きらめき高校吹奏楽部 ~もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら~   ディフュージョン 

俺の天空トラップタワーが復活した


こんちは。ご無沙汰してまーす。
暑いですね!でも心身共に調子がとても良いし、なんか良いのが書けそうな雰囲気がしてるので、次の話がもう楽しみですww


今、ゼノブレイド2もまだやっててプレイ時間が300時間とかになってきたんですけど、マインクラフトのアップデートが来て、そっちも結構面白いんですよね。ピレジャー関連も面白いんですが、スイッチ版で作った天空トラップタワーが蘇ったので、ブレイズトラップとあわせて「今日はどれを放置しようかなー」みたいな感じで放置プレイしてます。


さて今回、「視線」とか「希望」とか、光ちゃんとか直人君の対比ができる描写を組み込みました。直人君は現状、自分がどういう存在なのか、他人の思う自分と、自分で思う自分が一致しないということで、悩み続けてますよね。


結論は少しずつ出始めていて、それは作中でうさぎさんがしゃべらなくなったことから、なんとなく推察できるようにしています。しかし光ちゃんには、直人君が良く見えているせいで、彼がどんな状態なのか、よくわかっていないようです。


今まで幼馴染連中では一番近い存在かと思われていた光ちゃんが、直人君とケンカ?している現在、サブタイ通りディフュージョンしているわけですが、いったいどのように2人が答えを得るのか、次の話?には出せるかもしれないので、お待ちください。チャオ!


以下本文
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「だーかーら!会長命令だっつってんだろ!」
「やーだ!山ザルの言うことなんて聞かないもん!」
「だぁれぇが山ザルだーっ!ウキーッ!」
「…言うまでもないわね」
「ないよねー♡」
「こ、こいつら人が黙ってりゃぁ…」


こんな風に相容れない平行線の押し問答が、昼休みの理科室でずっと繰り広げられていた。手負いの生徒会長が科学部の天才2人に頼み込んでいたのは、あまりにも無理なお願い。


「なんでだよ!
 お前ぇらならちゃちゃっと作れんだろ!?

 「会長ドライバー」とか
 「ほむらドライバー」とか!!」
「…ほむらとかドライバーとか、
 そういう単語を並べないでほしいわね」
「な、なんでだよ」
「…どこぞのプロセッサと混同されては困るのよ」
「はぁ?なんのこっちゃわかんねーけど、
 こう…あれだ、わかるだろ!?

 超戦士ドラゴン ウィザードだって
 ずっと一人で戦ってたわけじゃねぇ、
 ドラゴン ビーストと力を合わせて
 戦ってたじゃねぇか!


 あいつ一人に戦わせるなんて、
 そんなこと――!

 
 代わってやれるなら、あたしが…」

 
今の高見 直人は、精神的に不安定だ。
いつまた崩れるかもわからない。これまでのように都合の良いヒーローを最後まで演じられる保証などどこにも無い。


赤井は知っていた。
きらめき高校の魔法使いは、たとえ悪い奴をぶっとばしたとしても、気持ちの良い顔をすることはあまり無いと。


それなのに暴走兵器を持たされ、結果として友人、同級生を手にかけてしまったことを死ぬほど後悔している。…あいつは、人を傷つけるのが怖いんだ。と、自分に対して土下座同然に謝ってきた様子からも、赤井は薄々感じ取っていた。


なのに、紐緒はあの暴走兵器ハザードインサイザーを回収することなく、「彼でなくてはワル男は倒せないわ」などと、直人に戦いを強要しているかのように見える。少なくとも、赤井からはそう見えていた。


「…かといって。
 ベストコンディションでないあなたに
 前へ出られても、足手まといになるだけよ」
「なんだと…!?

 あたしはピンピンしてらぁ!
 こんなケガ……」
「えいっ♡」
「どあっ…!

 いっっっっっ……てぇぇぇぇ!!!


 何すんだこのお団子メガネ!」
「…絵に書いたような反応ね。
 
 
 ……まずは傷を治すことね。
 でなければ、こちらもあなたの平常時の
 パーソナルデータが測定できないわ」


河合といがみ合っていた小さな生徒会長が、パッと顔を輝かせて紐緒へと詰め寄る。まるで欲しかったおもちゃを買ってやると親から言われて喜ぶ子どもみたいに。


「マジか!治す治す!
 治すからお前絶対作れよ!」
「…検討はさせてもらうわ」


よっしゃ、とキィキィ喜ぶ生徒会長は、やっぱり山ザルなのかもしれない。

自ら前線に傷つきにいこうというのに、嬉しそうな顔をする赤井に、河合も紐緒も、奇妙なものだと感心半分、侘しさ半分、複雑な思いを去来させた。


…わたしたちは直人くんに託すしかない。
もともと吹奏楽部で、ただ頑張ってるだけのあの人に、苦しい役目を押し付けて。


変わってやれたら……かぁ。
もしそんなことができたら、どんなにいいか…直人くんの代わりは、他に居ない。あの人は、世界にひとりしか……。


「……。

 代わって、やれたら…?」


そこまで考えて、はっとした。

もしかしたら、このベクトルなら。なぜなら高見 直人は、この学校で唯一、2人になったことがある人間なのだから。


「あーーーーーっ!」
「な、なんだよ急にびっくりすんじゃねぇか」
「…理佳?

 …もしかして、何か閃いたのかしら」
「ピンポン!閃いたぁ!

 ハザードインサイザーのバージョンアップ方法が!!」


飛び跳ねて喜ぶ同級生へ、またも紐緒は複雑な心境で視線を向ける。



…まだ諦めていないの?理佳…。



人智の及ばないファントムとでも呼ぶべき存在、その力を制御することは、遠い未来なら可能なのかもしれない。だが、いつ始まるかもわからないワル男との戦いに間に合わせることは、まず叶わないだろう。




…赤井 ほむらのドライバーを作ることも…時間的コストを考慮すれば、まず不可能ね…。


でも、だとすれば…私は、やはり彼に“あれ”を使ってもらうしかない…。

それは、彼の命さえも奪う危険を伴う、最悪の選択…。

……私のことで私が傷つくのは構わない。
けれど、もしも彼の身にもしものことがあったら、私は……どう償えば、いえ…もう、そうなれば私は……。


…まさに悪魔の科学者、ね…。



















抱えた膝の上に乗せた頭。
視線の先に横たわるのは、きらめき高校のグラウンド。


トラックの上で0.1秒単位の世界のやりとりを脚で行う陸上部たちが、地区のマラソン大会前だからと昼休みでも駆け回っている。その選手たちのマネージャーが、走者ではなく、傍観者の奏者へと、声をかけた。


「…そんなに熱心に見られても。

 今更あなたにここで走ってもらおうなんて
 私からは言わないわよ」
「…神戸さん。

 …うん。わかってるよ。
 私だって…。

 もう今更戻りたいなんて、
 言う資格、ないよ」


かつてのライバルが弱い語調でそう零すのを、神戸 留美は怪訝な面持ちで聞いた。すっかり落ち込んだ様子の陽ノ下 光の横には、今は居ない並走者が本来、居るはずなのだ。それがまたも、こんな風に彼女を支えきれていないことに、神戸は憤りと苛立ちを感じながらも、老婆心を絶やさず、話を聞いてやった。


「…じゃあ、どうしたの。
 これは…今聞こえているこの音は、
 彼の音でしょう。高見君の…。


 …あなたは、あそこで走らないの?」
「……。

 わからない」
「…?わからないって…」
「わからないよ…。

 私って、何なのかなって――」 


そういう風な哲学的というか、意味深な言い回しを彼女がすることに、神戸は思った。染まったなと。それが神戸の思う文化部像なのだとしたら、やや偏見じみている気もするが。


「…それは、彼にとってのあなた…という意味?」
「それは……。

 …ううん。それ以前にさ…。
 いっつも、どうやってたのかなって…」
「…陽ノ下さん?
 あなた、その…大丈夫?」
「…わかんないよ、もう…」


笑って濁して言った後、顔をうずめてしまう光。

彼女が言う事が言葉通りだとしたら、見失った自分を取り戻そうとして、かつて頑張っていた陸上のトラックに、在りし日の自分を見出そうとしていた、というところなのだろうか。


神戸がそう思ったのは、自分も同じようなことをしたことがあったからだった。


あの頃の自分も、同じような目をしていたに違いない。
なら、あの頃の自分は、どういう言葉を欲しがっていたのだろう。何を望んでいたのだろう。言葉を選び、声をかけ兼ねていると、光の方から続きの言葉が吐き出されてきた。


「…直人君には、楽器を頑張る理由があって…。

 昔みたいに、同じ学校で、同じことを頑張ってたら、
 同じ道を歩けるんだと思ってた。


 …でも、私がどれだけ頑張っても…。 
 同じ大会に出て、同じ曲を吹いているはずなのに…
 直人君の歩いている道と、私の道、全然…同じに
 ならないな、って…。


 直人君の夢は、私には…手伝ってあげられないって…。
 

 気付いたんだ…」
「……。

 それは…でも、仕方のないことじゃないかしら…」
「……やっぱり、そうなのかな」
「だって、あなたのタイムは、あなたにしか縮められない。
 
 あなたがあなた自身の脚で頑張らない限り、
 風は抜き去れない。

 
 そのことを、中学の3年間で学ばなかったはず、ないでしょう」
「……」


優しい言葉をかけられなかったからなのか。
光の驚いたような、すがるような目が、誰かの投げた砲丸みたいに持ち上がって、重く落ちる。


しかし実のところ、その心境は半分半分だった。
慰めてもらえなかった、認めてもらえなかった、それは悲しくもある。だが、当然だということも、光には薄々わかっていたのだ。


「…だから、なんだと思う」
「…だから?」
「うん…。

 …私には私の頑張らなきゃいけない理由とか、
 夢とか、そういうのがあるから、頑張らなきゃ、
 前を向いていかなきゃって思ってた。
 
 中学校の時も、そうだったし…。


 …でもさ、今走ってる場所の走り方も、
 走る楽しさも…全部、全部…。


 全部、直人君が…教えてくれて、さ」
「…面倒見がいい、教えるのも上手、
 そう言ってたものね」
「うん…。

 でも、私の夢は、私が頑張りたいことは、
 神戸さんの言う通り…私が見つけなきゃいけない。

 
 …それが、ちゃんと見つけられないから……」
「私って、何なのかなって…そう悩んでるのね」
 

言いたいことを察して、先に言い当てる神戸に、顔を抱えた膝にうずめた光がうなずく。同級生が心配そうな顔を向けているのも、目に入らないほど声を落として、悩んで。


だが、現陸上部のマネージャーは、同じく元走者に、同情ではなく疑問を投げかける。


「…確かに、そういうことを考える選手は少なくない。
 自分がなぜ、競技を続けるのか、
 努力を重ねるのか…。

 部活に熱中するあまり、アイデンティティを
 見失う人さえいる。
 こんなに頑張っていることさえ結果を出せない自分は、
 存在意義なんて無いんじゃないか、と」
「……」


うずくまったまま話を聞きながら、光は皮肉にも、自分のことではなく、幼馴染のことを考えていた。


…直人君も、そうなんだよね…。
中学の部活で結果が出せなくて、今まで自分たちがしてきたことは何だったんだろう、って追い込まれて…。



中学生の演奏を聞きに行った日、「何にも報われなかった」と話していた彼を思い出すと、涙が出そうになる。そんな世界なのに、彼は自分をこの世界に引き込んだ。なのになのに、ちっとも憎いなどと思えない。


…だって、君が見せてくれた世界は…すごく、綺麗だったから。


「でもね、陽ノ下さん。
 そうした疑問に答えを出せる人間は、
 ほんの一握りだと思う」
「……」
「答えを出せた人が居るとしたら、 
 その殆どが、結果を出した人間。

 つまり、誰かにタイムを図ってもらったり、
 誰かに賞を貰ったり、他人に認められた人間よ。


 …人ってみんな、誰か他人に、言ってもらいたいのよ。
 あなたが必要だとか、あなたといえばどういう人だ、とか。

 
 みんな、自分の存在や人生に意味があるんだって
 思いたいのね。そうでなければ不安で仕方がないから」


自分のことを鑑みながら、神戸は自嘲的にそう言う。
自分が選手としての自分にケジメをつけられたのも、隣でうずくまるライバルが居てくれたからこそのこと。他人が居ることで、自分の存在を図り知る。誰かの目に映る自分を見て、自分がどんな風に見られているのかを知る。


だがそれでも、自分が思う自分、他者が思う自分、自分がイメージする他者の中の自分、それらはすべてイコールになる日は来ない。あがいていた苦悩の日々の中で、神戸はそれをもう、妥協というか、諦めて享受していた。


「でもそれが、自分の中に勘違いを生んでしまう。

 他人が自分という存在を形作ってくれるのなら、
 他人が自分をなんとかしてくれるんじゃないかって、
 思い込んでしまうのよ。 


 でも結局、自分がどうするかは自分でしか決められない。
 たとえ選択の余地がないように見えていても、
 節目節目で人は必ず、諦めたり甘えたりしながら
 自分の意思や業を、走ってきた道に刻んでいるわ。


 …あなたが走る理由。
 それが自分で見つけられないのなら、
 見つけるために走ってみるのも、いいんじゃないかしら」
「…それは、自分のために頑張るってこと、なのかな」
「そうよ。
 だってあなたがあなたの脚で走らなければ、
 あの人の横に並び立つこともできないでしょう。


 後ろ姿ばかり追いかけているから、
 追いつかないんじゃない?違う?」


まるで物音に反応したうさぎのように、ようやく頭を上げた光。
聞こえているのは、このきらめき高校の昼休みの雑踏の中でも突き抜けて聞こえてくる、幼馴染の発信するサックスの音だろうか、それとも。


…同じ道を歩いてるつもりだった。
でも、君が前を向いているのに、私が君の背中ばかり見ていたら…それは、君にとっての後ろばかり見ているのと同じなのかな。


…そうかもしれない。
追いつけるわけなんか…ないよ。だって、君が前を走ってくれるから…君が前で先にハードルをどかしてくれるから、綺麗に見えていたんだと思うし…。


「…それじゃあさ。
 同じ道なんて、無いのかな」
「そうね…。
 みんな、手に入れる答えは違うものね。

 欲しい答えがあっても、見つからないまま
 妥協する人も居る。
 見当違いのところにあった答えに、
 真理を見出す人も居る。


 あなたの答えが、あの人とまったく同じものに
 なるかというと…そういうことって、
 そうそう無いんじゃないかしら」
「……。そうだよね」


そうつぶやいて答えた陽ノ下 光のそれは、神戸の言う前者か後者か、あるいは。

遠くを見ているかのような、昔を懐かしんでいるかのようなうつろな視線を音楽室の方へ向けるその様からは、その胸中は神戸にも図り兼ねるばかりだった。
























放課後。
掃除後の廊下、目を合わせてくれない同級生に、魔法使いは浮かない表情で昨日のことを説明する。


「…できるだけ早く返事をしてもらう約束はした。

 その時に必ず…神条さんの意思は確認する。
 それで、ちゃんと…」
「確認するって…。

 イヤ…それで神条さんがもう学校に
 来たくないって言ったらどうするの?

  
 不良とか、そんなの…関係ないよ!
 めぐみ知ってるもん、神条さんが
 コンバスも、学校でも、頑張ってたの…!」
「……」
「それなのに退学なんてなったら、
 そんなの…めぐみももう、学校来れないよ…」
「…ごめん」
「無責任だよ…!
 謝っても神条さん、帰ってこないんだよ…!?」


泣き出す同級生の目が直視できず、直人はまずい顔ごと目を逸らして、苦渋に歯を食いしばる。


…まずいことから目を逸らして、俺がなんとかするとか調子のいいことばっかり言って、その報いがこれだ…。


俺が苦しいだけならまだいい。
でも…神条さんも、十一夜さんも…2人はもっと苦しいんだ。…言う通りだ、俺は…無責任だ。最低だ…。


「…ご、ごめん、
 めぐみ…そんなことが言いたいんじゃないのに…。


 高見くんは頑張ってくれてる、
 悪くなんてない…」
「……。いや。
 俺の…せいだ。ごめん。本当に。


 あの時ああしてれば、こうしてれば、
 あれが出来てれば…!そんなことばっか、考えてる…。


 …その癖、今はちっとも前に進めてない。
 迷惑かけてばっかだ…。 


 …本当に、ごめん」
「違う!謝らなくていいの!」


両の二の腕を掴んで、言い聞かせるように涙目を向けてそう声を上げる十一夜に、廊下の視線が向けられるが、サックス吹きの視線は、いずこかに逃げたままだった。


「…できるだけ。いや、必ず。

 ごめん、なんかよりいい知らせ。
 言えるように、頑張るから…」
「そんなの…それで無茶して、
 高見くんが不良に絡まれるようなことに
 なったら、めぐみ…」
「――おいおい、またぺこぺこ謝ってんのかと
 思ったら。
 女泣かせてんのか?」


ふと、割り込んできた声。驚いて十一夜が直人の袖から手を離して後ろを見ると、くだけた制服の着こなしをした長髪の女子が立っていた。八重などと同じ、話したことはなくともこの生徒数の多いきらめき高校で名前が売れている生徒の一人だから、十一夜は息を呑んだ。


「…龍光寺さん」
「ち、違うの!めぐみ、泣き虫だから…」
「そんなの関係あるかよ。

 こういうのは男が悪いって相場が決まってんだよ。
 
 おら、歯ぁ食いしばれや!」
「えっ!?」


冬制服のポケットに突っ込んでいた右手が、鉄拳制裁とばかりに出てくるから、十一夜が思わず声を上げる。目をぎゅっと瞑る魔法使いだったが、3、4秒経っても衝撃が来ないから、どうしたものかと恐る恐る目を開けると、ニヤリと笑ってスマホの画面を見せてきている龍光寺が、「冗談だ」と前髪を掻き分けているのが見えた。


「え、えーっ…もう、びっくりしたぁ…」
「いきなり廊下で人殴りつけるわけねーだろ、
 …にしてもビビって逃げたりしないのはさすがだな、
 きらめき高校の、魔法使いさんよ」
「…そんなんじゃないよ」
「ほぉ。そんなん、とは?」
「…いいでしょ、別に……。


 ……これ。
 あの、冨久山からのLINEでしょ」
「そうだ。お前に話があるんだとよ」


「そんなんじゃない」と否定をしてから、冗談をかまされたのとは違う理由で不味い顔をしていた彼が、その顔のままで頷き、即答する。必ず応じると。すると、


「めぐみも行く!」


まさかの答えが横から飛んできて、夜の街に片足を突っ込んでいる2人はぎょっとしてしまった。どう見ても、夜の街とは無縁の女の子が勇んでそう言うものだから、龍光寺は軽くあしらうばかり。



「やめとけ。
 服買ったり茶飲んだりしにいく
 わけじゃないんだぜ?」
「わかってる…でも、
 神条さんのこと、全部高見くんに任せて
 めぐみだけ待ってるなんて…イヤだもん。


 めぐみも、神条さんのこと…本気で心配してるって。
 言葉だけじゃなくて、態度で見せなきゃいけないの!」
「お前なぁ…口でいうほど簡単じゃないぜ?
 高見だって困って――」
「――わかった。

 行こうか。一緒に」
「うん!」
「っておい!」


とんとん拍子に勝手に進んでいく話へ、制服の前ボタン全開の女子が制止をかける。2人とも認識が甘すぎると。


「でも。あの冨久山って奴も、
 その仲間も。話した感じじゃ、
 悪い奴には思えなかった。

 それに神条さんの仲間なんだろ、だったら
 俺はともかく、十一夜さんを危ない目には
 遭わせないんじゃないの」
「お前なぁ…!

 お前は人を良いように見過ぎだ!

 もしあいつがワル男だかの圧に屈してたら
 どうすんだ、最悪指輪も奪われて、
 こいつも人質だかのダシに使われて、
 後悔することになるかもしれねぇんだぞ!?」


自分ひとりが傷つくだけで済むならまだいい、他人が傷つくことになれば、また十字架を増やすことになる。それがわかっていながら、人を巻き込むような意図の発言をしたのは、直人が先輩に示してもらった夢に、背中を押され続けているからに他ならなかった。



「それでも…。
 希望があるから、みんな頑張れるんだと思う」
「うん…そうだよ!
 このままずっと不安のまま毎日過ごすなんて、
 めぐみ…耐えらんないよ」
「お前なぁ…気持ちはわかるけどな…」
「それに。
 最悪、一人逃がすくらいの時間は、
 なんとか作るさ…」
「高見、お前…それ…」
「…。高見くん…?」


思い詰めた表情で、左ポケットに手を突っ込んだ魔法使いの目は、龍光寺にも、十一夜にも、向けられていない。自分の左手に向かって、落ちていた。

 
…わからなくなる。
罰を受けたいだけなのか、何かの役に立ちたいのか。


誰かの役に立たなきゃ、自分が認められない。なら、認められたいなら、自分を犠牲にするのがてっとり早い。だからこいつに逃げようとする。


…でも。それだけが俺の価値じゃないのかもしれない。
そう思わせてくれるのが吹部なんだとしたら…やっぱり俺だって。でも、希望を見てたから、頑張りたいって。思えたんだと信じたい。
 


左手がポケットから引き上げられる。いぶかしむような龍光寺の目をようやく見返し、直人はうなずきながら言った。

「いや、大丈夫。
 もうあれは使わない」


部活が始まる時間が近付いている。

彼を迎えに来たはずなのに、声がかけられなくて、廊下の曲がり角で図らずも盗み聞きをしてしまうことになった、元陸上部の走者は、動悸を抑えようと胸に手をやって、思った。


…直人君、もしかして…また、無茶してるのかな…。

こんなに心配なのに…どうして、何も話してくれないのかな……。



多分、つづく










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