きらめき高校吹奏楽部 ~もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら~    時代

ドラマシリーズ的演出もやる


こんちは。
やっぱりKOSSのヘッドホンいいすね!壊れたからまた買ったけどこれが一番コスパいいっすわぁ。ZSTとかもアマゾンだと安いからそちらも好きすね。


今作のスマブラ、バランスがまぁまぁいいですね。
パックンが出た直後はパックンゲーになってしまったみたいですがww


ぼくはカムイ使ってて、今世界戦闘力が334万?とかそんくらいになりました。ガノンも310万くらいにはなったんですが、めっちゃうまい人とやるとガノンぜんぜん動けなくて辛い…w


あんなにたくさんのゲームからスピリッツなりアシストフィギュアなりが出るのに、藤崎 詩織ちゃんは何しとんねん!!wあなた詩織25巻でしか見てないですよ最近!(爆


あ、いや、加藤 純一さんの配信で見ましたわそういや。
結構シリーズやってきてる純でも歯が立たなかった詩織…いい女だなぁ!?


以下本文
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心臓の鼓動が早くなっている。戸惑いと、罪悪感と、無常感が、ごちゃまぜになって立っていられない。思わず壁に手をやって、現実を否定するかのように首を横ざまへいやいやと振りながら、直人は橘に問いかける。


「……。


 …俺は、神条さんと…戦ったの…?」
「……。はい」
「…いや、いやいやいや…待ってよ…。

 …じゃああのわけわかんない戦い方は何?
 和傘とか、ビー玉とか、けんだまとか…」
「…芹華が前に話していました。
 中学生にもなると、男女の腕力の差は
 ありありと出てしまうと。

 だから彼女なりの工夫だったんだと思います。
 距離を取りながら中遠距離に手を出しつつも、
 相手にひどい怪我を負わせることのない
 武器を選んで…」


…もう、吹部には居られそうもない。


神条がそう話していたのは、間違いなく夜の街の事情のせいであり、そして昼の街…つまりきらめき高校 吹奏楽部のためでもあるのだろう。そして、もうひとつ。大きな罪悪感のせいも、あるに違いない。


「…きらめき高校の生徒が襲われないように、
 縄張りのみんなを守るために戦ってたって…。


 なんで、じゃあどうして指輪を俺にくれって
 直接言ってこなかった…!?」
「それは私も、同じことを思い、
 高見さんに力になってくれるよう
 お願いしようと提案しました。


 ですが、あのワル男さんという方は、
 実力のある芹華に、指輪ついでに
 高見さんを倒してほしいと言ったそうです」
「……」


…俺がドライバーを使えるからか……?
 

どこまでの事情をワル男が知っているのかはわからない。もしかしたらあの男の手先が科学部に居て、そこから情報が洩れているということも考えられる。


だがいずれにせよ、現実離れした紐緒ドライバーと密接の関わりのある高見 直人が自由に動ける限り、ドライバーを手に入れて力を手に入れようとするワル男にとって、何らかの障害となる可能性は否めない。―と、ワル男が真剣になればなるほどそう考えるのも当然のことだ。


「…しかし芹華には、あなたを倒すことが
 できなかった…」
「…俺から見れば相手は仮面の不審者だ。
 本気出して相手するに決まってる。


 でも…神条さんには、俺が俺として映ってた
 わけでしょ……」


やり辛かっただろうな、悲しかっただろうな、そう思う。だからこそ、学校に来なくなる前の日に、神条は「ごめんな」と謝りに来たのだろうから。


…道理で、星川さんに手を出さないわけだ……。


前髪を掻き上げて頭に手をやって、やりきれないため息をつく。《ファントム》の指輪に手をかける前から、自分は女の子相手に銃剣を向け、魔法だ何だと傷つけていたのだ。


…誰かと関わる限り、傷つけることは避けられない…。
どんなに気を付けても、自分は被害者側だと思っていても、知らないところで誰かを傷つけてることに気付かない自分は、誰かにとっては加害者ってわけ……。


…そう思うと。
俺は思ってる以上の罪や恨みを背負って、ここに立ってるのかもしれない…。いや、そうなんだろうな…。


「…それで……?
 神条さんに出来なかったから、
 今度は橘さんが仮面つけて出てきた…
 ってわけ…?」
「…本当に、申し訳ありません。


 条件を守れないなら、きらめき高校の
 皆を襲うと脅されて、ますます絆創膏を
 増やして戻ってきた芹華を見るのが、
 もう…耐えられなくて…。
 

 …だから。私は…。
 私さえ罪を背負って、それで、
 なんとかこの場が収まるのなら、そう思って……。


 本当に…本当に、浅はかでした……」


もう一度深くため息をつき、天を仰ぎ鎮痛に目を瞑り、病院の壁に拳を押し当てる。そんなサックス吹きから目をそらし、唇を噛みしめて涙を一筋こぼす、手負いの武道家。


「ごめんなさい……」
「…ごめん。

 謝るべきなのは、橘さんじゃない」
「ち、違います、高見さんに非は…」
「――そうじゃない…!


 …悪くない人なんていないよ、そりゃ。
 俺も、紐緒さんも、神条さんも橘さんも、
 どっかで何かしら動けてたら変わったかもしれない、
 でもそんなん言い出したらキリがない…」
「……」
「けどさ…どういう事情があるのか、
 そりゃ、わかんないけど……。


 あいつは、悪いと思ってんのか…?」
「ワル男さん…ですか?」


ようやく視線を合わせて頷いた、相変わらずまずい表情のままの魔法番長。

彼は壁から手を離し、ティッシュを手に取ると、橘の頬を濡らす線を拭い、言った。


「…俺が指輪を奴に渡すことはできる。
 でも、それじゃ問題は解決しない……。

 神条さんを助けることも、できない」
「それは…。

 …やはり、そうでしょうか…」
「あいつが指輪を手にすれば、
 俺たち以上に悲しい思いをする人が
 街にあふれかえることになる。

 
 もっと取返しのつかないことも、
 起きると思う」
「でも、他にどうすれば……」
「…「夜の街」の掟が、
 強さ至上主義なんだとしたら。



 ……あいつを倒すしかない」


口走っておきながら、内心では恐怖心がクモの巣のように糸を張り始めている。プロトドライバーの後遺症により、不完全ながら紐緒アーマーを身にまとったあの男と戦うには、再び“あの武器” を使うしかない。


…ドライバーを使って、力を加減することはできない。
直接手を出さないにしても、もしも《バインド》で絞め殺してしまったら、《サンダー》で心臓が止まったら、《フォール》で生き埋めになったら……魔法使いどころか、人殺しだ……。


だったら…また“あれ”を使うしかない。
あれなら一応…怪我させても殺すことはなかった…まあ大事に至らなかったのも、番長や赤井さんが止めようとしてくれたからだけど…。


でも…たった1~2分で仕留められるのか…?また暴走したらどうする…?


…番長か誰かにフォローを頼むか、あるいは紐緒さんや河合さんに、何か作ってもらうしかない…。

けどそれは…俺の罪の片棒を担いでもらうってことだ……。

そんなこと、許されるのか……もっとなんかあるんじゃないのか、俺だけが地獄に落ちれば済むような方法が……。



思考がシミュレーションを始める。ワル男を呼び出したその場所でハザードインサイザーを起動し、戦って数分後に完全な密室になるような仕掛けを作れば、どうだろう。いや結局、そこで暴走すれば結局人殺しになる可能性が高い。


…なんか、ないのか……。
あの武器を使って、数分後に俺だけが死ぬような仕掛けを作るとか……。


「…高見、さん…?」


橘の声が、熱くなった思考を我に返す。
思い詰めた顔がはっと現実に戻ると、途端に幼馴染の声が脳裏で泣き出した。


――どうしてもっと自分を大事にしてくれないの…!?



「……」
「あの…武器を使うつもり…ですか?」
「…それ以外に勝算がない」
「た、確かにあの武器で叩かれて、
 ワル男さんも大層痛がっていました。


 でも…危険です…。
 紐緒さんがおっしゃるには、
 あの武器を使いすぎれば、もう意識が
 戻らない可能性もあるとか…」  


死ぬということは、まったく意識がないということ。
熟睡している時と違い、夢を見ることもなく呼吸をすることもない。罪の意識も、刃を突き立てた痛みも感じずに済む、生体兵器と化すのだ。


ならば、ハザードインサイザーを使用していた間、意識がまったく消えていた直人は、ある種臨死体験をしていたことになるのかもしれない。彼は知る由もないが、対峙した赤井などは「こいつ息してんのか」と思ったほどなのだから。


それに、武器を手放さなければ暴走状態を止めることができないにも関わらず、意識を失うということは、自分で止めることができない、ということになる。仮にワル男を打ち破ることができたとしても、今度は周囲に居る人間にターゲットを切り替え、攻撃を継続していく狂気の暴走状態が始まれば、それこそ取返しのつかない事件や事故に繋がるかもしれない。けれどそれを止める方法は、今のところ外部からの刺激のみで、ファントムの力をオーバーフローするほど漲らせた暴走状態の直人に攻撃を仕掛けることは、大怪我を覚悟する必要があり、危険極まりない。


確かに強力かもしれない。
体質と資格が合えば無害で全能なドライバーと違い、あまりにもデメリットが苛烈すぎる。


「…何か方法は考える。

 対策が可能なら紐緒さんにも相談はする。
 シチュエーションも整えられるなら、
 神条さんにも協力してもらった方が
 いいかもしれない」
「……。芹華がまた、
 無事に学校に来れるのなら…
 そうあってほしいとは思います。

 
 でも…高見さん、あなたが危ない目に 
 遭うのは…」
「――俺は。
 意識がなかったんだとしても、
 橘さんや赤井さんや、神条さんを…傷つけた。


 夜の街のことをちゃんと理解しようともせず、
 半端に俺が顔を出したせいで、
 きら高が狙われたって可能性もある。


 …もう無関係なんかじゃない、
 むしろ最前線で身体張って
 責任を取らなきゃいけないのは…俺だよ…」


声をかすれさせ、本心から悔いるように顔を伏せた直人に、「でも」と橘は言い返す。


「それで高見さんが吹奏楽部に…
 日常に戻れないことがあったら…!

 
 あなただけではありません、
 多くの人が…責任を感じたり、傷ついたり
 するはずです…私も…」
「…それは……わかってるよ…。


 定演もやる。
 ワル男も俺が倒す。それだけのことっしょ…」
「…すべてが円満にいくとは、
 思えませんが…」
「やるさ。
 

 …なんか知んないけど、
 魔法使いなんだから」


苦笑にもならない鼻で笑ったような感じで、いい加減な根拠を味方につけて楽器を担ぎ直す吹奏楽部の男子。そんな表情の彼に、橘も笑みを返すことは、できなかった。


「だいたいの事情はわかった。
 
 神条さんの状態を考えたら、
 時間があまりないことはわかってる。
 定演にも、できれば出てほしいし、
 近々ケリがつけられるように、俺も準備する」
「……本当に、申し訳ありません。
 私も、責任を取る立場にいるはずなのに…」
「橘さんだってよかれと思ってやったんだから。
 仕方ないよ。

 俺だって同じ立場に居たら、
 同じことをしたと思うし」


…よかれと思って…それは、あなたも同じでしょう、高見さん…?


せめて、この苦しい現実に少しでも救いを残せるのならと、自分だけが幸せから身を引いたつもりだった。ブザーの鳴るエレベータから自分が居りて階段を登れば、みんなは楽ができるじゃないかと。


だがそう簡単にはいかなかった。
誰も得しない現状に、英断は実らず後悔と罪悪感だけが募って。


…高見さんも、深く傷ついている…そのはずなのに。
なのに、あなたはまた、自らが傷つく道を選らぼうというのですか…?


「…高見さん」
「うん…」
「…私は、はじめてあなたの演奏を聞いた時…
 心から感動して、涙を流してしまいました」
「…覚えてる。
 泣いてくれたの、正直嬉しかったけど、 
 びびったよちょっと」
「本当に心動かされたんです。
 それまで音楽で涙するなんて、
 一度も無かったのに。


 …芹華も、きっとあなたの音や、
 あなたが見せてくれた世界に…心を
 動かされていると思います」
「そうなのかな…?」
「芹華がきらめき高校に居る間、
 ケンカをしたりつっけんどんな態度を
 取らずにいられたのも。

 
 吹奏楽部という、自然にしていても
 居心地の良い居場所があったからだと、
 思うんです」


その推測は、彼女の親友に対して当たっているのかはわからない。だが皮肉なことに、目の前の少年には、ずばり当てはまるものだった。


大声で非難しなくても、攻撃する側に立ってマウントしなくても、自分を追い出そうとする人なんてどこにも居なかった。それどころか、自分は出来ることを何とかこなしているだけなのに、それをみんなは「すごい」と頼りにしてくれて、褒めてくれて、認めてくれた。


そのおかげで、直人も格段に、誰かを非難したりする機会を減らしてきたのだ。けれどその安らぎは続かなかった。直人には何か、真実を偽装してみんなに欺瞞の態度をとっているような、後ろめたい感情が芽生えてしまったのだ。


事情を聞くに神条も、それに類する思いがあったのかもしれない。
本当の自分の居場所はここではない、みんなを騙してまで昼の街に居ることは、許されない。彼女が仮にそう思っているのだとしたら、今の直人にこそ、言えることがあるのではないか。



「…だから。
 
 高見さんも、どうかご自愛ください。
 高見さんの音は…きらめき高校の吹奏楽部に、
 必要なんですから」
「……。ありがとう。
 …ごめん、本当に。
 

 ……自分でやっといてなんだけど…。


 一緒に出たいって思ってる。
 橘さんにも、定演に出てほしいって気持ちは、
 前から変わらないから」


思いを伝え、その日はこの辺りで話を区切り、直人も帰ることにした。
あまり長居しても、2人ともが「ごめん」を繰り返して、キリがなかったから。


帰り道々、直人は考えた。
いったい定演までに、何をしなければいけないのか、そのために小さな目標をいくつクリアすればいいのか。


「樹」の伝説と一緒だ。
卒業式の日に女の子から告白されるなんていうことは、ただのパッシングポイントに過ぎない。パートナーとなる相手に、永遠という夢を見せられるくらいの自分を、3年生の卒業式までに作り上げることこそ、伝説という夢を現実に塗り替えるための布石になるのだから。


途中、コンビニに寄った時、直人はペットボトルのお茶のラベルに書かれた、川柳を目にした。お茶の消費者が応募し投稿した川柳の数々は、どれもシニシズムや愚痴に溢れている。


「ためている 俺はストレス 家内は金」
「ビットコイン 夫婦仲より 現実的」
「ふーん、へぇ 旦那の話は 全スルー」


見ていると、みんながみんなこうなるんだろうかと思う。
何年も何年も一緒に居て、お金や家の事情も共有すれば、少なからず思い通りにいかない相手が嫌になるに決まっているし、隣の芝の青さに、ますます自分の足元が憎らしく思えてくるのだろう。


…もしもそうなんだとしたら。
俺はこんな思いを、好きな人にさせたいとは思えない。


想像する。自分が、誰かと結婚したとしたら。
かつて愛した人をむげにあしらい、なんとも思わなくなる自分が、いつかどこかに居るのだろうか。


「おかえり!」
「…ただいま」
「バッチリご飯作って待ってたんだぁ!
 それとも先にお風呂入る?
 それとも…」
「…疲れたからちょっと寝る。
 起きたらシャワー浴びるから、
 ほっといて」
「えっ…せっかく待ってたのに!」
「…っせーな疲れてるって言ってんだろーが!

 あとでかい声出すのやめろって
 言ってんだろ。何回言わすの」
「……」


…どうして光を想像したのかはわからないけど。
まあ、ようするに…こういうことが起こりうるし、逆もあるってことだよな。


…そんなの悲しいだけじゃないのか。
永遠にだらだら続く関係…そんなの幸せか?結婚なんて…意味ないんじゃないのか。お互い邪魔になって、子どもが大きくなったら離婚しようかなんて話して…。



直人には、大人がどうなのかはよくわからない。大人に傷つけられたにも関わらず、大人を欲している節がある今の自分には、理解など到底できないのだろう。


…華澄さんは。辛くないのかな。



いや、辛いのはわかっている。逆に、大人は何を楽しみにしているのだろう。お金をため、欲しいものを手に入れ、食べたいものを食べて、夢をかなえようと努力して。夢?大人が見ている夢って、なんなんだろう。


街を行きかう車や、未だ不夜城の様相を呈する伊集院財閥のマークが入ったビルを見て、思う。みんな辛い思いをしながら、何を守っているんだろうと。



今はこんなに悲しくて   涙もかれ果てて 




悲しい歌がどこからか聞こえてくる。悲しいなぁ、死にたいなぁ、そんなことをみんな考えるけど、結局死ねない。痛い思いをすることや、死ぬことが怖いから、いっそ殺してくれとか思いながら、要りもしない明日に備えて今日も寝る。そんな毎日がこれから、待っているのだろうか。



もう二度と笑顔には   なれそうもないけど




ふと足を止める。
歌っていたのは、街頭スピーカー。何気なく聞いてみたら、聞いたことのある曲だったのだ。



そんな時代もあったねと  いつか話せる日が来るわ




思い浮かぶ、今までの平和な日常。
渇望した「明日」は手元にあったのに、何故自分はそれに甘んじられなかったのか。


…それでも俺は、きっと。
心から気兼ねなくみんなと居られる関係を望んでいたんだと思う。だから…。



だから今日はくよくよしないで  今日の風に吹かれましょう



……みんな辛いんだと思う。
期待するのが怖くて、でも本当は…うまく行ってほしいって、心のどこかで思ってて、でも裏切られて打ちのめされるのが怖くて、そんな希望も見ないフリをしている内、本当に見失って…。


…でも、目を背けたら、見えないから。
多分、それが…夢って奴だと、なんとなく思うな、今は……。


まわるまわるよ 時代はまわる 喜び悲しみ繰り返し




追いかける方法さえ、今は思い出せない。
でも、その夢を見失えば、自ら手放した高見 直人という自身の存在も、わからなくなる。そうなれば、大事にすることなんて、できやしない。


…俺らしいとか、俺だからこその言葉や行動とか、それが何なのか…もうわからない。だから、今更やり直したところで、俺の夢はかなわないのかもしれない。悪いこともした。手遅れになっても文句言えないことは、わかってる…。


でも…誰かの言葉を借りてでも、取り戻したいと思った。

それは紛れもなく…俺の気持ちだから。




今日は別れた恋人たちも  生まれ変わって めぐりあうよ




きびすを返し、家へと歩き出す。
漠然と広がる夜闇に溶けているような不安がたちこめる胸の中に、一滴、感謝を落として。


…怖いし、辛いけど。
そうやって言ってくれる大人がいることが、なんか…ありがとうって、言いたくなった。こういう気持ちの行先が無いから、どこでもいいから届いてほしくて、それでみんな、twitterとかインスタとか、やるんだろうな……。なんか、わかった気がする…。



悶々とした不安と気持ち悪さが渦巻く心中に、ほんの少し、安らぎが射しこむ。

誰かの希望になるということ、それは、こういうことなのかもしれない。それが出来るかは別として、途方もない道程の行き着く先が、わずかばかりでも垣間見えたことに安心できたし、その姿が案外悪くないんじゃないかと思えたことも、嬉しかった。



…まだ、明日何をすればいいのか…よくわからないところもある。

けど、こうやって俺の気持ちが少し楽にしてもらえたように、心が辛い人たちはみんな…欲しくても手に入らないものがあったり、願う未来はあるけど手に入りっこないって思って心を閉ざしているのかもしれない。




自分が傷つけた相手の顔をひとつひとつ思い出して、後悔と、ひとりよがりでも理解しようとする寄り添いの気持ちを、投げかけていく。



…俺には、練習して爆発的に上手くなる才能なんてない。
出来たとして、所詮はリズムや音程合わせて、目立たないように責められないように、綺麗にまとめることを心掛けるくらいだ…。そう思ってた。


そんな俺が全校集会でみんなに認めてもらえたのも…間違いなく、片桐さんが居たからだ。片桐さんに帰ってきてもらわなきゃ、俺は…後悔も罪の意識も消えないどころか、定演でベストも尽くせない。…片桐さんが居れば、今は想像もできないくらいポケットに音を詰め込んだ自分が、本番の日に舞台に立ってるかもしれないって…そう思わせてくれる、最高の仲間なんだから。




だが自分がそう思っても、片桐が心から戻りたいと思い、直人を許そうと思えなければ、復帰はかなわない。仮にかなったとしても、2人に不幸をもたらす可能性もある。


…片桐さんが望んでいること…なんだろう、それ…。

俺が居なくなること……いや、そうじゃない…片桐さんがオーディションで吹いてたあれは、俺と同じ…相手に足りないものや、気を付けてほしいと思うことを、演奏で示してたんだ。響野さんも言ってたっけ…俺が片桐さんの演奏からパターンを切り抜いて応用できれば、俺は今より独創性のあるソロが出来るじゃないか、って。


…俺はそんなこと、出来ないって言った。
やる前から決めつけて…いや、実際出来ねーよあんなの……。


…片桐さんの旋律を盗むのは、俺には難しい。
出来たとしてもワンポイント…フレーズの感じ方のセンスから歌いまわしのエネルギーのかけ方まで、俺にはまったく足りないものをあの人はいっぱい持ってるんだから…。



なら、どうすればいいのか。

帰りながら、歩きながら。
帰った後も、楽器屋のおっちゃんから貰った釣り具箱を見つめて、伊集院君2号をいじりながら、真剣に考えた。


…いや。出来ないなら出来ないでいい。
俺は俺のやり方でやるしかない。ただし…何から何まで考えて…。自分で決めなくちゃ…。



そう思い、釣り具箱の中のマウスピースを漁り始めた。自分の作りたい音のコンセプトを思い浮かべ、ハイバッフルかローバッフルか、ラージチェンバーかスモールチェンバーか。どの組み合わせがいいかを考えながら、試奏はさすがに出来ないので、幾らかの候補を挙げていく。


「♪  あーやーふーやー  みたい  ♪」


そうしていると、久々にケータイが鳴った。
驚きつつ、側に置いていたスマホを取って、発信者の名前を見てから通話に応じる。


「…もしもし」
[もしもし。

 僕だ。伊集院 レイだ]
「…わかってるけど。
 
 何?今、忙しいんだけど」
[フッ、ならば手短に言おう。


 明日、君に話がある。
 定期演奏会までのことについて、
 計画や方針などを話さねばならないのでね]
「……。わかった」


明日に何を言われるのかはわからない。
しかし定期演奏会までは本当に時間が無い。全校集会の時のような1日1日の重みが、これからのしかかっていくに違いない。慎重になって然る。


なんとなく直人は、親が車屋から貰ってきた卓上カレンダーを見て、赤ペンを取った。

31日に〇をつけ、今日の日付けにバッテン。


……あと3週間ちょい…。




多分、つづく


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