きらめき高校吹奏楽部 ~もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら~  自分が壊したこの場所で 

仕事がクソ忙しいのと持病が再発したため更新頻度ダウン!!


こんばんは。また体調ががががww
職場の人もお子さん経由でインフルエンザなってるし、俺もこらぁだめかもしれませんねw体調悪ぃぃ!


で、あの、今回からは今までとまた違った暗い雰囲気になっていくと思います。その辺の変化が出せればいいなと思うんですが、これまで精神的部分もやってきたので、集大成である定演へ向けて、また吹部あるあるなネタを盛り込んでいきたいです。俺氏が現役時代に使ってたマウスピースの話とかもやりたいんですよね、完結する前に。


前回からそうなんですけど、人は頑張って現実を良くして行ける可能性があるとか、大小違えど夢を持ち、それを現実にしていく努力を重ねるチャンスこそが今という時間だという話ですとか、俗にいうおまいらwwには辛い話ですよね。


ときメモ自体がぼくは、そういう話だと思っています。
女の子を落としたい、でもお近づきになるために、永くお付き合いするために、彼女をこれからも守っていける自分になって、明るい未来を女の子に感じさせる自分を見せたい…まあそういう話じゃないですか、ときメモって。少し上で書いたような話と共通するんですよね。


だからこそぼくはときメモは必要とされなくなったんじゃないかと思います。ときメモもまた、おまいらwwには辛い話に限りなく近い、ということでもあるんですから。ぼくはその雰囲気というか要素をこの小説に持ち込むことが、ある種の原作リスペクトになるんじゃないかなと思って、じゃんじゃん盛り込んでます。おまいらwwごめんwww


以下本文
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3階、理科棟と渡り廊下を隔てる扉が開くと、ここで渡り廊下で練習をしていた木管低音の2人は、驚きと狼狽に面食らってしまった。


ふたりとも、ぎょっとしたような顔をして、扉を開けた人物を見る。なんと声をかけていいのかわからないような顔、雰囲気。それを見て視線を落としながら、金も銀も白金も兼ねそろえたサックスの持ち主は、扉から手を離し、力なく言った。


「…ごめん……。

 
 キツく当たって…。
 オーディション、あんな風にして…。


 練習、休んで……」


神条はおろか、語堂も十一夜も居ない。
美樹原は「あの」すら口に出せず、何か言おうとするがそれが声にならない様子。バスクラを首から吊り下げる不幸少女も、左右にゆらゆらして気まずそうに口を噤むばかり。


…俺がこんな風にしたんだ。
この部活を。


実感がふつふつと湧き上がってくる。
腹の中で嫌な熱が泡立っているみたいだ。胃酸を喉元まで上げるほどの罪悪感で、直人の顔は悲しみと深い後悔に歪んでいく。


…でも。
逃げた時の後悔は、こんなもんじゃないから。先輩は、それを知ってるからこそ…ああ言ったんだと、思うから…。


「…今更…。

 今更、何しに来たんだって、思われるかもしれない。


 でも…もし許されるなら、俺は…。
 定演に向けて、やれることがあるなら
 何でもやりたいと思ってる。

 
 ……本当に、ごめん」


頭を下げて謝罪を繰り返す彼を目の当たりにして、寿 美幸は上目遣い気味に、横に立つ少女に視線をやる。なんと言うべきなのか、メグぴょんはどう思っているのか、気になって。


美樹原は楽器を下げて口に手をやり、顔をしかめている。
やっぱり気にしていないはずがないのだ。

 
――中学の頃から何も変わらないお前もだよ…!


あの頃が嫌で、あの頃みたいな練習なんて二度としたくなくて、それでこの部活に居るはずの子に言った責め苦としては、最悪のものだった。


「……あの」


目を合わせずにぼそっと始まった言葉。
その声に、下げていた頭が上がると、猛省と後悔と覚悟の入り混じった顔が、寿の視界で露になる。


「…もう……。

 もう、定期演奏会をしなくても、
 部活は……なくなりません」
「……。

 それでも、俺は…」
「――で、でも!あの、その…だから…!

 だから……もう、頑張らなくて、いいんです。

 
 あの頃みたいに追いつめられて、
 嫌なのに部活に行って、
 言いたくない言葉を言い合って…。


 そんな部活、もう……しなくて、いいんです…」


しなくていい、否、やりたくない。
そう言いたげに、吠えた愛犬の魂が乗り移ったみたいに首を横様に振った彼女の声は、まるで言い返しているみたいだった。


――私は前とは違います、もう変わったんです、変わってないなんて…そんなことありません!


でもそんな言葉は美樹原 愛には言えない。
それでもここまで言葉を尽くしてくれるのは、苦手なはずの男子としてひとくくりに見られていない証拠、認めてもらっている証拠に他ならない。そのことを、今の直人なら、見て見ぬフリをする道理はなかった。


…だって。
あいつだけじゃない…俺は、美樹原さんとも。一緒に部活やりたいって、思ってるはずなんだから…。


それに…。
本当に…後悔してる。あんなこと言って…。



言葉に詰まったみたいに唾をのみ込み、やっとの思いで声を震わせて、男子は答えを返す。


「……ああ。
 もう…守らなきゃいけない伝統もない、
 先輩も、先生も…あの頃とは違う。


 でも俺は…このまま定演が
 できなくなったり、なぁなぁになるなんて…
 だめだと思う…」
「そんなの、もう…いいのに、
 もう誰も怒らないのに…!

 
 ミスしても、吹けなくても…
 もう、責める人なんていないの、
 もう……もう、いいんです、頑張らなくても……」 


言いながら言葉の最後で涙してしまった美樹原の言いたいことは、なんとなく直人にも伝わった。


頑張りたくない、もう必死こいて辛い思いなんてしたくない。そういうネガティブなことを言うのではない。先生と同じことを言っているのだ。


必ずしも全身全霊、乾坤一擲、身も魂も賭けてまで頑張らなくてはいけないわけではない。もしも辛いなら、途中で休んでもいい。ペースを落としてもいい。一番になれなくても、褒められない結果でも、とりあえず走りぬければいい、そしてそのことで咎める人は、誰も居ない。


部活なんて、本当は自分から入ったはずなのだ。
どんな事情があったかは人による。友達についていっただけかもしれない、先輩の誘いを断り切れなかっただけかもしれない、ひたむきに音楽が好きだという気持ちのはけ口を求めて入ったかもしれない。


でも、部の空気を吸うと、人はそんなきっかけを忘れてしまう。

目標と掲げた「〇〇大会〇賞受賞」を、獲りたいではなく獲らなければならないと刷り込まれ、錯覚する。吹奏楽部は上手でなければいけないか、上の大会を目指すことが正義か。別にそんなことはないはずなのに、なんとなく手を抜くことは悪で、下手なことが弱いことだとなんとなく思う。


体裁を欲するようになるのだ。

まるでわかりやすい社会での成功を求めるみたいに。いい大学、いい会社に入って、望まれる結婚をして、子どもにもいい大学と進路を歩ませ、盤石な老後を作る。それはなんとなく、当たり障りがなくて、心配事が少なくて、家族や世間にも望ましいからそれが理想なんだと思うだけで、他にも幸せの形はいくらでもあるし、そんな理想を正義だと思い込むから、自分の現実が受け入れられなかったり、苦しんだりする。



それと同じように、吹奏楽部においても、厳しくドラマチックな部活動をしながらレギュラーに入り、吹奏楽コンクールやマーチングコンテストで全国大会金賞を獲り、多くの招待演奏に参加し、きらきらとした笑顔で「ありがとうございました!」と言ってのける、そんな部活動を理想だと思い込む。その体験したこともないよく知りもしない理想は、どこかで誰かの現実になっているというのに、自分はそれと比べて程遠い、自分はなんて運も悪いしダメなんだ、と、近付く努力もしなくなる。


わけもなく上を目指さなければいけないわけではない。

ミスがあったり、和音が乱れたり、そんな傷だらけの音楽でも、思い出に残る部活はできる。高級品を食べたり身に着けたりしなくても何とか楽しみを見つけながら生きていくことができる人も居るように、ケースバイケースで順応し、身近な夢を現実の続きへ置き換えていくことができれば、確実に自分という存在は、価値を持つことができる。


だから、無理に傷つけあったりしなくても、身も心もヘトヘトになるまで頑張らなくても、この場所で楽しい時間や充実した時間は、得られるはず。


しかし直人は、それでも思っていた。
吹奏楽部である以上、前を目指していい。先輩がそう教えてくれたように、前へ向く目標…夢が欲しいと。



「…ごめん。

 それでも俺は、頑張りたい」
「ううっ、ううう…いやっ……」
「だって…俺、この学校の吹部が、
 ほんとに、マジですげー…大好きで……。


 …すげぇ人が集まってて。
 みんないい人で。

 楽器が上手いかどうかなんて関係ない、
 現実離れしてるくらい個性的で、
 笑っちゃうくらいいつも…楽しくて。


 …実際、ほんとにすごいじゃん、みんな。
 全校集会も、文化祭も、アンコンもこないだの
 パットの演奏会も。
 あんなのふつー上手くいくかっつうのが、 
 いっつも何とかなって…。


 いっつも…いっつも、本当にすげーなって、
 マジで…感謝してた。みんなに」 


言いながら涙が出そうになった。潤んだ瞳が、唇をすぼめてまっすぐに見てくる美幸の視線と合って、固く握手をする。その後でまた、顔を下げて目を片手で覆う低身長の少女へと視線を映し、彼は続けた。


「…そんなみんなが集まってるこのバンドが、
 曲の出来も出し物もショボい定演やるなんて、
 そんなの…もったいなくて、悔しすぎるじゃん……。


 …だから俺は、片桐さんにソロを吹いてもらいたかった。
 
 俺なんかよりもめちゃすごい人が居ること、
 この部のベストがそれなんだってこと、
 伝えたいと思ってたから…。


 …俺は全国行く学校のサックスに比べたら
 下手で、才能もなくて、何にも長所なんかなくて…。
 

 だからソロ吹く資格なんてない。


 オーディションなんてそれ自体おかしい、
 みんな俺が前で吹く機会がたまたま多かったから
 マヒってるだけで、本当は俺が下手クソなことなんて
 初心者のみんなでももうあと少しでも時間が経てば
 わかるようになると思うし。

 …それに。
 …美樹原さんや詩織が俺の今までのソリ聞いて
 どう思ってるか考えたら…本当に、怖かった……」
「……。

 私、そんな、そんなこと…」
「そうだよー…。
 直ぽん、すっごくじゅうぶん、じょうずだよー…」
「…いや。わかってる。
 俺はダメだって。この楽器の良さも全然引き出せてない。
 前はもっとギンギンに倍音かかってたのに
 今なんてもう全然痩せて輝いてなくて…最低で…。

 
 ……。


 …でも。 

 
 でも。俺は…上手くなりたいと思った」


気にしないで言えた、やっとの思い。

先輩に怒られたくない?コンクールで落ちたくない?いや、どれも違う。自分が下をくぐろうとして頭をぶつけてきたハードルは、跳ぶためのものだと、本当は最初からわかっていた。でも、お前には無理だ、お前には価値がない、そう言われ続けて、諦めてきた。でも。



…やっとわかった。
全校集会が嬉しかったのは…明日が貰えたから…だけじゃない。


昔みたいに。

辛かったけど、前を向いて頑張りたいと思えたから。…頑張るしかなかった、の間違いかもしれないけど、まあ…頑張れて、みんなもそれを応援してくれた気がして。だから、俺は…あの全校集会が嬉しかったんだって、今は…思う。


「楽器だけじゃない。
 俺はまるでダメで、最低で…本当はもう
 みんなと関わっていい人間じゃなくて…。


 …けど、そう決めたのは他でもない…俺で。
 今のまま何も変わらない、何したって根本的なことは
 何も良くならないんだって、思ってんのは…
 そう、やっぱ…俺で。

 
 …それでも。
 それでも俺は、好きだと思ってるこの部を、
 音楽を、なんとかしたいと思った。

 この今の沈んだ流れの結末を、
 やらされて適当にやった定演で
 終わらせるなんて、あっちゃいけないって…」
「……。
 それは…。
 
 …辛い思いをしてでも、
 ケンカして傷つき合っても、ですか…?」
「……。

 ああ。でも、俺はそれが、昔と同じだと思わない。


 昔の俺たちは…誰かに後ろ指さされるのが怖くて、
 加害者側に廻ることで被害者になるのを防ごうとして、
 誰かを常に責めてた。
 そしてみんながそれをやるから、あんな部活になった。
  

 要は誰かを貶めなきゃ、自分を守れなかったんだ。
 どんなに上手く吹いても、あそこでは難癖つける奴しか
 居ないから、自分の価値を証明できなかった。
 だから、他人を傷つけて、自分が上に立つことでしか、
 存在価値を示せなかった」


2人の中に、別々の思い出が思い浮かぶ。
けれどその思い出の舞台は、同じ場所、同じ登場人物。


――メグさぁ。ほんっとお前吹けてないよね。


――ねぇ。高見君。やる気あんの?


先輩たちにそんな風に言われたこと。
同級生同士でも言った言われた、そういう暗い思い出は数限りない。


…私なんて必要、ない…。


…俺なんて、居ない方がいい…。


2人ともが、そう何度も思ってきた。
今も、些細なことから思う事は多々あって、辛くて悲しくて。


でも、そんなの辛いのにここに居るのは、きっと。


…だって。高見さんも、詩織ちゃんも…辞めてないから。


…なんだかんだ言ってもちゃんと仕上げてくるあいつや、自分を捨てずに吹いてる渡瀬に、本当は支えられてた。詩織にも、都子にも、美樹原さんにも…。



……自分だけ、逃げるわけにいかなかったから。だから。



「…でも。
 今のこの部のみんなは、そんなことしなくても
 他人を認め合って、みんなバラバラのことしてるみたいに
 見えて、助け合っていける。


 だから…今はまだ俺に価値なんてないけど。
 ここなら、俺も。もう…誰かを責めなくても、
 自分の音を、価値を…磨けるかもしれないって…思う。
 だから」


今見えている自分だけが、自分の価値じゃない。
これからの未来も、自分は今より輝いたり曇ったりするだろうし、このまま自分が無価値の最低の人間のまま終わるとは限らない。何よりそれを教えてくれたのは、先輩であり、そして吹部である。


できなかったことができるようになる。
知らないことを知ることができる。

それらの成長が、今見えている現実の続きを歩くための線路になっていく。


「俺は上手くなりたい。
 
 もう一度みんなをここに連れ戻して、
 この部らしい定演をやって、
 できれば先生もここに居てもらえるようにしたいし、
 そうやってできた舞台の上で後悔の少ない演奏をして
 今までかけた迷惑の分、恩を返せたらって…。

 
 …今更一か月もないのに欲張りなのはわかってる。
 そこまでにどれくらい上手くなればいいのか…検討もつかない。


 でも……俺が上手くなりたい理由は、
 ちゃんと価値を見つけてここに居たいと思う理由は…
 やっぱり、そういう夢が…捨てきれないから、だから」


楽器をかばいつつ2人に向けて頭を下げて、直人は今一度言った。


「もう一度だけ…!

 俺に頑張らせてください…!」


お願いします!

運動部みたいにそう声を張った。かつて先輩にそうしたみたいに、最後の機会を貰うべく、頭を下げて。


答えは、返ってこなかった。
でもその後からパート練習ができたから、少なくとも拒絶されていないことは、彼にもわかった。


――俺の何が好きなの。


かつてもある人にそう訊いて、返事がなかった。
けれど今はわかる。そんなもの、なくて当然だった。あんなことして責めなくても、十分認めてくれていたのに。もう自分の居場所は、あの人の側にあったはずなのに。



…頑張って、取り返せるか。
お前の言う通りにそうなるかはわからないけど…少なくとも、俺が頑張らなきゃ、俺の現状は、よくならないから…。



はっきり言って、恐い。
頑張ってそれが取り返せるか、罪を償いきれるのか、結局何もしない方がいいんじゃないのか。もしも次に折れたら、もう二度と立ち直れないんじゃないか。そういう不安は心に巣くっていて、いつまでも出て行こうとしない。


そんな自分をどうにか維持しようと、美樹原の指示や、先生の話には、大きく早く覇気のある返事をして、気を張った。心の中はどしゃぶりだし、表情にも余裕がない。自分が壊したこの部活だ、居辛いことこの上ないし、自分以外消えたサックスパートの椅子の線を見ると、たちまち罪悪感が根を張り枝を張り、胸の中も腹の中も熱いものがこみあげ、自分を罰したくなる。だが、自分がここに来たのは、そんな悲しみに浸るためではない。この椅子のラインを、もう一度作り上げるためだ。


「…あら。

 …もう二度と。
 楽器は吹きたくないんじゃなかったのかしら」


辛辣な表情と言葉。
部活終了後、水無月からそう声をかけられたのも、仕方がないことだった。


陽ノ下 光の期待を裏切り、傷つけ、今までの時間を台無しにした。それは、間違いなく自分が起因している。


「…ああ。
 一度は、そう思った。


 でも…吹かないでいても
 何にも解決に繋がらなかった」
「…今更、何をしにきたのやら。
 
 あなた、自分でしたことがわかっているの?」


今日、ここに高見 直人が居ること自体に驚いている人も居る。
彼女らのそのやりとりは注目されて、指揮台近くで先生も、事態が荒立たないかどうか、憂いに濡れた瞳で見つめている。


それらの視線を受けながら、まるでそのすべてに弁明し、謝罪するように、直人は言った。


「…ああ……そればっかり考えてた。
 楽器を手放してから。

 
 …もう何にもしない方がいいと思った。
 何かしたって、意味ないって思った。
 だったら何もしない方が誰も傷つけないって…
 ……思った…」
「……。

 …それで?」
「…。
 でも、逃げたところにも何の救いもなかった。

 
 何とかしがみついてた頃よりも、
 誰かに責められてる気がした。
 自分のやったことを思い出して、
 どうしようもなく後悔するばっかりで…。
 
 
 …ここに今いることも、
 申し訳なくてたまらないし、
 殴られたって仕方ないって思ってる…。
 

 けど、逃げても、頑張っても辛いなら…。
 殴られてでも、償いたい。

 
 だから、俺に……。

 頑張るチャンスを、ください」 


誰にともなく、辺りを見回してから、頭を下げた。
視界の端に、首から提げた楽器のベルが見えて、そこに映った同級生が、ため息交じりに腕を組んでいるのが見える。



…直人君……。


気にしちゃ、だめだよ。そう言ったあの時のように、心配そうに目を細め、遠くからみつめる詩織。


「…。
 その機会があると感じるなら、
 楽器だけでなく、あの子とも向き合いなさい」


しかし意外にも、水無月はいつかのように手を上げたりするわけでもなく、優しげだった。学校を休むほど精神を病んでいたことも知っているわけで、心配していたのかもしれないし、もう彼に期待はしていないという風にもとれる。


だが言葉通りに、直人は受け取った。


「…ああ。

 光とも、片桐さんとも、神条さんとも。
 みんなとも。


 今まで以上に頑張りたいって思ってる。
 …具体的にどうすればいいのか、
 まだわからないところもあるけど…」


その言葉に反応したのは、A組の御曹司。

…どうすればいいか、わからない…?
それは、つまり……。


「…あの子に。
 真希にも感謝することね」
「へ?」


ふと、急に水無月から名前を挙げられた本人が困惑するが、直人はうなずいて答える。その通りだと。


「それは、うん、もちろん…。

 …楽器のこと覚えててくれて。
 嬉しいし、申し訳ないし、
 もう何て言ったらいいか…」
「…彼女、毎日考えていたわよ。
 どういう風に迎えてあげようか、
 どうしたら彼が帰ってきやすいか…なんて」
「あ、こ、琴子!」


誰かにそっくりな慌て方をする友人を見て、水無月は口許を思わず緩ませる。しかしどこかその笑みは完全でなくて、影を引きずっていて、直人にぎくりとさせるには、十分な物足りなさがあるのだった。


…光も、片桐さんも、語堂さんも。

そう、向き合わなきゃいけない…俺がこの部に引っ張った人だったり、俺がやる気にさせた人だったりするんだから…。


また俺に、そんなことができるのか…全然、わからないけど…でも。

俺は、それを望んでると思うから。
だから…。


空席を見て、直人は強くそう思った。
折れないよう、諦めないように。


多分、つづく





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