【連続】きらめき高校吹奏楽部 ~もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら~体育祭開会式【ブログ小説】

運動会で演奏とかなつかしいw


こんばんはー。やっと書けたんで寝ますw
運動会で演奏っていうと、ついでに見よ勇者の凱旋とか(得賞歌的なやつ)、君が代とかも吹かされますよね。ぼくが高校のときは、ワーナーマイカルのオープニングのファンファーレとかもオープニングに入れてたっけ。


ウチのきら高は余裕がないのでそんなことはできませんw
きらめきマーチ(笑)だけしか吹けませんw

そういや佐村河内 守びっくりしましたね。あの人を絶賛してた後輩とかもいたんですけど、彼今どうしてんのかな。ショック受けてないと良いけどなあ。



以下本文
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朝練が終わってクラスに戻ると、間もなくして古我先生の熱血ホームルームが始まった。


「組は赤と白に別れるが、気持ちは同じだ!
 一生懸命勝ちに行け!青春して来い!」

それに、運動部たちのうすーい「はーい」という返事が追って答える。


…まあ、俺にとってはこの後の開会式がメインイベントみたいなもんだけど…。そう思いながら朝から元気な古我先生の話を聞き、この後のことに思いを馳せて、怪訝な表情になる、高見 直人。




特になぁ、赤井さんが来てるのかどうかだよなぁ。
っつーかなんで校長もウチの部活に赤井さんを入れたんだよ。入学式の遅刻などその他もろもろの罰なら、もう生徒会長ってポジだけで十分だろ…。


今まで練習来なかったり、適当に叩くのは、しぶしぶ来てるんだろうからと思って大目に見てたけど、本番に来ないのはさすがに俺もいい顔できないな、これは…。




…だがそう思うのとは裏腹に、一応は来てもらわないと困るのも現実だ。バスドラムを叩く人員は、他に存在しない。できるとすれば、白雪がクラリネットを吹くのをやめてパーカッションに入るか(…実は今日来ているのは美帆なので、不可能だが)、九段下講師が叩くくらいしかない。

しかし、九段下は殆どボランティアで参加してくれるだけな上、シンバルを叩くことが決まっているので、九段下をバスドラムに廻すと今度はシンバルが消える。どうあっても、たとえ出来損ないなバスドラムしか叩けなくても赤井が居なくては困るのだ。


まったく、練習中でもそうだが、本番の日までひやひやさせる。
演奏は果たして大丈夫なのか?赤井は結局来るのか?


心配でならない直人だったが、隣の席の男子は意外とのんきだった。
男子が着替える教室、女子が着替える教室がそれぞれ振り分けられ、そこで着替える際に意気揚々、嬉しそうに直人にこう話す。


「いやー、今日は女の子たちみんなの体操服姿を
 拝める絶好の機会だな!

 目にやきつけておかなくっちゃこのときめき!」
「…お前なぁ。いいよなぁ、こんなときでもそんなこと言ってられて」


好雄は本番の演奏など初めてのはずなのに、この後の演奏のことなどまったく考えていないような様子だ。まったくうらやましい限りだ、と呆れながら直人も「はいはい」と頷く。


「まっ、言う通りではあるけどさ。
 でも、俺は演奏も部活リレーも最高に心配なんだけど」
「まあなんとかなるだろ。
 演奏だって練習じゃ止まってないし、リレーは負けたって 
 罰があるわけじゃないし」
「それがあるんだよなぁ、罰」
「おっ、そうだったっけそういえば。
 いいだろ別にジュースのオゴリくらい」


こいつ…完全に人事だわ。
それに、罰もそうだけど、朝話した約束もあるから余計なー。


「私たちが勝ったら、みんなで遊ぼうよ!」
これで俺のせいで負けたりしたら笑えないっつーの。光も悪気はないとは言え、負けた時のことなんて考えてないっつーか、ほんっとポジティブっつーか…。


まあでも負けなきゃいいっていえばそうだし、結果論だけ言えば、演奏も止まらなきゃ問題ない。…多分、なんとかなるよな。だいたい、うじうじ言っても頑張らなきゃいけないのは変わらないからな。


「じゃあ行こうぜ。女の子の体操服姿、目を皿のようにして
 見に行くか」
「ああ、そうするか」


体操服に着替え終わり、冗談を言いながら2人は他の生徒とは違い、生徒会室に向かう。吹奏楽部は楽器をここに一旦置いてあるからだ。


生徒会室前には2人が着いたときには、もう早い部員は集まって準備を始めていた。


女の子たちを見て、好雄は、
「おい、やっぱいいな」
などとのんきなことを耳打ちしてきたので、直人は彼の頭をバシッと叩いて口をすっぱくする。


「何言ってんだよ。ほら、さっさと俺らも準備するぞ」
「あ、痛っ!お前今ちょっと本気だったろ!くうー…」


いつまでも好雄には構っていられない。直人は2つも楽器を用意しなければならないし、時間もあまり無い。…のだが、彼の目線にある人物が入ってきたので、そうも言っていられなくなる。


廊下の向こうからだらだらガニ股で歩いてきたその人物は、あろうことか遅刻どころか朝練をサボタージュしたこの学校の生徒会長!


「赤井さん!」
直人は赤井のところまで駆け寄り、肩をむんずと掴んで揺さぶる。


「わわっ、なんだ!?」
「なんだじゃない!なんで朝練来ないんだよ!」
「わ、わりぃ…あ、あたしも今日は起きようと思ってたんだ。
 だけど、つい二度寝しちまって…アハハ…」
「…もうー、そんなことだろうと思ったよ」


でもよくこの人朝練すっぽかしといて部活に出られたもんだ。いい根性してるよ…。


「頼むから指揮に合わせてよ!?バスドラ大事なんだから!」
「わ、わかったわかった!そんな熱くなるなよ行進くらいで」
「く、くらいってそんな…」
「大丈夫だって。あたしは本番に強いんだから、
 任せとけって!ニャハハハ!」


…この人、ほんっといい根性してるよな。
俺たちの気も知らないで…。まあ緊張してなさそうだから、それだけはいいんだけどさ。


「もう、本当頼むよ。赤井さんにかかってるんだからな」

最後に釘をもう一度強く押し、自分の準備に移る直人。


生徒会室に入り、バリトンとスタンドをまず抱えて、第一便。吹奏楽部のテントへと向かう。その途中、アルトサックスと譜面台を手にした片桐 彩子が声をかけてきた。


「good morning!
 どう?調子は」
「ああ、おはよう。
 まあ、調子はいいと思う。このリードも結構気にいってるし」
「そう、それじゃ期待してるわね」
「ああ。前で聞いててよ。
 いい音鳴らしてやるよ」


そんな世間話めいた会話をしていると、急に片桐は何かを思い出したように「あっ、そういえば」と話題を変える。


「聞いた?佐村河内 守のトピックス…」
「ああ、あれビビったよね。マジなの?」


…2人とも吹奏楽だけあって、世間を騒がせたこの話題には人一倍敏感だったらしい。


「偽りのシンフォニー だなんて言われて…
 酷い話よね」
「うん…。せっかくいい曲でも、
 あんなことになったら台無しだよね。

 あの人の曲を一生懸命部活で吹いた人たちとかも
 ショックだろうなぁ…」


互いに意見を交わしながら歩き、こういう仲間がいるのはやっぱりいいなと直人は思う。楽器の技術の話もそうだし、音楽全般の話が結構片桐とは合う。中学時代はこんな風に軽く音楽の話題を話せる相手は少なかった。

大門高校に行った同じ楽器のあの少女も、他の仲間も、音楽にはプライドや真剣さを持って取り組んでいた。堅苦しかった。その点、片桐は音楽を楽しんでいるし、その楽しみ方のレベルも高い。目標や矜持を持って取り組んでいるし、自他問わずよく楽器の音を聞いている。


こういう人だから、光のことやアルトサックスの高音域は安心して任せることができる。


自分で思っているよりも、この人のことはアテにしているかもしれないな。後になって思うが、なんとなく片桐のことを相棒のように思い始めたのは、この頃が最初だったかもしれない。





…そうして楽器の用意を終えてテントの下に部員たちが集合するころには、行進の準備の方も始まっていた。赤、白2つの陣に別れて体操服の生徒たちが集まり、整列される。


流れとしては、数回練習した通りにグラウンドを一周廻ってグラウンドの中心に集結し、開会式へと入っていく形だ。



そのBGMを担当する吹奏楽部のテント下には、様々な楽器を持って部員たちが集合している。楽器だけではなく、面々も様々だ。


きらめき高校のマドンナ、運動部のアイドル、元全国級陸上部員、よく当たる占い師、漫画に出てきそうな勢いのお金持ちお坊ちゃん、アルバイター、稀に見る不幸少女、関西弁を操るトロンボーン吹き、コアラの耳みたいな髪形をした当たり屋、屋上の主、総番長の妹、破天荒生徒会長……。


今ここに様々な面子が集まったのも、それぞれ紆余曲折を経て、ひょんな出会いを果たした結果だといえる。それが今日ここでどんな音を響かせるのか…演奏の時は刻々と迫る。


もう、音出しはできない。行進の整列をさせるために先生や3年生の指示が飛ぶ中で大きな音を出すわけにいかないからだ。


「話をやめんかー!ちゃんと並べー!」

そんな古我先生の声が、グラウンドにこだまする。まあ年頃の高校生たちがそれで往生際よく黙ることはなかったが、ざわつきながらも行進の態勢は整っていく。




「…緊張してる人?」
と、テント下でそう皆に問いかけたのは、指揮者で顧問の麻生 華澄。いつもの余裕を持った笑みで、薄い化粧の乗った口許を緩ませる。


その笑顔の問いに、ぱらぱらと手が挙がる。
こんな演奏の経験などない初心者たちの手だ。虹野 沙希に、佐倉 楓子のホルン初心者は全滅。それとその後ろの一文字 茜もひょこっと小さく手を挙げ、打楽器の早乙女 好雄なども無駄に元気に手を挙げる。クラリネットもいくつか手が挙がり、唯1人のオーボエも、フルートの読書少女も手を挙げる。


「そうよね、先生だって緊張してるくらいだもの。
 でも、せっかく練習してきたんだし、その成果を
 出せるよう、頑張りましょうね」

先生はそう言って優しく笑い、生徒たちを見回す。ある意味、華澄にとっても今日は初めての日。指揮棒を持って吹奏楽部として演奏することは、今日が最初だ。



そんな先生の緊張を和らげる気配りの後、高見 直人は自分の楽譜が置かれた譜面台の前に見える肩を、叩いて振り向かせる。


「なに?」
振り向いてきた幼馴染は、不思議そうな顔をしている。


「光は、緊張してないの?」
さきほどの先生の問いに、光は手を挙げなかったのだ。その理由を、光はこう話す。


「うん!だって、君も後ろに居てくれるし、 
 片桐さんだって横に居るし。

 みんなで吹くんだから、怖くなんてないよ」


さすがに光はこんな時でも前向きだな。まあ業界は違うけど全国経験者だもんな。本番慣れしてて当然っちゃ当然か。


「そっか。お前の音、ちゃんと後ろから聞いてるからな」
「プレッシャーかけるなぁ。えへへ、でも頑張ろ」


どうやら光は肩の力も抜けていて、大丈夫そうだ。ただ横に座る木管低音の2人は、緊張気味だ。


「ううー、だいじょぶかなー。
 美幸ー、本番中に不幸が起きたらどうしよー…」
「ちょ、ちょっと縁起でもないこと言わないでよ…」

美幸にそう切り返す語堂も、表情はこわばっている。そんな2人に、直人も美樹原も、それぞれ隣に声をかける。


「大丈夫ですよ。本番なんて、集中してたらあっという間だから」
「そ、そうかなー」

「あれ?語堂さん緊張してんの?
 あれ?あれあれ?」
「ば、ば、ばか言ってるとぶっ飛ばすわよ!」
「ふふ、そうそうその調子。音をぶっ飛ばしてくれれば全然いいからな」


また、古式 ゆかりは思ったより緊張していなさそうだった。

「ゆ っ く り 行 進 が 見 れ な い の は 少 し 残 念 で す」
などといつものにっこり笑顔でズレたことを言って、直人を苦笑させたくらいだから、問題はないだろう。



…また、初心者たちに声をかける経験者が居るのは、低音だけではなかった。ホルンも、クラも、フルートも、トランペットもそうだった。皆、最初の演奏の場を良い結果で乗り切るべく肩を寄せ合う。


打楽器もそうだ。白雪はクラの方に行ったため居ないが、普段は打楽器の講師の九段下がジャージ姿で、好雄たちに「しまっていこー!」とふざけた鼓舞をしてリラックスさせているのが直人の耳にも入ってきた。



そうして待機していると、教務科の先生がやってきて、華澄先生にこう告げる。

「先生、準備整ったそうです。演奏、おねがいします」

――ついに、か。
それを聞いてそう思った生徒が何人いたか。


今まで毎日練習してきた成果が、今ここで出る。果たしてどんな音がグラウンドをにぎわせるのか。それとも前代未聞、行進は途中で止まってしまうのか…。


そう思ったのは実は生徒だけではない。顧問もそうだった。だが、顔には決して不安は出さず、いつもの笑みで「わかりました」と答え、指揮棒を握り直す。


…私、汗ばんでる。
何も運動したわけじゃないのに、指揮棒を握る手が汗で濡れ、肩もなんだかカタい。


これから演奏するのはこの子たちなのに、
私が緊張していたら、先生失格ね。


ふふ、しっかりしなくちゃ、華澄…。





そう自分で思い直し、笑みをもう一度確かなものにして、顔を上げ、わずかな生徒たちのざわめきだけが静寂にちらつくグラウンドを背に、指揮棒を構える。


その棒が見えると、生徒たちは手にした楽器を構え、視線を同じ方向に向ける。




少し指揮棒を持ったまま、華澄は真剣な顔が並ぶのを見渡してみる。
…こんな風になるなんて、半年前は全然思わなかった。


詩織ちゃん、光ちゃん、都子ちゃん、それと直人君。みんなの部活動を、私が守ることになるなんて。みんな大きくなった。そんなみんなを引き連れてのこれからの時間…なんだか、旗を持って小学校に向かって歩いた、登校班を思い出すなぁ。



…その旗は、今指揮棒になった。
私は班長から、先生になった。


みんな顔つきも変わったけど、変わらないところは全然変わらない。
ふふ、それに全然変わらないものもある。




…華澄がそう思って口許を緩ませたのは、シンバルを持った親友が、目が合ったと同時にウインクしてきたからだ。


「さあ、始めましょう」
その一言の後、華澄先生の指揮棒が勢いよく上がって、下がる。棒が上がった瞬間、テントの中で一斉に息を吸い込む音がした。指揮棒が繰り出すテンポに合わせたブレスで瞬発力を高めたエネルギーが、一気に楽器の音となって吐き出される。


オープニングはなかなかうまくいった。
高音部がシンコペーションのリズムで流星を描き、続いて低音が開幕の合図を告げるアクセントできらめき高校
のグラウンドを震わせる。


高音部のこの動きは、幾度と無く合奏で指摘を受けた。
牧原 優紀子はE♭クラの音程の合わなさに毎日悩まされたし、フルートの如月 未緒やクラリネットの星川 真希はリズムが周りと合わずに、シンコペーションのリズム感を捕まえるのに苦労したものだ。それが、今日はそこそこ合っていた。


若干星川や水無月 琴子は、慎重になりすぎた結果、萎縮して音量を下げた。それが逆に和を乱さずに済んだのかもしれない。藤崎 詩織や牧原 優紀子が核になった正しい音程に、伊集院 レイたちが毎日集まってパート練習をして作った音程が乗っかって、悪くないものになったのだろう。


また、低音は人数の割に勇壮な出だしを演じてみせた。


八重や相沢のトロンボーンがはっきりくっきりアクセントのついた十六分音符二つを鳴らし、後の伸ばしの音を墨がたっぷりついた筆で極太の線を描くように濃密な演奏をしたことや、木管低音があれほど練習した出だしの練習が実を結んだことが功を奏したらしい。


低音は遠くまで響かせるのが難しいが、この曲の最初は低音がこうしてオープニングを鳴らすことで始まる。


『ただいまより、きらめき高校体育祭の開会です』
――放送部員、柳 冨美子のアナウンスが入る。それを合図に、赤組、白組とそれぞれ書かれたプラカードを掲げた3年生を先頭に、入場行進が開始される。


その間もBGMは続く。
ホルンのグリッサンドやクラリネットのトレモロが密度を高める中、低音がシンコペーションで動き、対話のように高音部が対応する動きを見せる。


このシンコペーションの動きは、木管低音と八重の顔ぶれで何度も練習したものだ。動きが合っても、音量が落ちてはいけない。音量があっても、アーティキレーション(発音)がくっきりしなくては意味がない。すべてに合格点が与えられるように、妥協しないように攻めの音楽を練習してきた。それがしっかりと決まった。


と、吹きながら直人はふと思う。
――シンコペーションの後、着地した音これピッチ合ってないな。


この音は、パート練習中も語堂や美幸がよく上ずって音程を悪化させていた。合奏になると各自の音を先生が全部聞いているわけがないから、更に集中力が散漫になる。だからよく合奏中も、吹きながら語堂に手で「高いよ」と合図したりしていたものだ。


今日も、本番とはいえそれは変わらなかった。ちょうど片手を離して吹ける音なので、高いよ、と合図してやる。演奏中のため向こうから当然返事はないが、語堂は自分なりに修正しようと努めたので問題はない。

また、いつもの練習通りに隣から指示があるのは、語堂を安心させることにも繋がった。平常心を取り戻して、周囲と合わせつつ自分の音楽をすることに集中していける。


そのオープニングから、クラリネットの下降系から[A]の主題のアウフタクトに入るが、そのクラの下降系の音程は、あまり音程が合っていなかった。「うわ」と思った部員は数知れずだったが、瞬間の美学である音楽の中でやり直しなど利かない。このまま進んでいく他はない。


[A]に入ると、一番赤井 ほむらが適当になりがちな四分音符の動きが低音によって基盤として演奏される。その大地の上をクラリネットとアルトサックスのテーマが踊るわけだ。


低音の動きはこの日も冴えていた。
木管低音は毎日、この簡単な四分音符の歩行音を合わせてきた。直人と美樹原だけなら付き合いの長さ故合うが、これに他の木管低音と、コントラバスを加えるとズレが生じる。これをメトロノームを基準に何度も練習してきた。それが故のこの安定感は、まだ実力の無いきらめき高校吹奏楽部にとって、まさに土台といえる。


が、これにバスドラムが合わなければ意味がない。だが、今日の赤井 ほむらは割と合っていた。それもそのはず、シンバルの出番の無い九段下 舞佳が、彼女の肩をトントン叩いてテンポを示していたからだ。


「まだデカい!そう!まだ抑える。
 全力を出すとこはまだこの先にあるのよん」


演奏中ではあるが、ふつうに声を出してアドバイスする九段下。まあ、他に聞こえなければ問題はない。吹奏楽の指揮をする教員や指揮者の中には、口でテンポとなるメトロノームを「カチカチ」などと歌いながら指揮する者もいるくらいだ。


赤井 ほむらも面倒そうな顔はしていたが、一応言われた通りにやろうとしている感はある。そのおかげか、低音のブレは極力抑えられた。


一方、高音はというと、アウフタクト前から音程が悪かったのはやはり兆しで、澄み切ったような音程とはいかなかった。が、動きは割と合ってはいた。それに、まだこれから盛り上がる[B]に比べてひそやかなこの[A]の部分でリードミスの甲高いエラー音を出す者も練習中は居たが、今は居ない。だいぶうまくいっているほうか。


アルトサックスの片桐は、よくここで音を抑えるように先生から指示を受けた。クラの音色を主にして勝負したかったからだ。それに従い、光もそれに追随するよう小さい音で吹く。



[A]はそんな様子で問題も少なく進み、もう[B]に入るというところで、直人はすばやく首にかけたストラップとバリトンサックスの連結を外し、スタンドにかけて今度はテナーサックスをスタンドから外す。


その間わずか2小節。横にいる古式 ゆかりを1人にするまいと、素早く持ち替えを果たしたのである。スタンドがなければ出来ない芸当だったろう。


[B]に入ると、その直人と古式のオブリガードが加わる。低音にも八重 花桜梨や相沢が加わり、低音の前打ちに補完するようホルンの後打ちも入る。ダイナミクスはあまり変わらないが、人数が増えて[C]に向かって盛り上がっていくのだ。


[A]から続いた高音のビロードでできた川の流れが織り成す唄は[C]に向かってエネルギーを高め、ここで完結する。ここからはマーチの定番、低音が主旋となる[C]が新たに始まる。


これもきらめきマーチ特有のシンコペーションのリズム。特に今日は八重 花桜梨の響きは調子が良く、音を反射する物が少ないグラウンドでもよく通る音で行進者たちや来賓たちの耳を充実させた。ここまでにバリトンに持ち替えた直人も2フレーズ目から入り、勇壮さに箔をつける。



その重厚なメロディラインの上では、高音部がオブリガードを奏でる。下降形のゆったりした動きだが、低音が進む方向に向かってエネルギーを絶やさないように進むべきだ。だが、音程を守ろうとするあまり、低音に対応するほどのエネルギーは出なかった。ここは練習でも滅多にうまくいかなかったので、仕方が無いのかもしれない。


ただ、牧原 優紀子と藤崎 詩織の超高音はかなりうまく乗っかっていた。鳥が細い細い枝の上に体重をかけずに着地するように、軽やかで流麗なE♭クラとピッコロの音を奏でてみせたのだ。



低音の第二フレーズが終わると、再び主旋律は高音に返還される。高音も低音も中音も、皆等しく一旦メッゾピアノまで音量を落とし、そこから助走をつけて一気にフォルテまで持って行きながら、盛り上がったエネルギーで二度目の主題に入っていく。


『今、本部前を歩くのは1年生です。先輩に負けないよう 
 頑張ってください』

そんなアナウンスとともに行進も演奏も進み、きらめき高校吹奏楽部が苦手とする、ダイナミクスの小さい密やかな演奏を求められる部分へ進んでいく。


ここは、本来低音はチューバとコントラバスのみに絞られる。だが、現在この部活にチューバ奏者は居ない。なので、美樹原と直人がこれを肩代わりして吹くことでチューバの不在を埋めている。チューバと違って発音がカタくはっきり出やすい木低の楽器である彼らは、できるだけソフトに発音することを心がけながらも、行進のことを考えて、楽譜上で指定された音量より大きめに吹く工夫をし、全体を支える。


後打ちは、ここもマーチの定番ホルンが吹く。虹野も佐倉も、都子のように体を動かして推進力のある演奏をするとまではいかない。が、ここは幸い楽譜が難しくはないので、2人とも都子に合わせながら吹くように努め、この場の空気を構成する原子の1つとなり、音を溶け込ませた。


主旋律は、当吹奏楽部で最も初心者が多く、最も部員の多いクラリネットが担当する。合奏中はよく音程の乱れもミスも目立ったものだが、伊集院も水無月も星川も白雪も、何度もここは合わせる練習をしてきた。それなりに改善は見られ、完璧には遠くとも前進の見られる演奏で、この静かな場面を乗り切った。


それと、主旋律の部分のアインザッツをはっきりさせるため、グロッケンが入る。それを叩く朝日奈は、きちんとクラに合わせようとしながらも間違えずに叩ききり、白雪 真帆がここに居れば「やるじゃんヒナ!」と言わせる仕事を果たした。


ここまで行くと、再び楽譜はダ・カーポのマークから最初の部分へと戻り、[A]には入らず終章のコーダへと移り、いよいよクライマックスとなる。


コーダ前には全体がデクレッシェンドからのクレッシェンドで、エネルギーの高まりも最高潮を見せる。ここで非常に頑張ったのが、渡井 かずみだ。一文字 茜がまだ殆ど吹けないことを考えると、トランペットはほぼ1人のようなものだ。だが、それを感じさせない猛烈なクレッシェンドでバンドを前へ前へ押して進んだ。渡り廊下で毎日吹いていたあの音が、羽をつけてグラウンドを駆け抜けた瞬間だ。


ここから、曲が早くなりがちだ。低音とバスドラムが暴走してしまうことが主な原因で、合奏中幾度と無く「早くならないようにしましょう」と先生に同じことを言わせたものだが、今日はそこまで早くならなかった。九段下がほむらを抑えたのもあるし、低音が意識を高めたことも功を奏した。


最後は、クラの旋律や、トランペット殺しの高音ファンファーレ攻め、ホルンや中音がオブリガードとなって間を敷き詰めたりと、最高潮の盛り上がりを見せる。


最終4小節に、中音のベルトーンがあり、これが以前からなかなか音程が合わなかった。佐倉や古式に音程を調節する能力はまだそこまで備わっていないからだ。どうにかこうにかテナーの直人と都子が苦心して互いの音を聞いて合わせ、間を取って妥協するくらいしか手はない。今日もそれは劇的によくなるはずもなく、不安定なユニゾンだったが、後戻りはできない。



このベルトーンが終わった後、トランペットとボーンの最後の仕事の後、低音がひとつ強符を打って、きらめきマーチは完結した。



行進も同じくらいに終わり、『全体、止まれ』と放送が入って、入場行進は終了した。


指揮棒を降ろし、ホッと一息。先生は小声で
「みんな、お疲れ様」
と優しくも困ったような笑みを浮かべ、生徒たちを労う。意外と自分も夢中になって指揮棒を振っていたので、余裕がなかったから、こんな顔になってしまったのである。


演奏は、まあまあだった。いつもの合奏の中では、割と良い目がでた方だ。今日の低音はなかなか好調だったし、トランペットの渡井や、詩織たち持ち替えの人たちもかなり引っ張ってくれた。心配だった打楽器も、九段下が入ってくれて、最低限仕事をした。





あー…終わった。
ひとまず吹ききって、たくさんの人がそう思い安心した。本来歴戦の部員であるはずの直人も例外ではない。これまでの色んな出来事が、今の演奏として結果を出したのが、なんとなく達成感を感じさせたのだ。


本当に、この2ヶ月は出会いが多かった。
そんな人たちと一緒に吹いた今のきらめきマーチ。演奏はすごく良いわけではなかったけれど、今の演奏はとても感慨深かったし、しばらく忘れることができそうにないな、となんとなく思う。



もう今日1日終わったようなもんだな。
ここで解散ってなって帰っちゃっても全然悔いないよ。


…と、部活対抗リレーやこの後の競技のこともまったく考えずにボーッとしていたら、いつの間にか開会式も終わった。5分後に2年生の50m走が始まる、というアナウンスが入り、華澄先生が皆に声をかける。


「みんな、とにかくお疲れ様。
 ひとまず、生徒会室に楽器を置きにいきましょう。

 ちゃんとツバ抜きが必要な人は抜いておくこと。
 自分の競技に間に合うように、ささっと行動してね」


それに返事があって、テント下のブラスバンドは解散となった。あちこちで「ふうー、終わったー」「おつかれー!」と安堵の声がする中、直人は光の肩をもう一度叩く。


「なんとか、終わったな」
「うん。あー、なんかあっという間だったなぁ」
「わかるそれ。…どうだった?人生初の本番は」
「なんか、集中してたから色んな音が聞こえた気がする!
 グラウンドって、音楽室と全然違う響きがするんだね」


へぇー、ちゃんと他の音も聞いてたんだ。偉いじゃん。


「そっかそっか。音ミスもしてなかったみたいだし、 
 初本番としてはホントなかなかよかったと思うよ、光」
「えへへ、ありがと。
 この調子で、体育祭も気合でがんばろうね!」
「げっ、それはちょっと…」
「こらぁ!好きなことだけ頑張ってたら、
 ずーっとピーマン食べられないまんまだよ」
「な、なんだよそれ」


演奏は、とりあえず終わった。2ヶ月の集大成、きらめき高校吹奏楽部の初陣は、こうしてとりあえずは無事に終了したのである。


後は、直人にとってはピーマンの部分の1日が、始まろうとしていた…。



多分、つづく




























 
























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