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zoom RSS きらめき高校吹奏楽部 〜もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら〜   K点を越えて

<<   作成日時 : 2019/02/19 01:03   >>

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課題曲ネタ。


こんばんは。ゲッコウガGXとグレイシアGXのデッキいいすね。そういやトーナメントの決勝で当たった相手の名前が、高校時代の友達のあだ名と同じだったんですけど、あれ本人なのか?w


少しずつ体調もよくなってきました。
ちょっと紅茶飲む際に舌を火傷したけど…w

前より精神的にも幾らか安定してて、少しはまた大人になれたのかなと思います。こんなことしてる奴が大人とか語んなって話っすけどねwでも自分が荒れたり落ち込んだりしなくて済んでるに越したことないですから、お世話になってる方々には、ほんと感謝です。


今ではDCL16を書いてみて、本当によかったと感じています。
これまでの話に矛盾が生じてしまった部分も否めませんが、ウチverの高見 直人もまた、割と、ときメモの二次創作の主人公の中では異端児になったんじゃないでしょうか。脱メアリー・スーも幾らかは出来たと思うし、文化部らしく(※個人差はありますがw)、行動でふっきることがなかなかできずに思い悩む感じも出せたし、また気に入り始めています。


何より、何年も楽しめる主人公君に会えて本当によかったです。気ぃ向いたらときめきアイドル追悼編もやろうかな(?)



以下本文
---------------------------------------------

まず事の発端は、顧問である麻生 華澄が定期演奏会が開けないことの責任を取る形で辞任するために、顧問の居ない無政府状態で高額の楽器を扱う場を生徒に貸し出せるわけもなく、吹奏楽部も華澄の退任と共になくなる、という事態。


しかし爆裂山の協力を経て、定期演奏会の開催の準備を生徒だけでやっていいと認められたことで、定期演奏会そのものがなくなることは避けられそうなところまで、話は展開していった。


そこに、顔を出さなくなっていた華澄が久々に部活へ戻ってくると、こんなことを言い出した。


「――定期演奏会が出来なくても、
 部活がなくなることはもうありません」


それならもう必死にやらなくても、何の問題もない。
そう思った部員も居たことだろう。


だがそれでは、麻生 華澄は4月にきらめき高校から姿を消し、代わりに敏腕の講師がやってきて、きちっとした吹奏楽部を運営していくことになる。


「それもそれで…僕らにとって勉強にはなるだろう。
 しかし、だ」
「……」
「…君は、果たしてそれでいいと、本当に思うかい?」


学習室の席に着き、御曹司の講義を受ける庶民がそう問われると、途端に表情を曇らせた。


「…先生がそう決めたんなら。
 俺がとやかく言っていいことじゃない」
「…その言葉が本心とは、僕には思えないがね」
「そう思いたいだけなんじゃないの」


伊集院 レイが伊集院家に残るためには、最善の定期演奏会が理事長の目に止まらねばならない。つまり、麻生先生が自信を取り戻すような演奏会を作るために部員全員が頑張れば、伊集院 レイも得をするということになる。


それを遠回しに、人の苦しみをあげつらったような感じたから、直人は苦言を呈したのだ。


「…庶民、僕はそういうことを言うんじゃない」
「いや、そういうことっしょ」
「…確かに僕も、あの家に残りたいと思う…。
 もしそれがかなわなかった時、どのような境遇に
 立たされるのかを想像すればするほど、ね…。


 だがしかし、それはこの際度外視してもいい。
 言ってみれば庶民、僕と麻生先生の利だけが
 一致しているわけじゃないんだ、
 君の利も…藤崎さんたちの利も、一致していると
 言っていい」
「華澄先生がきら高に残ること…か?」
「…口にするのは申し訳ないが。

 君たちも一度、上の人間…大人たちの事情や
 さじ加減によって、自分たちの頑張りを
 無駄にされてしまった、被害者なのだから」


いつも力を持つ人は、それをどんな風な思いで振るっているのだろう。直人が紐緒ドライバーやハザードインサイザーを手にしなければならないと追いつめられた時のように、苦い思い、申し訳ない気持ち、そういったものを彼ら大人たちは感じているのだろうか。


それともワル男のように、自分を守るため、自分の好きなことをして好きなものを手に入れるために、何のためらいもなく他者を傷つけても、どうせこの先顔を合わせることもないし、と割り切ってしまっているのか。


“あの出来事”のせいで、直人のような人は、大人の多くに後者のイメージを重ね、疑い憎むようになってしまった。大門のあいつも、きっとそんな思いを抱えて戦っているに違いない。


「…そのリベンジをしろって言うのか」
「これ以上ない舞台とは思わないか。
 
 自分たちの創意工夫で舞台をよりよくし、
 自分たちが憎んだ大人の心さえ変えられたなら――」
「…やめろ。


 軽々しく“あの出来事”を口にするな。
 自分も今は被害者だからって人の痛みが
 分かった気になるな」


唇を噛みしめて言葉の続きを飲み込んだ伊集院の目線の先、机に拳を押し付けて苦しげな顔をする同級生が、今度は悲しそうな顔をした。言い過ぎた、酷いことを言ったと後悔しているらしかった。


「…他人の痛みは誰にもわからない。
 同じ出来事を経験しても、
 俺には詩織や都子の苦しみはわからない。


 …お前の苦しみも」
「…すまない。
 少し庶民の暮らしを経験して、君たちに
 近しい感情を抱いていたが…そうだな。


 どんなに真似をしても、本心から
 わかりあうことなどない、か…」
「同じことをしても、同じ夢を見ても、
 結局感じてることや見てることは、
 全然違う…100パーわかり合える人なんていない。


 …でも、それでいいんだと思う。
 だから俺は、吹部が尊いと思うから」


異なる個性、経歴、境遇、人格…人の数だけそれぞれが感じている物語がある、みんなその物語のページをめくるのに精いっぱいで、でも、だからこそ大勢のページに同じ場面が映るその瞬間が、舞台で。


きらめき高校に来て、ようやく直人はその尊さに気がついた。
仲間なんて傷つけ合うだけの存在だった、中学時代。それと違い、きらめき高校の吹奏楽部には色んな人が集まってきて、その人たちと色んな話をした。


もしも八重が退学していたら、渡井が部活を諦めていたら、光が陸上に入っていたら、片桐が「彩」に引き抜かれていたら。これまでの舞台はありえなかった。舞台とは交差点のようなところで、その地点に持ち込まれる経験や時間や組み合わせがいつも異なるから、二度と同じ公演など無い、尊さと儚さを持ち合わせた芸術なのだといっていい。


だからこそ、完成されたプロの演奏ではなく、中高生の演奏を毎年観に行く吹奏楽マニアみたいな人たちもいるわけだし、自分の幼い子どもの拙い演奏を親がたまらなく嬉しがったりするのも、そんな効果が少なからずあるのだ。


「…俺には人の気持ちはわからない。
 わかりあえたと思ってても、
 相手の言葉が嘘だったら、気を遣って 
 同情してくれただけだったらって思うと、 
 わかりあえることなんて無い気さえする。
 

 俺とって他人は怖いし、でも寂しいし…。
 だから俺は言われたんだと思う。
 最低の人間だって」
「その物差しで言うなら、
 君と違って最低ではない人たちは、
 そんなよしなしごとことなど考えずとも
 友人や仲間を作り、世俗の中に溶け込んでいる…と」
「いや、まあ、でも。
 何も考えない人なんていない。
 

 隣の人が怖いし、どこまで信じていいのかわからなくて、
 踏み込まないようにすることで現状を維持して、
 傷つかないようにしてるだけ…曖昧なままで
 誤魔化してるだけなんだと思う。

 
 以前の俺がそれを望んだように」
 

しかしどこかで妥協して、甘んじなければ、人の世界の中では生きていけないのかもしれない。自分のことを理解してほしい、好きな人に自分を理解してもらいたい、そうでなくては不義理で、曖昧で、息苦しい…そう望むことは、罪なのかもしれない。


どんなに苦しくても、申し訳ない気持ちでいっぱいでも、みんなの中で順応できる演技で自分を飾り、仮面をつけて踊り続ける…それが人生というものなのかもしれない。


でも。
直人の中での希望は、必ずしもそうではないと、心細くも呟いていた。


「…けど、わかりあえないと思ってた他人の
 気持ちや人生とふと交差した時…
 今まで自分が感じた悲しみや苦しみのお陰で、
 誰かの感じてる苦痛を理解できることがある。

 
 いや…わかった気になってるだけなんだろうな、
 でも、それによってわかろうと歩み寄って、
 努力できるかもしれないって、きら高に来て…
 わかった気がする」
「……。

 なるほどね…。

 そうした君の努力が、きらめき高校の人たちに
 言わせるんだろう。

 高見 直人は頑張り屋だ、努力家だと」
「そうだったらいいけどね。
  
 …ともかく俺は、努力しなきゃいけない。
 華澄さんに先生を続けてほしいなら、
 華澄さんの気持ちが今どんな風なのか…」


目を合わせず下を向いて直人が言うことに、伊集院は、密かに別の「なるほど」も感じていた。


家を追い出されるという苦しい思いをすること、使えるお金の金額を制限されて庶民の感覚を知ること、庶民と同じように歩いて家まで帰る事…そんな経験がゼロでは、庶民の苦しみだけでなく、楽しみさえも理解できなくなってしまう。


…会長が僕を伊集院家から出したのも…そうした裏があると…?

この男が言うような、「努力」に必要な経験や感覚が、きらめき高校に通うだけでは足りないと…。



しかし同級生の物言いは病み上がりに立派だが、気にならない点が無いことも無い。


彼は自分が努力をしなければならないと述べるが、自分の本心に関しては「先生の決めたことだから」と何も語らなかった。


…君が誰かの心労に敏感なことは殊勝なことさ。
だが…君の苦痛は、誰が理解してくれると?…やはり大倉さんなのか…?


彼らの近所付き合いを思い出しながら、伊集院は少しそんな風なスネたことを考えた。「最低の人間」だと言ったその人こそ、都子であることも知らずに。
 

「…やはり。
 君は、先生に顧問を続けてほしいかい?」
「…わがままだけど、そりゃあ…。


 今まで先生は、俺たちがどんなに不利な状況でも、
 怒ったりしなかった。自分の首がかかってたかも 
 しれないのに、初心者の人たちが段階を踏めるように、
 嫌にならないように、温かい部活にしてくれた。

 
 厳しくないけど、でもちゃんとしなきゃいけないとこは
 ちゃんとする…そういうきら高の吹部の雰囲気は、
 実は先生がちゃんと管理してたんだって…今ならわかる」
「だが…そんな功労者は、何も報われることなく
 去る…か」
「先生がもう心の中で決着をつけてるなら、 
 報われてないってこともないのかもしれない。

 でも…そうそう簡単にケリ、つけられる話じゃないと
 思うけどなぁ…。

 …けど華澄さんだからなぁ…」


相対した時、華澄がその聡明な頭脳から見事な理論で説き伏せてきたら、直人の経験した過去や苦痛でも、和解には至らないかもしれない。


けれど、自分を救ってくれたあのお姉さんのことだから。
悲しい顔をして学校を去るということは、なんとかして防いであげたいと思う。それはでも、やはり先生が決めることだから、やっぱりわがままなのだと直人は思うのだけれど。


「…先生とは、またちゃんと話したい。
 でも、それ以前に。
 
 お前の言う、先生が自信を取り戻せる
 定期演奏会の計画って……。

 具体的に、どうなの?」
「もちろん、プランは幾重にも練っている。
 だがね、イバラの道だと言わざるを得んよ」
 

そう嘆くと、伊集院はくるりと振り向き、黒板にチョークをあてがって板書を始めた。


まずは曲目。
「きらめきマーチ」「宝島」「エアーズ」「Life is showtime」「雲を追いかけて」など、曲が列挙されていく中、直人が「ん?」と首をかしげた曲がひとつ。


「この、「ブライアンの休日」って、何」
「君が吹奏楽の楽曲を知らないというのも、
 珍しい話だね」
「そんなこと言われても、
 本当に初耳なんだよ。これ、何?
 映画か何かの曲?」
「いや。

 吹奏楽コンクールの課題曲さ。
 それも、来年度のね」


直人があからさまに表情を曇らせ、悲し気に目を伏せた。

この時期に課題曲の曲名さえ知らない自分が、とある誰かに対して顔向けできないと思ったのである。


「この曲をきたる
 新きらめき高校 吹奏楽部第一回定期演奏会で
 披露することは、大きな意義がある。


 吹奏楽コンクールというものは、君たちが身をもって
 実感したように、大人の掌の上で行われるものさ。
 その意義や実態は非常に曖昧で、一度疑ってしまえば
 もう二度と、手放しで素晴らしいものとは思えないだろう」
「…じゃあ、なんで課題曲なんか」
「吹奏楽コンクールそのものが、
 君のいう交差点だからさ」
「交差点?」
「人の数だけ物語があり、感じていることがある…。 
 しかしそれが吹奏楽コンクールという目標に向けて
 同じ方向を向き、指揮者の指導のもと、
 ひとつの作品を構成する要素となる。


 賞がどうこうという問題ではない、
 音楽だけに限らず学ぶべきことは非常に多く、
 素晴らしい場ということは確かだ」


そうはいっても、直人は首をかしげている自分を否定できない。

そんな素晴らしい教訓や学びも、大人たちの「銀賞」の一言で、無駄に思えてしまうのだから。



「先生がどのような吹奏楽部を思い描いて、
 段階を踏んだ指導をされていたのかは、
 君の言うように話してみなければわからない。


 だが、吹奏楽部なら多くの人が学ぶであろうことを
 得られるコンクールに出るつもりだということを
 定期演奏会で示せれば、出資してくださる諸企業や、
 観客の皆様、そして先生たちにも
 未来を感じさせることができる。


 そうすれば…」
「でも…。
 前きら高吹奏楽部と比べられるぞ、それ…」
「フッ、大いに構わんさ。
 あくまで定期演奏会とは発展途上、
 ゴール地点ではない。


 僕らには伸びしろがあり、
 やる気もある。その誠意を見せることが、
 あくまで目的さ」 
 

つまりそれは、先生にもリベンジの機会を与えるということ。

これから生徒一同頑張っていくから、先生もここで答えを出さず、今後よりよい賞が取れるよう導いてください、そういう姿勢を生徒からも見せるための、この「ブライアンの休日」なのだ。


「未来を感じさせること…」


復唱して、思う。
自分も一度は放棄した、未来の自分にバトンを繋いでいくということ。それは、苦しい作業だ。未来の自分を信じたくとも、成功するとは限らない。吹奏楽コンクールがまさにそれを教えてくれた。失敗するというリスクがある、そこに投資した時間や熱意が重ければ重いほど、喪うものは無形なのにとてつもなく大きく取返しがつかないと。


…俺も、今はそれに賭けてる。

片桐さんにもう一度部活に来てもらうために…。響野さんに、謝るために。

誰かにとっての、希望になるために。



「そのためにも僕らは、出来る範囲で
 演奏の出来を引き上げていかなくてはならない。

 催しに関してもそうだ。
 スタンドプレー、ダンス、歌、ショー…それぞれ、 
 学芸会のような適当なクオリティではいけない。


 そこで君には、演奏をよりよくするための協力を、
 お願いしたい」
「……」


しかし直人には、自分が今更前に出てしたり顔で練習を指揮する勇気など、到底無い。


けれど伊集院の言うような、態度や行動で示すことも、間違いなく必要になってくる。個別に謝るだけでなく、自分だけでない他人の面倒も見ながらの練習も、これからはしなくてはならない。


……戻ってくるって決めたのは俺なんだ。
俺が嫌だからやらないとか、そんなわがまま、許されるかよ……。



「…わかった」


ややあって答えると、伊集院も頷き返してくれた。

伊集院はそれからも練習の予定や、一週間でどこまでの練習や資金集めが必要か、などを黒板にまとめてくれた。それを直人は、昼休みが終わる前に、スマホで撮影しておいた。


「頼むぞ、庶民。
 僕には僕の目的がある。
 
 だからそのために定期演奏会には
 全力で取り組むつもりだ。

 
 君もせいぜい、君の戻ってきた理由を
 求めるがいいさ。
 それがきっと、本番の日に交差することを、
 祈っているよ」
「…ああ。

 ありがとう。
 俺なんかに、こんな時間使ってくれて…」
「…。いや。なかなか楽しかったよ。 

 さあ、戻ろうか。我らが1年A組に」


そう言って髪をひるがえし、学習室を出ていく伊集院。そういえば今の彼の笑い方は、教室に居る時なんかと少し違う感じがするなと、直人は思った。容姿端麗な人はやっぱり羨ましい、時々女性みたいに美しい横顔をしている時さえ、あるのだから。


…てか。黒板、消してけよ……。


でもやっぱり腹立つなとも時々思うから、伊集院 レイは伊集院 レイなのだが。

予鈴の中黒板の字を消して、学習室を遅ればせながら後にする。途中、直人はA組に寄る前に、別のクラスに寄った。片桐が居るかどうか、確認しようとしたのだ。


だが、片桐 彩子の席は空席のままだった。
自分が学校に来れたと思ったら、今度は片桐と入違いになった。なんだか、本当にコンビ解消みたいになった感じがして、胸が痛む。


「…何してるの」


ふと、後ろから話しかけられて驚いた。教室の後ろ側出入口付近、怒ったような不機嫌そうな目を眼鏡越しに見せている、語堂 つぐみが、眼鏡をくいっとかけ直して言う。


「…彩子は休み。

 体調不良だって」
「……。

 ごめん。俺のせいだ」
「…!あんたねぇ…今更部活に戻ってきて、
 何のつもり…?


 あんたが期待するなって言ったんでしょ、
 あんたがもう二度とやりたくないって言ったんじゃない!」


すごい剣幕に休み時間も終わり際の教室が騒然とする。またあいつか、というような声も聞こえている。今の直人はもう、すっかり悪い噂に毒されているらしかった。


「…ごめん」
「ごめんごめんって…平身低頭、
 謝るだけなら誰でもできるわよ!」
「……。

 責任は取る。でもそれは、辞めるってことじゃない。


 ちゃんとこれからどうしていくか。
 その姿勢を動きでも、演奏でも見せてくから。


 だから。
 …本当にごめん。本当に……。
 今は、それしか俺には言えない…」


そう言ってきびすを返して去っていく直人に、「ちょっと…!」と興奮気味に何か言いかけた語堂だったが、もうチャイムという審判に割って入られたから、それぞれのコーナーに帰っていく他なかった。



…時間が無い。謝るべき人も、やることも多すぎる。
放課後も練習前に、あの人に会っておこう……。




教室に入る前、そう思ったことを彼はしっかり実行した。
掃除を終えて、理科室に赴いて。


「なっ、貴様!高見 直人!」
「何の用だーっ!
 閣下をやらせはせん、やらせはせ――」
「黙りなさい!
 …何の用?」
「……。

 これのことで、相談に来た」


妙な雰囲気の理科室の中、制服の上から羽織った白衣のポケットに手を突っ込む紐緒に、直人が“例の武器”を手にしてかざす。


「…ちょうどいいわ。
 私もそのことで話をしようと思っていたのよ。


 …あなたに今後、紐緒インサイザーは使わせない。
 それを渡しなさい」
「…これ。そういう名前なんだ。


 …でも。使えるようにしてもらわないと困る」
「何を言ってるの!
 それを使ってどんなことになったか、
 あなたが身をもって…!


 ……いえ、失礼。
 覚えていないんだったわね、正確には」


裏の理科準備室から覗かせる河合のカメラに、試作機二号ではなく本物の「直人くん」の苦し気な表情が写る。直人は「それでも」と譲らず、折りたたまれた黒い鎌を示すと、言う。


「…覚えてはない。
 でも、取り返しのつかないことを
 したのはわかってる…。


 …それでも。これがなきゃ紐緒アーマーは
 突破できない。だから、使えるようにしてほしい」
「死ぬほど後悔したんでしょう!
 自分を壊すほどに…。


 …もうこの件からは手を引きなさい、
 あなたのような人がこれ以上私の兵器を使うのは
 見ていてしゃ――」
「――でも!…俺しか使えないんだから。

 やるよ。
 そのために戻ってきたんだから」


カメラには、後ろ姿のかっかの表情は写らない。
でも、うなだれ、絶句したところを見ると、きっと自責の念にかられ、後悔しているに違いないと、河合は思った。…本当はかっか、そういう優しい人だから。さっきも憎まれ口を叩こうとしたけど。直人くんも…そういうところ、わかってるんだよね。


「…なんか、出来ないの。
 意識失わないようにするのは無理でも、
 失ってからそっちで武器が手から離れるように
 できるとか、そういうの」
「…無理ね。
 紐緒インサイザーは、言ってしまえば
 あなたの意識の内側…深層心理に働きかける。


 ということは、それを司る脳に影響を
 与えているということでもあるわ。


 無理な刺激を外から与えれば、
 あなたの脳にダメージが行く可能性がある」
「それでも誰かが傷つくよりマシだろ」
「…大問題よ!
 使用者を殺す発明なんて、科学者失格だわ」
「……。

 なら、最悪覚悟してよ。

 俺がめちゃくちゃ暴れまわって何人も人殺すより
 ずっといい。


 脳にダメージがいってもなんでもいい。
 途中で止められるようにして」
「そんなことできるわけ――」
「…わかった!わたしやる!」


はい!と手を上げ、カメラを片手に理科室に入ってくる河合に、紐緒が名前を呼びながら困惑と怒気の入り混じった目を向ける。


「てへへ、ハザードインサイザーは、わたしがちゃんと
 かいりょうしてあげる!♡

 
 でも、脳に刺激がいくなんてそういう方法じゃなくて、
 別の方法がないか…今探してるから、もう少し待って」
「…えっ、そんなこと…マジでできるの?」
「わかんないけど、直人君のファントムに対して 
 何等かのアプローチがかけられれば、
 何かその反応を利用して意識の支配も――」
「人間の理解の及ばない相手にそんなことが
 通用するはずがないわ。

 …それに。
 あれはハザードインサイザーじゃない、
 紐緒インサイザーよ」
「ど、どっちでもいいけど。


 …最悪でも、無理くり止められるように。
 何とか改良して。おねがい」


てへへと苦笑して「りょーかい♡」と返事する河合と、ポケットから手を出さずに視線を逸らし咳払いをする紐緒。彼女らを前に、直人はなぜか、奇妙な嬉しさがこみあげるのを覚えて、微笑をかみ殺した。


前はただ吹奏楽部をつけ狙う困った人たちだった彼女らも、今では同じ目的に向かう仲間となった感じがある。定期演奏会はやはり、決して小さくない交差点なのかもしれないと思うと、直人は改めて願わずにいられなかった。


…申し訳ないと思ってくれてる紐緒さんのためにも。

なんとか、何事もなく…ワル男や神条さんの問題も…解決したい。頼む…。





多分、つづく


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