うん」
「ごめんね」
彼氏からかな?
…居るか居ないかもわからない華澄さんの交際相手のことを想像しながら、俺は遠ざかっていく背中を見て、ちょっとだけ溜め息をつく。
別に俺が華澄さんと付き合えるなんてまったく思ってないし、居たって居なくたってかまわないけど、なんかなぁ…。だいたい、電話の相手かどうかなんてわかんないよな。学校の人って可能性もあるし。
…それにしても、もう少し食べとけばよかったかな?
1人で席に座ってケータイをいじりながらちょっと思う。
周り見ると、みんな新発売のハンバーガー食べてるし、俺もそれにすればよかったかなぁ。
ほら、なんか前からやってくる若者もハンバーガー食べながら歩いてき……。
……俺と、ハンバーガーを立ち食いしながら歩いてくる男の目線が合う。
その時、まるで誰かに上に持ち上げられたみたいに、心臓がどきっとした。
「あ、あれ?お前…」
「……あァ、久しぶりだなぁ…」
相変わらずのかすれた低いぼそぼそとした声、細い長身、細くて鋭い目、かきあげたような髪型…。
間違いない。
俺はこの若者の名前を知っていた。どんな奴かも、だいたい…。
「渡瀬!渡瀬じゃないか!」
俺がそうこいつの名前を呼ぶと、相手もハンバーガーから口を離し、細い目をより細くして微笑んだ。
「…高見かァ……久しぶりじゃないか」
語尾の方をかすれさせて、向こうも俺の名前を呼んでくる。
こいつはもともと感情を表に出すようなタイプじゃない。コンクールで金賞を貰っても、「それがどうした」っていう
ような顔をしていたような奴だ。
だけど、嬉しそうな顔をするのにはワケがある。
――渡瀬 公一。
…この男は、中学時代俺と同じ楽器だった。
それだけじゃない、俺が「あの出来事」以来グレた時も、俺と一緒にケンカややんちゃをして廻ったような仲だ。
よく先生に怒られたり、受験の心配をされたっけ。
お互い価値観や意見は違うけど、気心はよく知れてる。
こいつの顔を見てるだけで、苦し紛れに何かを探し続けたような中学時代を思い出す。
「大門に行ったあいつ」から連想するそれとはまた違った思い出ばかりだ。
なかなか居場所を見つけるのが難しい、女だらけの吹奏楽部の中で、俺たちはよくつるんで色んな話をしたもんだ。
中学時代はいい思い出ばかりではなかったけれど、頑張った時期でもある。そんな時期を一緒に生き抜いた仲間の顔を見て、俺も嬉しくなった。
「お前、相変わらずハンバーガー食べてんだな」
「……あァ、当たり前だ。
…こいつだけは、世知辛い世の中でも美味いからなァ…」
このボソボソした低くて小さい声。音楽室だと楽器の音にかき消されて全然聞こえなかったっけ。懐かしいよまったく。
表情もあの頃のままだ。殆ど変わらない表情は、「何考えてんのかわかんないしキモい」って女子たちから言われてることもあった。けど、こいつはその実誰よりも、「ある事」に関しては思考を止めることはなかった。
…如何に上手く吹けるか。
こいつは基本練習を「おもしろくねぇ」って言って全然しないから音色が全然だったが、楽器での唄い方が最高だった。
ピアニッシモでもフォルテッシモでも魅せる歌い方ができたし、盛り上げ方もクライマックスの歌いまわしも、何もかもすごかった。数々の講師の先生も、「是非基本練習をした方がいい」って言ってこいつの才能を埋もれさせまいとアドバイスをしたものだった。
だけど、こいつは「面白くないものはやりたくねぇ」ってある意味片桐さんみたいなことを言って、結局基本練習はしなかった。渡瀬の練習からは、ロングトーンのロの字も聞こえてきやしないのは有名だった。
「高見君くらい基礎を積めば絶対もっと素晴らしい
プレイヤーになれるのに」
大門に行ったあいつも、そんな風に勿体なさそうに言ってたっけ。
「……元気だったか?」
「ああ、この通り。そっちは?
ひびきのに通ってんだろ?お前」
俺がそう言うと、ハンバーガーをまた口にして、渡瀬は「……あァ」とまたかすれそうな声で答える。
「……お前ずるいぞ。
俺と散々やんちゃして廻ったくせに、自分だけは
きら高に受かるなんて……」
「はは、それは言うなよ。
俺だって最後の方は努力したんだから」
「……ぁァ、こんなとこでもその差が出るもんだよなァ…。
お前は、つまんねぇ基礎練でもバカみたいに
ずーーっと続けてたからなァ……」
「悪かったな。誰がバカだよ…ったく」
そう言ってお互い談笑する。だが、美味そうにハンバーガーを食べていた渡瀬の手が、ふと止まる。それと同時に、微笑も渇いていった。
「……お前の音は、最高だったからなァ…。
…歌い方はセンスなかったけど」
「一言余計だっつの」
…そう、こいつは良い物は良い、悪い物は悪いってはっきり言う。
だからこそ俺はこいつが好きだったのかもしれない。好雄みたいに気を遣ってくれるのも優しいとは思うけど、中学ん時は、シロクロはっきりつけてくれた方がすっきりしたからな。
だからこそ大門に行ったあいつとはぶつかることもあった。けど、渡瀬は確かに上手いところは上手いから、こっちもそれは認めつつ、悪いところ…つまり基本の脆弱さを指摘するしかなかった。
そこがムカつくんだけどな。
でも、こいつは俺の音を認めてくれた。
練習嫌いの天才が、延々と反復練習をするしか能の無い俺を認めてくれた…俺にとっては、すごく嬉しかったっけ。ただ、今みたいに唄い方については手厳しく言われてたけどさ。
事実、こいつの唄い方には俺も着いていけない。
…TomorrowのSoliが片桐さんじゃなくてこいつだったら、吹くのに必死で俺はジャンプできてなかっただろうな。
…あの頃は厳しい練習だったけど、周りのみんなが上手くなろうとしてた。
渡瀬も、あいつも、俺も…。
厳しくて、辛くて、けど、一生懸命だった。
今のきら高とは比べ物にならないくらい厳しい練習だったけど、県内じゃそれなりに上手かったみたいだもんな、俺たちも。
…そういや、渡瀬は今何してんだろ。
ひびきのに居るってことは、吹奏楽に入ったのかな。爆裂山先生も言ってたけど、ひびきのの吹奏楽は、強いもんな。
「…なぁ、渡瀬。
お前、今部活は…やってんの?」
――俺がそう聞くと、明らかに渡瀬の様子が変わった。
ピクリと顔が少し上がったと思うと、ハンバーガーを美味しそうに食べていた顔に、不満の色がにじんでいく。
「……ぁァ?部活?
…やるわけねーだろ。
……あんな不味いもの、煮ても焼いても食えねーよ」
「えっ、やってないのか。
お前ほどの奴はなかなか居ないのに…」
「…いくら楽器吹くのが美味くても、あれだけはダメだ。
……お前もよく知ってるだろう?
…人が丹精込めて練習して作り上げた音を、
一番太って脂の乗った時に、美味そうに食う連中たちのことを…」
そう言ってハンバーガーばかり食う癖に美食家気取りな言い方で表現した渡瀬の言い方は、かなり遠まわしだが何を言いたいかは伝わった。
あれだけ一生懸命練習したこいつが、こんなに吹奏楽のことを悪く言うなんて。
…無理もない。残念だけど、俺にも否定できないからな…。
「…そりゃ、わかるけど…」
「……もしかしてお前、まだ部活なんてやってんのか…?」
「…ああ、まぁ…」
「おいおい、どうかしてるんじゃないのか?」
渡瀬の声が少し大きく、聞き取りやすくなった。
熱くなっている証拠だ。
「……あそこはな、人が一生懸命やってきたことを
良い様に食い物にする場所だろうがァ……。
それがわかっててなんであそこに戻る?
お前の最高の音を、あんな奴らにご馳走する気かよ……?」
「いや、そんなつもりはない!
…それに、俺はもう以前の俺じゃない。
一生懸命やれば色んなことが見えてくるってわかって…」
「……お前、なァ…。
まァ…そういうこと言う奴ってのはわかってるけどよ…。
……和泉のこと、忘れたわけじゃないだろ…?」
――心臓が喉のとこまで上がってきたかと思った。
それくらい、その名前を聞いた時、俺の心臓が高鳴った。動揺していた。
「……大概にしとけよ。
じゃないとお前…また良いように食われちまうぞ…。
……頭から、むしゃり。
となァ……」
…そう言って、渡瀬はハンバーガーの残りの一切れを美味しそうにぱっくり口に入れる。
…俺は、何も言い返せなかった。
まだ心臓がバクバク言ってる。視界にはもう、店のチェックの床のタイルしか見えてない。
「……まァいいや。
こんな話やめよう。……こいつ(ハンバーガー)が不味くなっちまう。
…また今度ゆっくり話そうや、夏にでも。
じゃあなぁ……」
「あ、あぁ…」
そう言うと、渡瀬はまた新しいハンバーガーを包みから出して、一口目を味わいながら去っていった。
「ごめんね、直人君、お待たせ」
華澄さんが戻ってきて、俺に声をかける。微笑を浮かべてやってきた先生だったけれど、俺の顔を見るなり、なんだか心配そうに顔を覗き込んできた。
「…どうしたの?顔色悪いみたいだけど…。
それに、立って待ってたの?どうしたのよいったい…」
「あっいや…。
ちょっと、偶然知り合いに会って。
それで少し話しただけ」
「…そう?
……何か、言われたの?」
「あっ、ううん、そんなことない!
大丈夫、本当になんともないから。
さっ、きらめきに戻ろうよ」
「え、ええ…」
…帰りの車、俺はまた華澄さんと話をしながら30分を過ごした。
けれど、行きの時に思ったように、風景を見るような余裕はなかった。
…渡瀬に会って、思った。
あいつは、中学の時のままだ。吹奏楽の世界の厳しさをよく思い知って、その認識をしっかりしていた。でも、俺はどうだ?
「俺はもう、以前の俺じゃない」
そう言ったけど、本当にそれは前に進んだって言えるのか?
確かに全校集会を乗り越えて、俺は成長できた。充実感もある。
でも…それは、良い演奏をしたからなのか?
結局は、勝ったから充実してるってとこもある。
そんなんじゃ俺は、またあの時の二の舞になってしまう…。
「…頭から、むしゃり。
……となァ…」
…俺が光や佐倉さんみたいな人たちを吹奏楽に連れてきたことは、悪いことじゃないとは思う。でも、俺だって吹奏楽の厳しさをよく知ってる。…俺は、そんな世界にあの人達を連れてきてしまったのか。
……でも、俺は信じたい。
全校集会で得た充実感は、絶対に人から貰ったものなんかじゃない。
俺が感じたものなんだ。
…どうして和音も決まってないしリズムもばらけてた箇所があんなにあったのに、みんなが歓声を上げてくれたのか、俺も満足して舞台を降りられたのか…。
それはいまいちわからないけど、きっとそこにこそ俺の求めてるものがあるはずなんだ。毎日毎日バカみたいに同じ練習ばっかして、たくさんの時間や可能性を費やして…そうした末に見たいものが。
「さて、もうすぐ高見家の前ね」
「あっ、うん」
[目的地、周辺です]
これから野球応援があって、吹コンがあって…。
俺は本当に成長できたのか、以前のままじゃないのか、これから試されていくんだ。
「じゃあ、直人君。今日はお疲れ様」
「華澄さんも、運転ご苦労様。
…ハンバーガー、ご馳走さまでした」
「ふふ、どういたしまして。
それじゃまた明日、頑張りましょうね」
…そうだ。ゆっくりしてる暇なんかない。
俺がいるのは、厳しい世界なんだ。今は片隅かもしれないけど、忘れちゃいけないことだった。
……もう二度と、和泉のようなことを繰り返してたまるか!
「うん!それじゃあ…」
「ええ、また明日」
家の前から車が去っていく。
俺の後ろには高見家がある。
14時半か。
ケータイをポケットから出して、時間を確認する。
…行こう、きら高に。
YAMAHAの標語では、「1日休むと3日分失われる」んだ。ゆっくりしてなんていられない。
俺は家に入ると、階段を駆け上って自分の部屋に戻った。
…制服に着替えるために。
多分、つづく
この記事へのコメント