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zoom RSS きらめき高校吹奏楽部 〜もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら〜   高架下の暴走 

<<   作成日時 : 2019/04/01 00:21   >>

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俺の青春もここに置いていく


こんばんは。ネオディケイドライバー買いました。
俺氏が高校最後の年とかそのくらいの時に、テレビでディケイドをやってたんですよ、歳がバレますけどw


仮面ライダーの中でもディケイドは賛否両論で、今でこそジオウに登場して我々ファンにも認められていますが、当時は批判が相次ぎ、よくも悪くも注目を集めていました。でも、ぼくはディケイドの主人公がすごく好きです。


自分は「世界の破壊者」だと言われていて、自分が人と関わることが良くないことだと知っているから、周りの人を傷つけないよう、巻き込まないように嫌な奴を演じていたり、ひとりでふらっと行動したりする点もいいですし、それなのに斜に構えつつも他人のことをしっかり見ていて、人の隠れた良いところや秘めた本心もちゃんと見ているところが、すごくなんというか、群れないスタイルなのに仲間思い、というスタンスを作り出していて、かっこ良いです。


その場を後にする頃には旅先で会ったライダーたちの良さをしっかり引き出した写真を撮って、「まあまあのが撮れたな」とか言ってるのも、表面上は偉そうにしていて人を見下すようなことを言ったりする癖に、本当は他人と向き合いたいという思いを捨てきれていない証拠だと思うんです。


でも自分の破壊者としての宿命を鑑みると、結局戦うことでしか他人と向き合えない、そういう、運命を受け入れるのか否定するのか、他人に迷惑をかけてでも誰かと繋がりたいか、いやそれとも自分だけが孤独になれば解決するんだと諦めるのか…葛藤を続けているキャラであるというのが、ディケイドが旅人たる所以、っていう感じがしてええなと思います。


無理くりこじつけますがw、ウチの直人君もまあ同じことが言える立場かもしれません。この小説は非公式だし勝手にファンが書いてるだけの落書きでしかないですが、ディケイドみたくシリーズのキャラ全員集合、みたいな作品の主人公でもありますし、もしも放映中のジオウ内で、ディケイドの葛藤の答えが出るなら、少し気にしてしまうかもしれません。まあ士のことだし、答えはもう出てるんだと思いますけどw


以下本文
----------------------------------------
部活終わりに持ちかけられた誘い。
それを直人は申し訳なさそうな顔で断った。


「…ごめん。寄るところがあるから」
「そう…。わかったわ。
 シーユー、また明日」
「ほんと、ごめん。それじゃ…」


手を挙げて去っていく片桐の背中を見ながら、思った。


…まだ俺には、普通に話せる自信がない…。



相手の気持ちを考えながら言葉を選ぶだけで、彼の思う「普通」にはなれる。考えすぎなのは確かだ。だが、彼が思う普通は、傍から見た時に異常かそうでないかを見分ける指針とは、少し違う。


まだ、申し訳なくてたまらないのだ。
そんなことを言っても4月には、この部活から自分は消える。片桐だけでなく、仲間との時間を味わいたいと思うのなら、そんなことを言っている場合ではない。それは心のどこかではわかっている。でも、なかなか割り切れない。



…この気持ちは、定演までに抑えられるのかな…。



それは自分の心がけ次第か、それとも最初から不可能なのか。
知っているのは未来の自分だけなのだろう。


だから、バトンを繋ぐことにした。答えを知る、未来の自分に。


「……この橋か」


きらめき高校を出て、遠方から登校している生徒に混ざってバスに乗ると、家とは真逆の方向を目指す。それから新興住宅地の近くで降り、ひびきの市ときらめき市を繋ぐ橋の内、伊集院邸前大橋の南に位置する高架まで来たのが、19時半のこと。


…遅くなりそうだな、今日…。
でも、もう明日、明日って言ってられる余裕はなくなってきてるからな…。



直人は土手の階段を降りながら、昨日の帰りに好雄から言われたことを思い出して、緊張した。



――耳に入れときたい話ってぇのがな。
お前も耳がうずうずするほど知りたがってる話でな。


――…何それ。…もしかして。


――そうだ、神条さんのことだ。
あれ?アテが違ったか?知りたいだろ?


――あ、ああ。もちろん。



電車が通りすぎると、線路と橋が悲鳴を上げて加重に耐えるから、大きな音に思わず顔がこわばる。階段を降りて、辺りを見回し、十分に警戒しつつ橋の下を目指す。



――お前もそこまでは知ってたか。
じゃあその神条一派がどこに潜んでるか。


――…いや。そこまでは、まだわからない。


――だろうな。だがこの好雄様の耳は、しっかりそういう
情報もゲットしてるわけよ。野郎どもの情報なんざ、本当は願い下げなんだが――。



……さすが。きらめき高校一の情報屋。



隣席の友人を心中で褒めながら、橋の下の風景を見て思う。
橋の下では、こんなところで何をしているのか、不良たちがケータイを弄ったり、何やら話をしている。


表情をひきしめると、おもむろに直人は足を進めていく。
きらめき市の雑踏とも、ひびきの市の夜景とも遠いこの暗い場所は、まるで演奏前の舞台裏みたいだった。


「おい、誰か来たぞ」
「…ん?
 
 な、なあ。おい、あいつ!」


どこぞの制服を着た不良の内のひとりが指さしてきて、直人の視線が向く。まだ舞台裏だというのに、役目がやってきた演者は、言ってのけた。


「あの。ちょっと聞いていいすか」
「ノーサンキューだ。
 
 お前、きらめき高校の魔法使いだな?」
「まあ、そうだけど。

 …人に名前聞く時はまず自分からって。
 先生に教わんなかった?」
「…お前、自分の立場がわかってないようだな。

 
 おい、やるぞ。お前ら。
 指輪持って帰って、芹姉ぇに土産作るぞ」


少しマッシュな髪型の少年が命じると、他の不良たちも大きな声で返事をし、きらめき高校の魔法使いへと走りかかっていく。


魔法使いはため息をつき、こうなることをわかっていたかのように、指輪をポケットから出して、右手中指につけると、ベルトにかざした。



‐‐【《コネクト》<<<プリーズ】‐‐




空間接続。
楽器ケースを魔法陣の向こうへ預け、代わりに取り出したのは、いつもの魔法銃剣。


「さぁ。舞台裏だけど。幕開けだ」


ラリアットをかましてきた不良を剣のフェイントでかわし、2人目、3人目を同時に相手取る。なんとなくの剣を回転させたフェイントと、それを警戒してきた上半身のガードを読んだ、下半身へのローキック。魔法使いアクションは、今日も健在ではあった。


だが、いつもと様子が違う。1人、2人まではなんとか地面に転がしたが、残った5人、6人の動きが妙に掴み辛いのだ。いうなれば対策されているかのように。


ローキックも避けられるし、やたらとタイミングよくカウンターを入れようとしてくる。距離を取ると思うツボだと知っているのか、ゼロ距離まで肉迫して溝檻に拳を入れてくる相手すら居た。なんとか剣で防いでも、他の仲間たちの攻撃は交わせず、痛いのを何発ももらって、ついには幾らか後退させられてしまう。


「…つ、強ぇ」
「そりゃそうだろ。
 姉ぇさんに言われてお前の動きは勉強させてもらった。


 もうなんとか避けなんざ通用しねーんだよ。
 観念して指輪渡せコラ」


マッシュのリーダー格に言われて、鉄の味がする咳払いをひとつ。しゃがみこんだ直人は、残る5人を前にして、覚悟した。…指輪は渡せない。でも今までの戦い方は通用しない。なら……。


「…ほぉ、観念したか?」


指輪を外す直人に向けてそんな言葉が向けられる。だが、指輪を外したのは、そこに新たな指輪を填めるためだった。例の不吉な紋様が描かれた指輪をつけ、続いて左ポケットから取り出した、最終兵器。



…そもそも《コネクト》の時点でビビらなかったのがもう、俺の戦い方をよく知ってる証拠だ、数も多い…普通に戦って勝てる保証はない…。


……。
…もしここで暴走したら…。でも、こいつを使う以外に勝機はない…。


何とか、こう…いずれワル男に対しても使う時が来る、そのためにも免疫というか…なんとか俺が自発的に武器を手放せるようにしなきゃいけないっていうのも…でも、これを使ってこいつらを殺しでもしたら……。


……。



だが、迷いに反して状況は切迫していた。
迫ってくる不良たちを前にして、装置にかけていた親指は、ひとりでに動いた。



--【<<<《ハザードタイム》>>>セットアップ】--




ハザードインサイザーの親指に隠されているボタン。

これを押すと、アナウンスと共に威勢の良いサウンドが鳴り上げた。いつも紐緒さんのこういう音声の趣味はぶっ飛んでいるなと思わされる。しかし、ボタンを押した時に鳴った、廃工場のランプが突然エンジンと共に点灯したかのような不吉な機械音が、直人の心に不安の影をたちこめさせる。



…いけるのか、本当に。

……いや、もう今は行くしかない…!



--【《ファントム》<<<プリーズ】--




直人の手から離れたハザードインサイザーは、まるで展開パズルのようにその姿を変え、真の形態を露にするべく空中を舞う。肉迫してきた不良のひとりは、電流を纏い変形しつつ空中を舞うハザードインサイザーに殴打をかまされ、顔や肩などを打って「痛ってぇ」と後退する。


やがて変形を終えて黒剣鎌と化した紐緒印の暴走兵器は、見るだけでも相手に恐怖心を植え付けるのに十分な、禍々しい見た目となって、使用者である魔法使いの目の前に滞空する。「手に取れ」と言わんばかりに。



…途中で手を離す、途中で手を離す、1〜2分、1〜2分……。



きっとこの武器を手にしたらもう冷静な思考は消える。だから頭の中、考えることを何度も何度も復唱し、それしか頭にない状態で、死地に足を突っ込むべく、手を前に出す。




瞬間、心音がやけに大きく、頭蓋に響くほどはっきり聞こえた。



視界が丸く狭まり、四隅が暗く塗りつぶされる。聴覚は水底に沈んだかのように殆ど聞こえず、遠く遠く不良の声が何やら喚いているくらいしかわからない。手が、足が、呼吸器が、自分のものでないみたいにすーっと感覚を失っていく。いや、それを制御する脳が止まりかけているのか。


「あっ………うあ゛っ」


違和感と、侵食の恐怖に声が漏れる。自分で振った覚えも無いのに右手が動いて、続いてゴッ、と衝突音がした。不良の内の誰かの頭を、この武器の刀身がとらえたらしい。勿論、切れ味など無い。だが相当な痛みだったのだろうか、何やら喚いているのがわずかにわかる。


鎖骨がしびれているような感覚がある。
首の内側がかゆい。何かが中から脳までせり上がってきているのか。

でも手の感覚がない、もう1分経ったとか2分経ったとか、そんな感覚が思い出せないほど、辛い、怖い、苦しい、気持ち悪い。息が詰まって、溺れそうだ。


「がああっ」


不良たちから見て、声を漏らしながら迫ってくる魔法使いは、先ほどまでとまったく動きが違って見えた。非常に機敏に、力づくでガードの上からでも武器をたたきつけてくる。しかもそれは、防いでも防ぎきれない、異様な痛みがあった。


「い、痛ぇ!え、えっ!?」
「どうした!?」
「なんか…む、胸の中が痛ぇ…
 えっ、えっ!?は!?


 なんだ…なんだよこれ!?」


不可解な痛み。ガードした腕に受けた痛みだけでなく、胸の中に何か黒い薔薇でも生い茂ったかのようなチクチクとした感覚。それに、不良はもう気味が悪くなって、戦意を喪失していた。


「く、くそ!お前らいくぞ!
 3人がかりで蹴れ!」
「お、おう!」


見えているのか、見えていないのか。
迫ってきた不良たちを前にして、苦悶の表情を浮かべた直人の左手が動く。ハンドオーサーに触れる左手。ハザードインサイザーが発するアナウンス。



--【《オーバーフロー》<<<<<<<<<<<

 <<<《ハザードアタック》>>>】--





刀身ではなく、柄を握る手の前方、「d」の形をした武器の弧に当たる部分を押し出す魔法使い。


弧に纏わりつく禍々しいギザギザの刃が、バチバチと電流の走る嫌な音を立てて、不良たちの突き出した脚と衝突する。


その力の差はもはや、大人と子ども。いや、人間同士のつばぜり合いとは思えないほどに、軽く吹き飛ばされた。それも、数で勝るはずの不良たちが。


痛みと驚きと衝撃で、声を発し地面を転がる不良たち。彼らを前にして、魔法使いの動きが急速に鈍くなっていく。



……くっ、だ、だめ、だ……。


もう、いし……きが……。





……。








…。









沈黙。



もう手の感覚どころか、立っている足も、肺も心臓も、自分のものではないような感覚、否、感覚すらもない。頭を垂れ、糸を切られた操り人形が、腕をぶらりと下げる。


その時、はっとした。腕に痛みが走った。
確かに痛みを感じたというその意識。この高架下に、高見 直人という人格が息をした。


何が起こったのか。忘れていた呼吸の反動か、息を大きく吸って目を見開いて驚く直人に、声がかかる。


「高見!おい、しっかりしろ!」
「…え、あ、りゅ、龍光寺さん…?」


横に立って不味い表情を浮かべる同級生に、直人は一瞬、状況がよくわからなかった。なぜ、制服の上に黒の上着を羽織る龍光寺 カイがここに居るのか、いったいなにがどうなっているのか。


……ハザードインサイザーを使った、それから、それからどうなった…?


……!ま、まさか…!


あらぬ推論に恐怖がたちまち両手を広げ、彼の心を支配した。周りをキョロキョロと伺い、自分が倒したのであろう不良たちが、畏怖の目を浮かべながら自分を見ているのを視認しつつ、その「まさか」の事態が起きていないか、確認する。


だがそれは杞憂に終わった。
誰も殺してなどいない。どういうわけか、暴走しないで済んだのか。いや、ラッキーなどではなさそうだ。


「…安心しな。
 例のオーバーフローとやらには達してないよ」
「…龍光寺さんが、助けてくれたの?
 い、いや。だよな…。

 
 ……ごめん」
「いーや。
 謝るにせよ、感謝するにせよ。ダチにしてやんな」
「…友達?」


未だ息の整わない直人でも、そのアテはすぐ浮かんだ。
感謝と申し訳なさが同時に浮かんで、次に、自分はいつも迷惑をかけてばかりだと、自責の念が押し寄せてきた。



「お前もダチを助けたくて動いてるのはわかってる。

 …けど。
 あんまり堂々ときら高の制服着て、
 他校の連中とやり合うのはどうかと思うな。
 

 問題になったら定演どころじゃなくなるぜ」
「…。うん。言う通りだわ…ほんと、ごめん」
「いいよ。男がそんな簡単に謝るな。

 お前のダチを救おうっていう気合は、
 今時の男子にしては見どころあるんだから。 
 もっと堂々としてろ」


…な、なんか矛盾してるような…。


まだ思考が重い。喉に何か詰まっているような息苦しさもあって、せき込みながら指輪を外した直人は、指輪と連動していたハザードインサイザーが元の折りたたまれた形になったのを拾い上げる。その間、龍光寺は直人の傍を離れ、あのリーダー格の少年が倒れ込んでいるところへ、手を貸していた。


「立てるか?冨久山」
「た、大したことねぇっすよ。

 カイ姉ぇ、何してんすかこんなとこで…」
「ちょいと寄り道ついでにな。
 ウチの高校の魔法使いが無茶しねぇか、
 見に来たんだよ」
「あ、甘く見られたもんすね…」
「ばか、実際やられてんだろ」 
 

手を貸してもらって立ち上がった、冨久山という名らしいマッシュ髪のリーダー格。苦痛故か、龍光寺の心配した通りに負けてしまったせいか、ばつの悪い顔をしつつも、途中で手を振り払って立ってみせた彼は、あの恐ろしい武器を手にしてまずい表情を象る魔法使いを見やる。


「おい。来いよ」
「え、あっ、うん…」


龍光寺にも促され、彼らに近寄る直人。他の吹き飛ばされた不良たちも、それぞれ起き上がって顛末を見守る。龍光寺は何か、長髪を揺らして辺りを伺い、何かを確認するような仕草をしてから、軽く舌打ちをすると、言う。


「このまま話を繋いでやりてぇが、
 あたしもそろそろずらかる時間でね。

 
 悪いけど、お前らだけで話、進められるか?」
「ま、待ってくださいよ。
 話ってなんすか」
「…。あの。

 俺、神条さんのことで。
 相談っつか、話があって。
 
 それで、ここに来たんだよね」
「…!お前が…芹姉ぇの…?」
「ああ。
 こんな、ひどいことしといて難だけど…。


 頼む。話を聞いてほしい。
 俺も…神条さんを助けたい思いで、動いてるから」

 
苦い表情で、けれど真剣な目を向ける直人から、目を背ける冨久山。龍光寺が「聞いてやってくれよ」と念を押すと、ようやく不良の彼は、しぶしぶ頷いた。


「…まあ。カイ姉ぇが言うなら」
「よし。いい子だ」
「こ、子ども扱いしないでくださいよ!
 いっこ(一歳)しか変わんないんすから!」
「はは。その元気がありゃケガは大丈夫そうだな。


 …っつーことだ。高見。 
 悪ぃけどあたしは帰らなきゃいけないから、
 万が一があっても。それは使うな」
「……。うん。迷惑かけて、ごめ――」
「だーから。
 謝んなって。
 その内ジュースでもおごってくれりゃいいよ」


冗談を挟みつつも、そそくさと何かに急かされるようにその場を後にしていく龍光寺。当然、先ほどまで対峙し合って高架下に死線を書きなぐっていた血気盛んな不良たちの目つきは再びギラつき始め、空気が凝固し出す。だが、冨久山は歩み寄ると、直人に対して拳ではなく言葉を投げかけた。


「…お前。
 どういう関係なんだよ」
「えっ。

 関係って…」
「芹姉ぇとか、カイ姉ぇと」
「どうって…ふつーに、同級ってだけ…」
「……。ふーん。

 んで? 
 ひとりで乗り込んできてわざわざ何言いにきたわけ」
 

妙な話ならもう一度ボコる、なんて言い出しそうなほどの険悪な雰囲気が直人の周りから醸し出されている。それを自覚しながら、吹奏楽部の魔法使いは言った。


「…神条さんが今、何を考えてるのか……。

 それはわからない、でも、できれば俺は…。
 力になりたいと思ってる」
「なら指輪渡せ。それで済む話なんだから」
「…それはできない。


 ワル男に渡すように言われてるんだろ?
 もしリングがあいつの手に渡ったら…。
 きらめき市は、いや、下手したらもっとデカい規模で
 やばいことが起きる。


 …そうなったら、神条さんはきっと今以上に自分を
 責めることになる」


神条が今、何を考えてるのかはわからない。

そう直人は言った。だが冨久山は驚かされた。今の彼女の状態をまるで見てきたかのように、目の前の文化部の男子は言い当てたのだから。


…今以上に自分を責める、だと?
んで今の芹姉ぇの状態を知ってるんだ…?電話も出てねぇって言ってたのに…。


「お前、なんだよ…。 
 その、お前の使う指輪の魔法って、
 人の心までわかるのか…?」
「いいや…。
 
 使う俺もそうだけど、
 この指輪を作った人も今苦しんでるように、
 もしかしたら、この力は誰かを傷つけるばっかりの
 最低なものなのかもしれない。


 …さっきみたいに……」
「……。確かにありゃぁ、おもちゃってレベルじゃねぇな…」
「…でも、だからこそ。

 今、あいつに…ワル男に対抗できるのは、
 この力しかない」


掌の上で転がすと、大きさの割に重々しい音を立てる内蔵鎌。それを示して直人は言う。


「…このハザードインサイザーは
 ワケあって俺にしか使えない。

 こいつなら、ふつうに攻撃しても
 ノーダメージのワル男にも、
 有効打をたたき込める」
「や、やっぱあいつ、ワル男には
 なんか秘密があんのか!?

 
 …芹姉ぇも、他校の番張ってた連中も、
 みんなあいつに傷一つつけられずに負けた…。


 …けど噂に聞いた。
 こないだの河川敷の戦いで、
 きら高の魔法使いとやって、途中でワル男が
 逃げたって…あれ、マジだったのか…」
「ああ。
 …でも見ての通り、この武器は普通じゃない。
 意識を失い暴走する危険性もあって…。

 
 …だから、ワル男とケリをつけるセッティングも
 しなきゃいけない、神条さんの本心も聞きたい、
 ハザードインサイザーのフォローをしてくれる人間も
 必要だ…。


 …それで、何とか。
 利害が一致するかもしれない、神条さんの仲間を
 探してたんだ」


どうする?リーダー格の少年、冨久山が仲間たちの顔色を伺い、また仲間たちもどうしたものかと視線を返す。


「…なんか胡散臭ぇな。
 どうしてお前がそのただの同級でしかない
 芹姉ぇのために、暴走する武器使ってまで
 身体を張るんだよ。

 
 総番にでもなりてぇのか、それともその
 ハザードなんとかだの魔法の指輪だので
 ガキいじめて楽しみてぇだけか?あぁ?

  
 俺らの街をぐちゃぐちゃにすんじゃねぇ…! 
 何も知らねぇ恵まれて育った昼の街の人間がよぉ…!」
「……。

 ごめん。本当に、悪いと思ってる。
 俺も、指輪を作った人も、心から…後悔して、反省してる。


 だから、俺にできる罪滅ぼしがあるなら…。
 つけられるケジメがあるなら、つけなきゃいけないと思った。


 …この騒動が止められるなら、魔法番長だのなんだの、 
 そんな称号は捨てるし、不必要に首を突っ込むことももうしない」
「な、なんだと?
 ……」
 

ふと、冨久山は思い出した。
以前、きらめき高校の魔法使いについて、神条が話していたことを。


――あいつは正真正銘、昼の街の人間さ。

――いつもいつも部活部活って言って、あたしたちなんかじゃ想像もできねぇようなプレッシャー背負って、何百人いる客の前に出てラッパ吹くんだよ。そういう姿に、希望を貰う奴も居てさ。そういう意味じゃあいつは、本当に魔法使いみたいなもんなのかもな。



…そんな奴が、ヤンキーいじめて楽しむなんて…そんなリスクの高いことするか?


そして何より、自分の前に立っているこの「昼の街の人間」は、心底苦い顔をしている。ケンカで人をねじ伏せた後、勝者が見せる顔とは思えないそれだ。


「……。

 お前の言いたいことはわかった。
 確かに指輪をワル男に渡したら、
 余計に街がぐちゃぐちゃになるだろうな…。

 
 そりゃ、できればあいつシメておとなしくさせた方が
 いいに決まってる」
「なら…」
「だが。芹姉ぇがどう思ってんのか。
 一旦確認したい。話はそれからだ。

 
 どっちにしたって、すぐすぐダブルデートみてーに
 セッティングできると思うなよ。

 ワル男は文字通り無敵だ。
 あいつの軍門にくだった奴も数多い。


 ワル男を誘い出すにしても、そういう奴らを
 どうにかしねぇと、罠張り巡らされたり、
 面倒なことになる」


周りからは「いいんすか!?」「ふくちゃん、いきなり信用すんなってこんな奴!」と声がかかる。四面楚歌の中、直人は顔を強張らせ、内心で身構えた。いつまた殴りかかられるともわからない、だがその懸念が現実のものとならずに済んでいるのは、直人が握っている暴走兵器が、彼らに威圧感を与えているからに他ならないだろう。


「…俺には時間がない。
 
 答えは近い内に頼む」
「…。あのまま芹姉ぇが学校に行かなかったら、
 落第か、退学か…どちらかは避けられないだろうからな。
 こっちもそりゃわかってる。


 芹姉ぇが本心で何を望んでるのか…。 
 それを聞かなきゃ俺も無理なことは
 させられねぇ」
「…わかった」
「言っとくがお前を信用したわけじゃねぇ。
 昼の街の人間と、俺たちは相容れない。
 どうせ見下してるんだろ、俺たちなんて」
「そんなこと…あるわけない。
 俺だって、グレて…中途半端でも 
 夜にフラフラしてた過去があるんだから」
「……。お前が?
 はっ、どうだか。

 無理に悪ぶる必要ねーよ、
 どの道仲間だなんて思えるかっつの」 
 

吐き捨てるように言った冨久山に、直人はもう深く追及をせず、「じゃあ、頼むね」と背を向けた。確かに、直人と彼らは部活みたいに仲間になることなどできないだろう。そう直人は理解していた。遅くまで家に帰らず、街でウロウロする子どもたち。彼らには様々な事情がある。かつて中途半端に家出をしたり、反抗していた直人もそうだった。


…だからこそ。
みんな現実の辛い部分から逃れるために、ここに居るんだ。まるでここに居る自分こそが本当の自分だと思うようになって、ますます…この人たちの言う「昼の街」…つまり現実の辛い部分は、本当の自分とは遠いものなのだと感じられるようになる。


……でも。逃げた先は、もっと辛いんだってことを、俺は知ってる。


だから…こいつらのことをわかったつもりになるなんて、そんな失礼なことはできない。ひとりひとりに、色んな苦しみがあるんだろうから…。


「おい」

去ろうとした背中に、声が浴びせられる。振り向いた直人に、冨久山はこんなことを言い出した。


「…ひとつ言っとくけどな。

 お前のことを嗅ぎまわってる奴がいる。
 いや、正確にはお前だけじゃない、
 お前の周りのことをな」
「…なに、それ。
 
 俺の何を探ってるっていうの、誰が。
 ワル男の仲間…?」
「かもな。
 ともかく、ワル男に攻撃を通せるのが
 唯一お前だってことは、ワル男にとっちゃあ
 お前さえ潰せば盤石だってことになるだろ。 


 向こうもお前を狙ってるんだよ。
 それもお前のようにバカ正直に直接対決を
 望んでるとは限らない。


 たとえば…指輪を渡さざるを得ない状況を
 作ってくる可能性もある」


脳裏をよぎる、吹奏楽部のみんな。
彼女らを人質にされたりしたら、直人もさすがに抵抗はできない。


「きら高の中にもワル男の一派の奴が
 居ないとも限らない。

 スパイみたいな奴がいないか。
 周りも注意するんだな」
「…。わかった
 ありがとう」
「勘違いすんな。
 お前以外ワル男に勝てないんだ。
 しゃーなしに言ってんだよ」
「……。

 あの。誰も、骨とか折れたりしてない…よな?」
「は?」


文化部の男子にそんなことを心配されて、一瞬あっけに取られる冨久山。しかしややあってから鼻で笑うと、冨久山は答えた。


「ばーか。そういうのはノーサンキューだ。
 てめぇなんざに折られるほど神条一派は弱くねぇよ」
「…。そっか。
 良かった。ほんと…ごめん。

 
 それじゃあ。おやすみ」


未だばつの悪さを残したまま、吹奏楽部の魔法使いは、街の灯の方向へと歩き出していく。彼が十分離れてから、仲間の一人が冨久山に耳打ちした。


「あんな強ぇのに。
 変な奴だな」
「変な奴だから。強ぇんだろ」


神条の言っていたことを思い出しながら、冨久山は鼻で笑ってこう答えた。


…あいつはああ言ってるが、芹姉ぇは…どう動くかな…。



だが冨久山にはわかっていた。
長年の付き合いからだろう、神条は必ず、ワル男を倒すのに協力を惜しまないだろう、と。だが、学校に戻るかどうか。それとこれとは、別の話だということもなんとなく想像がついていた。


…それがダチへの罪滅ぼし…って考えてそうだしな…。



罪滅ぼし。
そのキーワードは、あの魔法使いの口からも出てきた。


…もう、あのワル男のことは…。

昼だの夜だの、言ってられる段階じゃないのかもな。あいつの言う通り…大変なことになるかどうかの瀬戸際なのかもしれねぇ…。



そう考えて、はっとした。


…あいつの…きらめき高校の魔法使いの名前。聞くの忘れたな、そういや…。





多分、つづく

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