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zoom RSS きらめき高校吹奏楽部 〜もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら〜  罪の故郷を尋ねて 

<<   作成日時 : 2019/01/30 00:01   >>

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ついに命名ハザードインサイザーww


ずっとあの、迷ってたんですよぉ
14話ほど前に書いた、(https://97148032mother2.at.webry.info/201812/article_3.html)にて大活躍したイケイケの謎武器の名前をどうしようかとww


紐緒ハザード?ハザード紐緒?いや違う!w
ピンとこない…。


なんかうさぎさんの要素入れたい、けどハザードは何かインスパイア元だし入れたい、じゃあなんだ?鎌っぽい武器なわけだしハザードラビサイスとかだと全部入るけどそれはなんか仰々しくて美しくない、なんかうさぎの歯って英語でなんか言うとか無いのか、いや特にねーじゃんどうしよう…と、ずっと悩んでましたww


しかしついにいいのが浮かびましたw
それが今回使った「紐緒インサイザー」および「ハザードインサイザー」でございます!w


インサイザーってのは切歯を意味します。噛み切るための歯であり、うさぎの前歯に相当すること、伸びすぎてしまうこともあるという点が鎌っぽいインスパイア元の「アックスカリバー」を連想させることなどが、まさにピッタリだと思います、まず加点。噛み切ってやるぜぇ!


そしてさらに!インサイザーには内径測定器という意味もあります。直人君の内に眠るうさぎさんファントムに対して働きかけるあのアイテムに、これまたうってつけ!折りたたんでおいて展開したら鎌になる、っていう点もin scythe(内蔵鎌)といえるわけですし、トリプルニーミング!あーもうこれしかないってなりましたww


インサイザーっていう言葉の響き自体、紐緒アーマーとか紐緒ドライバーとは違ってより無機質でメカニカルな印象を与える感じがするし、異質で怖い雰囲気がなんとなくするのも禁断の兵器感あっていいですわ、もう満足!w


しかし俺氏の腰の痛みは治らないのであった…!
よって今日も小出し…すみません…!

以下本文
----------------------------------------------------


「あ、あの、閣下。
 ディスチャージャー部分のセクター
 なんですけど…」
「……」
「あ、あの…」
「…。悪いわね。 
 聞いていなかったわ。
 
 何かしら」
「あ、い、いや。
 やっぱり、いいです…」
「…そう」


明らかに覇気のない科学部のカリスマに、スモークマシンや照明器具を作り上げている部員たちは皆、一様に「何かあったのかな」と、心配と勘ぐりの目を向けてため息をついた。


パソコンの前に着いておきながら、座っている椅子を身体ごとゆらゆら揺らすだけで、肘置きに頬杖をついたまま何もしない紐緒。彼女の調子は、数日前からずっとこうだった。


何があったのか知っている者は、ほぼ居ない。
だから、何か世界征服に支障をきたすトラブルが起きているのかもしれないとか、まさかの恋煩いかもしれないとか、色々な憶測が作業音の中でひそひそとかくれんぼをするばかり。


また、唯一何があったのか知っている、もうひとりの科学部の天才女子は、そんな閣下の様子を影から見ながら、「かっか、かわいそう…」と表情を曇らせる。


彼女は数日前、紐緒が吐露した言葉に、何も言ってやることができなかった。


「…私は悪魔の科学者、ね……。

 私さえ…私さえ居なければ、
 プロトドライバーの後遺症で特異体質の
 人間を生み出すこともなかった…。

 あんなことになることも、
 彼を加害者にしてしまうことも…!


 …私と同じなのよ、彼は…。
 彼にも夢があった、なのに私はそれを…!」 


罪悪感に悶え、頭を抱えて髪をかきむしるような仕草をしながらそう語った紐緒に、河合は「そんなことない」と言ってあげたかった。だが、その根拠、証拠が提出できない以上、きっと紐緒は納得しない。やさしさから一時でも慰めの言葉をかける者もいるのかもしれないが、河合 理佳はそんなことに意味など無いと判断したのである。


…閣下に会えたから、私の「夢」も前に進めたんだもん。
閣下すごいもん、閣下おもしろいもん、なのに…。



実際、紐緒の醸し出す非日常的雰囲気が、はちゃめちゃな「きらめき高校らしさ」を作るのに一役買っていると思っている人も、きらめき高校の生徒の中には数多い。おもしろいことなんかねーかなーと思う人に、願ったりかなったりのおもしろい出来事を提供してくれる存在なのだ、近付くのは怖いと思っている人も多いが、その存在は多くの人に認められ、歓迎されているのである。


けれど本人は苦しんでいた。
過去の遺産が負債となって自分を苦しめるのを、彼女は自分なりに真っ向から向かい合ってきた。――のではないかと、河合は推測している。



…きっと、直人くんや吹奏楽部と戦ってきたのも、実戦データを集め、紐緒ドライバーを完成させるため、だったんだよね。

試作機二号やロボも、たぶん紐緒ドライバー以外の方法で、紐緒アーマーにコーティングされた人間と渡り合うことができないか、模索してたんだろうなぁ。けどどっちも発展系の開発をしてないってことは、見限ったってこと。


…だって、紐緒ドライバーが使えることがわかったんだから。あ、じゃなくて、使える人間が見つかった、っていうのが合ってるかなぁ。だから、《コネクト》リングを作ったり、あの…紐緒インサイザーを作って、直人くんがドライバーを使う以前でやられちゃったりしないようにしたんだと思うし…。


だから、閣下にとって直人くんは……ただの被験者かもしれないし、自分の罪を晴らしてくれるかもしれない人かもしれないし、もしかしたら…一緒に夢をかなえてくれる人、みたいな感じだったのかもしれないよね…。



実際、それだけではない。
その裏で、紐緒の中では罪悪感がしばしば揺れ動いていた。彼にも別の夢がある、そのことは文化祭の舞台の上で直接聞いた。彼が練習を熱心にしていることも、理科室からよく聞こえていたから知っているし、おかげで興味ないと思っていたのに、アルトサックスとテナーサックスの音の差くらいなら容易に聞き取れるようになった。


そんな人間を危険な戦い、それも自分が引き起こしてしまったそれに巻き込むなんて、身勝手もいい所じゃないのか。傍若無人に振る舞っているようで、本当は紐緒も、そんなことは痛いほどわかっていた。しかしドライバーを彼しか使えない以上、彼の力を借りないわけにはいかない。しかし言って聞いてくれるわけもない、それもわかっている。


…私も、もう普通の女の子の幸せは、捨てたつもり。
それは罪を晴らしたとしても、取り戻せはしない。覚悟はできてる。だからこそ、きらめき高校の紐緒 結奈は氷の心と鋼の決意を、途切れさせるわけにはいかないのよ…。



だからせめてもの償いとして、定期演奏会を手伝い、《コネクト》の指輪を実用化して彼に託した。だがそれも、すべては身勝手な自分の事情と判断でやってきたこと。それが彼を壊し、同級生たちを傷つけ、吹奏楽部にも大きな痛手を与えてしまった。



…もう私は、許されない。
きらめき高校でやってきたことも、すべて無駄だった。ただ、罪を重ね、どうしようもないどん底に落ちただけだった、それも多くの人を巻き込んで……。


謝って許されることじゃない。
償う方法を考えれば考えるほど、破滅的な考えばかりが過り、また自分を責めたくなる。…何等かの方法で紐緒アーマーを適用された人間を抹消するシステムの構築、時を戻す装置、いやそれが無理なら大人数を洗脳することで記憶を操作できれば…。



そんなことをしても罪が消えることはない。いっそ考えることを止めたい、無思考で時間の流れを空気の音と共に聞いていたい。そう思い、また黙り込む。すると、理科室の作業音の中に、ある音声が聞こえてくる。


「――もう、俺には…逃げる場所もない…。


 だから…せめて…逃げてなくした場所だけでも、
 俺は……守らなきゃいけないんだ…」


パソコンにデジタルカメラを繋ぎ、あの惨劇を映した記録を閲覧するのは、河合。眼鏡越しに見知った顔が苦痛に歪むのを見ながら、「直人くん…」とひとり呟く。


…かっかの作った紐緒インサイザーは、たしかにファントムと波長共鳴して、ドライバーなしでも被検体から尋常じゃない戦闘能力を引き出した…。でも、その制御機関が、小型のために実装できなかったんだよね、開発期間も短かったし、テスト試用できるひとも居なかったし…。


「――ぐっ!い、いでえええ!?

 えっ、えええっ!?
 な、なんでだ…!?」


河合が顔を近づけるディスプレイに、理解し難い痛覚に困惑する、プロトドライバーの被検体が映る。それまで一切の攻撃を受け付けなかったこの男が、ハザードインサイザーを用いた攻撃を受けた際のみ、このリアクションを見せた。それはつまり。


……インサイザーは、紐緒アーマーの影響を受けずに人体に接触できる…?

…波長同士の中和?…クーロン障壁における反応と置き換えると、正電荷の粒子が入射し、その運動エネルギーが被験者の人体に残る波長障壁を…。



何やらメモを取りながらも画面に目を食いつかせて、日ごろあまり見せることのないような真剣な顔を、やはり部員の多くには背を向けて隠している、お団子結びに眼鏡の女子。


即ち、彼女の想いはこうだった。

…紐緒インサイザーが失敗作じゃないことを証明できれば、かっかも元気出してくれるかも!


だが画面の中、インサイザーの被験者がうなだれて立ち尽くした時、


「――-【<<<《ハザード=オン》>>>】-」
「やめて!!」
「へ?…あっ」


声に河合が振り向くと、髪で隠れていない方の眼を怒りと悲しみに細めて紐緒が殺到してきた。彼女はおもむろにPCの電源を押し込み、河合の研究材料を画面から消滅させ、言った。


「何を見てるの!!」
「え、あ…ごめんね、閣下…。

 ひもおインサイザーの改良点を
 みつけようと思って、それで…」
「あんなもの……。

 あんな失敗作、もう二度と彼には使わせない…!


 …ダイナマイトと一緒よ。
 開発されてしまったが故に、
 たくさんの悲しみを産み、
 その作者も大きな罪悪感に苛まれた…。


 いいことなんて何もないのよ、
 あんなもの…!!」


元気がないと思ったら、今度は異様な剣幕で声を割るカリスマに、理科室の空気が凍り付く。皆作業をやめ、視線を向け、「なんだどうしたんだ」と狼狽、困惑する。


それに気付き、また自己嫌悪に歯を食いしばり、頭を抱えながら近くの実験用長机によりかかりながら息を漏らすと、「…ごめんなさい」と同級生に言おうとした。


その時。


「……!」


音がした。ここ数日、きらめき高校から消え失せていたあの音が。

その音を紐緒も、河合も、他の部員たちも、よく知っていた。


「直人くん…ぶかつ、戻ったんだ…。

 よかったぁ、元気出たんだ!」
「…高見くん……」


あの惨劇の直後、数日前の彼の様子を紐緒はよく知っている。橘の病室に見舞いに行った際、声をかけはしたものの、まともなコミュニケーションさえ取れなかった、廃人と化したあの彼が。また戻ってきて、頑張ろうとしている。


…あなたは、なぜ…そんなにも頑張れるの。
まともな精神状態ではないはず…サックスなんて吹いていられる穏やかな心境では、ないはずよ…。


…それなのに、なぜ……。


出だしが綺麗に出ず、何度もやり直しながら始まったロングトーンは、まるで飛び慣れない鳥が巣立ちを試みているよう。その音は、「俺も頑張るから。紐緒さんも頑張って」と言っているようにも聞こえるし、自分を責めているようにも聞こえる。


でも、彼なら。前者じゃないかと思えるから。
だから、尚の事辛かった。


「よかったね!かっ…

 かっか…」
「……。

 そうね…」


…。自分が嫌になろうとも、辛かろうと、やるしかないわね…。


肯定の意を示したにも関わらず苦虫を噛み潰したような顔をする紐緒に、心配そうな目を向けて河合は、思った。…どうにか、ぜったい完成させなきゃいけない。かっかにも、直人くんにも、元気出してもらいたいから…。





















声を震わせ吐き出してから嗚咽した同級生に、思わず駆け寄るサックス吹き。


「橘さん…!

 ごめん、その…落ち着いて、
 あれ…芹華って…神条さんのことだよね…?」
「…はい、あの子を、あの子を…」


こんな時に限ってハンカチがない。
幼馴染が「もう、だから言ったじゃない」と口酸っぱくするのを思い浮かべながら、申し訳なく思う。言う通りだ、俺のことを思って言ってくれてたのに、俺は都子をまた裏切って…。


…違う。そんな場合じゃない。


病室を見回し、ティッシュが置かれているのを取って、ベッドの上の橘に渡す。かすれた礼を言われたが、首を横に振るばかりの魔法使いは、彼女が落ち着くのを待って、今一度説明を求めた。


「…神条さんに、何かあったの…?

 神条さん、最近学校来てないみたいだけど…」
「……。
 あなたを裏切って、傷つけて。
 
 そんな私がこんなお願いをすること自体、
 許されないことだとは…重々、承知しています…」


謝る必要はあっても、謝られる覚えはない。
そう思う直人だったが、彼女が今口走ろうとしている事情を知りたいという気持ちが、橘へ耳を傾けるよう働きかけてくる。


…みんな辛いんだ。
何かを背負ってて。それを、俺が「そんなことない」って言っても軽くなんかならない…。


それに、なんで橘さんがあの仮面をつけてあいつと一緒にいたのか…それが気になる。あいつと付き合ってる…?神条さんが何か関係してる?…全然わからない。何かそこに、橘さんの苦しみも、神条さんの抱えてるものも、あるのかもしれないよな…。


「……。

 聞いてもいいかな、事情…」
「お時間…大丈夫ですか…?」
「ああ、うん…。

 …十一夜さんとも約束したんだ。
 神条さんに、部活にまた来てもらえるように
 するって」
「…そう、でしたか…。

 芹華も、十一夜さんのこと、話していました」
「そっか…。

 …2人は、中学からの付き合い、なんだよね。
 橘さんと、神条さんは」


その問いが奇しくも、橘が今から話そうとすることの引き金を引くことになった。ゆっくりと頷き、白い顔を上げた同級生を見ていると、直人の中で思い出したくない過去が、後ろ指をさしているような感覚にとらわれた。またやってしまったんだなと、無形の傷が騒ぐのを心中で抑えながら、橘のたおやかな声色が暗い影を落とすのを、まずい表情で拾い上げていく。


「…今でこそ、高見さんや、
 十一夜さん方…みなさんと会って
 変わりましたが、芹華は…。

 中学の頃は、殿方のみなさんも
 恐れるほどの、いわゆる…
 「不良生徒」でした」
「…不良……」
「ただ、誤解しないでください、
 人のものを盗ったり、
 悪いことをする子ではないんです」
「それは、うん…。
 わかってる、ぶっきらぼうなとこはあるけど、
 優しいところもあるし、義理堅いし…」


ニセ直人騒動の時も見逃してもらったし、十一夜も彼女のいいところを幾度となく口にしていたし、何よりあの出会いから部活に最近まで残って居てくれていた。無理やり誘った直人自身も、彼女からいつ辞めると言われてもおかしくないと思っていたのに、神条は初心者でありながらいくつもの窮地に相乗りしてくれた。


そのことを思い返しつつ印象を語った直人に、橘は安堵のため息らしきものをついて、うんうんと頷く。


「これを、私の口から話していいのか、
 躊躇われるのですが…。

 芹華は…施設の様な所で暮らしている
 ようなのです」
「施設…?」
「児童養護施設…というのでしょうか。
 詳しくは聞いたことがないのですが、
 そう言っていました。

 そこではナメられたら大変な目に遭う、 
 そのようなことを聞いたことがあります」 


一気にイメージが変わる話に、頭が追い付かない。

そのような施設というのがどういうものなのか、どんな場所なのか、どこにあるのか。それはわからないが、彼女が時々見せていた、悠々自適なようでいて、人の面倒も見てやるような一面は、そこで培われたとでもいうのだろうか。


「そのせいか、芹華はケンカもよく
 しているようでした。
 

 いわば、自分の価値を守るため、
 居場所を奪われないために、
 人に暴力をふるっていた…のかもしれません」
「……」


心当たりのある言葉に、直人の胸にも釘が刺された気がした。自分の価値を磨くことで浮かび上がるのではなく、人を蔑みマウントを取ることで、自分を優位に押し上げようとするその動き。それをきらめき高校に来てしなくて済んだのは、自分だけではなかったのかと、妙な親近感みたいなものが、奇妙にも釘を抜いていく。



「…実はいうと、それを止めようとして
 話しかけたのが、彼女との出会いだったんです」
「あの…俺を助けてくれた時みたいなこと?」
「あ、はい…そのような感じでしょうか。

 彼女は近所でもとても強いと評判だったそうです。
 しかし、私は祖父のすすめで武道を嗜んで
 おりましたから…」
「えっ…ボコしたの?」
「そんな、滅相もございません。
 素人だとしても嗜んでいる以上は、
 むやみに行使してはいけないとも教えられて
 いますから。


 ただ、護身のために、手捌きや体捌きを使って
 かわして、「暴力はいけません」と…」
「…さっすが。
 やっぱすげぇや、橘さんは」


…でもだからこそ、あなたに拳をふるったことが、とても悔やまれて…。


感心したように息をつく彼に、また表情をわずかばかり曇らせ、橘は続けた。


「それ以来、武道を教えてくれと 
 せがまれて、たびたび食事を一緒にしたり、
 お買い物へ行ったり…」
「ふつーに、ふつーだね、それ…」
「ええ。それからはいいお友達です。

 …でも、なかなか彼女を「夜の街」から
 抜け出させることは、できませんでした」
「…その、夜の街っていうのは?」
「強い芹華を慕う不良の方々は、
 少なくありませんでした。
 

 彼らは芹華を中心に集まって、
 また別のグループとケンカをしたり
 していたようなのです」


…夜のっていうのは、不良のたかり場みたいなものか…。


番長が居たようなあの世界。
そこに直人も、少しばかりいたことがある。家出をしたり遅くまで出歩いたり、ケンカをしたり、めちゃくちゃをした。


あの時は、自分を騙してきた大人たちへの反抗や、世の中への絶望、抑圧からの解放欲など、様々な思いが若さに加速されたことで、非行という逃げ道を走ったのだが。その実、裏腹に自分が望んでいたことは何なのかと、今になって冷静になって考えてみれば、答えは簡単だった。


…誰かに心配してもらいたかったのかもしれない。
甘えていただけなのかもしれない…。


普段できないことに快感を覚え、時間を有意義に使っているような錯覚へ逃避することで、現実を直視しないようにしていたというのもある。だが結局は、コンクールで大人から見捨てられた格好になった自分を、あれは何かの間違いだったのだと、誰かが都合の良い言葉と目を向けてくれるのを、期待していたに違いなかった。


しかし、そんなことはありえない。
どんなに辛くても、取り返したければ、自分が頑張るしかない。誰かが都合よく、価値や居場所を与えてくれるはずなどないのだ。そのことは、今になってみれば、痛いほどよくわかる。


……逃げて逃げて、みんなを裏切って傷つけて、俺自身が楽器にすがりついてまで手に入れた価値まで手放して…結局、何も残らなかった…誰も俺を助けてくれなかった……。


…違う、みんな俺を助けようとしてくれた。
心配してくれた。今も、あの頃も…それを俺は、ちゃんと聞き入れなかった。みんなが望んでるのは、もう一度俺が頑張って、明るい舞台の上で、結果を出すこと…。それは俺の望みとは違うと思ってた。…でも、それはイメージができなかったからなんだと思う、どんな風になりたいか、何が幸せなのか、何が欲しいのか…。


「…わかる気がする」
「芹華は…暴力を好んでいるわけじゃないんです、
 ただ…」
「それも、うん…いや、そうなんだと思う。

 …暴力が好きでやるんじゃない。
 誰かに認めてもらいたくて、自分が何かできることを
 証明したくて、そうやって得た居場所を守りたくて…。


 必死で、誰かを傷つけてでも
 居場所を守ろうとする気持ち…俺も、わかるよ…」
「えっ…?」
「…俺も、そうだったから。
 実際に拳をふるうんじゃなくて、言葉の暴力で
 そうしたことの方が、俺は多いけど…」


信じられない、と首を横に振る橘だったが、直人はもう、虚勢を張ることをしなかった。自分も神条と同じ、そうすることで自分を維持しようとしていたのだ、と。正直な自己分析を口にした。


「…勉強も運動も、部活も…。

 何もかも褒められることなんてなくて、
 そんな出来の悪い俺ができることって言ったら…。
 
 怒られるのが怖くて、だったら自分から
 誰かを責めて優位に立って、そうやって
 自分の居場所を何とか守って…。


 …でもそうするしかない人は、
 きっと俺以外にもたくさんいる…!

 
 だから…神条さんや、夜の街の人たちが、
 誰かを傷つけたり、悪さをしたとしても……。

 俺は、それをばかになんて…できないよ…。
 そんな資格、ないから……」
「……高見さんも、辛い思いを
 してきたんですね」
「…そりゃ、みんな…それなりに、ね。
 そうでしょ…」


同情される価値なんて無い。
すっぱい表情でそう思った直人は、まずい表情を橘とお互いに向け合うと、聞き直した。


「…それで。

 あのワル男って奴は、神条さんや
 夜の街に…関係のある人、なんだよね…?」
「…はい。
 芹華が言うには、昔は半端者の、
 根性なしだったんだそうです」
「ワル男が?」
「ええ。
 ですが、このところお見掛けしないと思ったら、
 最近になってまた、街に彼が現れたのだそうです。

 そして…久々に現れた彼は、
 見違えるほど強くなっていたのだと…
 芹華は言っていました」
「じゃあ、神条さんは…。
 
 仲間とかを守るために、ワル男と…
 戦ったってこと…?」

  
先読みして尋ねる彼に、橘の憂いに湿った顔がうんうんと頷く。


「その通りです。
 そして、まったく通用しないまま、歯が立たなかったと…。

 
 私も…こんなことを言いたくありませんが、
 芹華も十分に、自分なりの経験や勘で、
 力をつけていたと思います。…でも、それがまったく……」


…紐緒アーマー…。
ワル男には、プロトドライバーの後遺症が、やっぱり残ってるのか……。


数日前のあの河川敷の惨劇でも、直人がハザードインサイザーを手にするまでワル男は、常にいやらしい笑みを浮かべ尊大な自信をみなぎらせていた。あれは絶対の自信、紐緒アーマーが自分に一切のダメージを与えないという確信が成す、約束された勝利を知る者の態度に他ならない。


「…それで、神条さんはどうなったの…?」
「……。
 夜の街では、喧嘩の強い方が正義、
 地区ごとの上下関係も実力が決めるものなのだと
 芹華が言っていました。

 
 …負けた芹華たちは、あの殿方に
 脅されたのだそうです。

 
 …高見さんを倒し、あの魔法の指輪を
 献上しろ、さもなくばきらめき高校の生徒を
 襲い、傷つけると…」
「…!そんな……」
「…芹華も、今まで居た夜の街と
 きらめき高校の皆を天秤にかけることを、
 ずっと躊躇っていました。


 …そうしてようやく出した答えが、
 あの仮面だったんです」


段々と繋がり始めた線と線。

渡り廊下で、「もう、ちょっと吹部にはこれそうもない」と話してきた時、神条はアゴに絆創膏を貼っていた。そして、タケヒロサーカスのゾウ、ポピーが脱走した際、山で仮面の男に当てたフィニッシュブローは、アゴへの突き上げだった。


……まさか、それじゃあ……。




多分、つづく

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