きらめき高校吹奏楽部 ~もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら~ 次々と襲い掛かる壁
やべえスランプ的ななにかですw書く手が止まってきてますwあっ、あと拍手ありがとうございます。
おはよう、バギクロスです。
あいかわらずねえ、はじめの一歩を最近見てるんですけど、バトルものがかきたくなりますねえw
なんつうか一生懸命努力した何かを必死に出す姿とか、命をかけた戦いってのはやっぱりすげえ。だからこそ生き残るために模索して個々が作ったファイトスタイルが輝いてくるし、感動してしまう。
ときめきメモリアルは、命は賭けませんからねww
お腹の痛くなるようなやりとりはあっても、種類が違うんですよねぇ
つまり、インスピレーションが浮かんでもマネしぃはできないっつうことです。うーん悶える。
あっやばい。漏れそうトイレいこうっと。
以下本文
------------------------------------------------
あの日から、完全に頭の中には雑草が蔓延ってしまった。
ありとあらゆる素晴らしいイメージ、大逆転の目、他者の感動を喚起する何かと自己満足を両立する至高のメロディ、それらは深々と生い茂る雑草に覆い隠されてしまって、いくら刈り取ろうともその姿を現してこない。
思いつく旋律の数々、それらがすべて駄目なような気がして、まったく自信が持てない。…というのも、あの時、あの音楽のギフテッドに言われた言葉が、稲妻のごとく鮮烈に、心の中に残ってしまったからだ。
――今のままならいっそ吹かない方がいい。
…こんなこと、今までだっていくらでも言われてきた。
先輩に、お前の音はいらないとか、お前の音は使い物にならないから吹くなとか、何度も言われたことがある。
でも、そういうのは、本当のところを言うと、俺になんとか上手くなってほしかったから、厳しいことを言ったんだと思う。
けど、響野さんは俺に上手になってほしくてそう言ったんじゃない。
多分、中途半端な音楽なんて聞きたくないから、ああ言ったんだ。
今までは、こんな風に厳しいことを言われても、先輩や先生に合格の印を貰えれば、それでなんとかなった。けど…今回は、プロの音楽家を納得させないといけないなんて…。
しかも、正真正銘のプロだ。
生半可な実力じゃない。本物の天才っていうのはああいうのを言うんだろうな、っていう存在が、俺達の息の根を止めにかかってる。
…俺は、それが怖い。
俺が片桐さんとSoli吹いて、この前みたいにいい加減な演奏だ、って酷評されて、それで部活が無くなったら…。
…こんなに、ソロ吹くのが怖いのなんて初めてだ。
ワクワクするどころか、もうメロディひとつ思いつかない。正解を出さなきゃいけない…そう思うと、思い思いに吹くどころか、ものすごく緻密に作らなきゃいけないじゃないか。
…今から、音楽理論を勉強するのか?
いや、遅い…。勉強したところで、何から入っていいのかわからないだろ。…いっそ響野さんにSoliのデザインを考えてもらうか?…いや、プロが作った楽譜だろ。難しくて吹けない可能性がある。吹けなくて減点されたらどうする…しかも、片桐さんだって自由に吹くはずだ。そうなったら合わなくなるのは必至だ。
…とにかく、もともと楽譜が無い以上、あたりさわりの無い音楽をするしかない。
調合はとにかく守って、カエルの唄みたいに後を追いかけるみたいにして吹けば、それで問題はないはずだ。…いや、そんなことしてどうする。全然面白くない演奏になるだろ、そしたらわざわざ俺がSoli吹く意味なんかない。
だめだ。全然思いつかない。
…やっぱあの人の言う通り、吹かない方がいいのか…?
色々考えても、直人には、良い案も良い音符の並べ方も思い浮かばなかった。
そもそも今まで、光や、鏡に見せてきたアドリブソロも、響野に言わせれば間違ったものだったかもしれない。自分の音楽性なんて、ただの小さい子の遊びと変わらないそれだったのかも…。
そう思うと部活に行くのが、気が重くなる。
楽器を手にしても、何もいい案も思いつかず、大した練習もできないまま合奏を迎えてしまう。まだ「Tomorrow」の合奏が進んでないだけマシだ。アドリブSoliのところまで合奏が進んでいないから、考える時間は一応ある。
だが、もう本番までは二週間と少しくらいしかない。
いい加減吹き方くらい決めないと、本番まで間に合わない。
なのに、時間の重圧だけでなく、響野 里澄という大きな壁が自分の前で手を広げてくる。でも、都子に言われた通り、いい加減楽譜を作らないと本当にまずいことになる。
マジやべーよこれ…。どうすんだ俺…。
こんな時、大門に行ったあいつなら俺になんて言うかな。あいつでも、Soliは吹かない方がいいって言うんだろうか。
…掃除が終わった後、部活が始まるまでまだ時間があるからといって、直人は自分の教室の席で、考え事をして、ため息を漏らす。もうクラスには人もいない。みんな掃除も終わって、部活に行くか、遊びに帰ったかのどちらかだろう。
風にそよぐ伝説の樹を見ながら、いろんなことが頭の中をめぐるのを、うざったいなと思いながら頬杖をついて席に座る彼の表情は、突然の失恋を経験したときのように無表情だった。
このままではよくない。それはわかっているけれど、何の策も無い。
そんな様子で、部活までの時間を一分、また一分と逃していく彼のところに、隣の組からの来客が来る。
「直人君!」
元気で明るい声。声のした方、教室の入り口に目をやると、かばんを手にした幼馴染の姿があった。
「ああ、光…」
返した声は、光のそれに比べて張りもなく、元気もない。
光が自分の席のところまで歩いてくるのを見て、直人はまるでちょうど今から部活に行こうとしていたかのように、席を立つ。
だが、ごまかしきれなかったらしい。光は心配そうに声をかけてくる。
「…考え事?」
そう言って気を遣われるのが、今、一番心苦しい。
光は、並々ならぬ決意で陸上を捨ててまで吹奏楽に来てくれた。なのに、その部が無くなろうだなんて。しかも、自分がSoliをうまく決められないせいでなくなるかもしれない。そうなったら、光に合わせる顔がない…。
「いや。まあ…大したことじゃない」
「…そう?
話してくれるだけでも、構わないよ。
私じゃあんまり力になれないかもしれないけど、
1人で抱えこむよりずっとすっきりすると思うし」
「ああ、ありがとう。
でも、本当に大したことじゃないから」
そう何ともなさそうに言う彼の目線と、心配そうにする光の目線は合わなかった。
「…そっか。
あっ、でも、何かあったら相談してくれていいからね。
…私、待ってるから」
「ああ。
…悪いな。
さてっ、と…部活、いこうか。
今日こそ、ときめきスウィング最後まで聞きてーな」
彼はそう言うと、かばんを手にし、それから光の頭をぽんっ、と軽く叩いて音楽室へと歩き出す。
「……」
その後ろ姿を見て、光は少し悲しくなった。
…わかるよ。
君は大したことじゃないって言ってたけど、君が苦しんでるの、すごくよくわかる。
昨日も、渡り廊下で君が楽器吹いてるのを見た時、辛そうな顔をしてたよね。誰にも何も言わないけど、君が悩んでるのなんて、幼馴染だもん、わかるよ。
直人君は、音楽に対してすごく真剣だから、だからこそ、辛いんだよね?
好きなことなのに、うまくいかなくて、どうしたらいいのかわからなくて。私も、そういう経験があるから、なんとなくわかるよ。
…私じゃ、音楽のことなんてわからないし、相談だって乗ってあげるだけしかできないけど…。でも私、君の力になりたいよ。やっと再会して、こんなに近くに居られるのに…それなのに、辛い顔してる君に何もしてあげられないなんて…私だって辛いよ…。
「ん?光、何つっ立ってんだよ。
いこうよ、部活」
「あ、う、うん!ごめんごめん。
目にゴミ入っちゃって。えへへ」
「そう?…取ってやろうか?」
「へへ、ざんねん、もう取れました!」
…私だって、もう泣き虫のあの頃のままじゃないんだよ。
だから、頼ってくれていいからね。何があっても私、君の味方だから…。
実際に部活に行ってみると、ソロも大事だけれどその練習ばかりしていられない。
バリトンサックスの経験者として語堂 つぐみを教えたり、低音の経験者として寿 美幸を教えたりもしなければならない。まだ光と語堂は、皐月が見てくれる日もあるし、美幸も池上が見てくれるだけなんとかなっているが、毎日自分の練習だけしている時間は流石に無い。
数日前も池上が不在だったので、美幸を教えたのだが、池上の指導のおかげか、だいぶときめきSwingが吹けるようになっていた。Tomorrowはまだ手をつけてないところもあるらしく、全部を譜読みしきってはいなかったが、それでも一週間で、何かとトラブルが付き物な彼女をここまで教えた池上の手腕は流石だった。
「池上せんぱいってすごいねー。
真面目だし、頭いいしー」
「へぇー、そうなの。
頭いいんだ、池上先輩…。
…じゃあ今日は真面目じゃないし頭も良くない俺が
教えるけどいい?」
「うん!だいじょびだいじょび!
なんかー、ひさびさだねー!
直ちゃんにおしえてもらうのさー」
「あー確かにそうかも。池上先輩居たから、
つい任せちゃってたわ」
そういえば、美幸とこうして話すのも、久しぶりだなと思う。
…相変わらず、ゆっきーは元気そうだな。
部活全体があんま良い空気じゃないし、負けたら廃部って決まってるから、多少は元気なくなってたかと思ってたけど…。
…もしかして、部活のことなんて、どうでもいいのか…?
い、いや。そんな風に思ったらだめだ。
ゆっきーだってきっと、大変なときだからこそ空気を悪くしないようにしてくれてるんだ。なんてこと考えてんだ俺は…。
雑念を振り払って、目の前の女の子を教えることだけに専念する。
スタッカートの止め方、推進力を失わないマルカートの吹き方、重い音の出し方…それらの内には、池上がすでに教えたこともあった。その際は、先輩の顔を立て、先輩の指示に従うように勧める。
複数の人間が1人を教えると、どうしてもスタイルの違いや好みが出てしまう。初心者を混乱させないためにもどちらかに絞った方がいいと考え、我を出しすぎないように注意を払いながら、美幸を教えた。
こうしてしばらく直人が苦心しながら違う楽器の初心者を教えていていると、そこに突然ストップがかかった。
「…高見君、ありがとう。もういい」
…これ以上余計なことをしないで欲しい。
まるでそう言いたげな言葉を投げかけて練習を止めに入ったのは、彼らの1つ上の学年の、元バスクラ吹き。
「…遅れてすまなかった。あとは、寿君は俺が見る。
君は、自分の練習に専念するんだ」
池上は、そう言うと直人にはもう見向きもせずに、美幸の横に着く。
「あっ、はい…ありがとうございます…」
…確かに先輩、真面目だけど…。
なんか、業務的すぎないか?
でもまあ、先輩の言う通りか。
俺だって自分の練習しなきゃいけないし、先輩がゆっきーのこと見てくれるからすごく助かってるじゃないか。
…変なこと、考える必要ないよな。
最近、色々ありすぎて、滅入っちゃってるんだろうな、俺。
「ありがとねー!直ちゃん!じゃあねー!」
そんな声に応じて軽く手を挙げ、自分の練習場所に戻る。
…気持ち入れ替えていかなきゃ。
余計なこと考えてる暇なんかない。アドリブも完成させなきゃいけないし、ときめきSwingだってまだまだちゃんとは吹けてない。だから、練習しないといけない。
だがしかし、後輩がそうして汲み取った先輩の心境のそれは、実際に池上が腹に抱えているそれとは、違った。
直人に代わって美幸の指導に入った池上は、開口一番すぐにこう言ったのだ。
「今、彼に教わったことは全部忘れるんだ」
「えっ?で、でもー…」
「…彼はバスクラ奏者じゃない。
彼が教える内容には、何の意味も無い。
…君は、俺の言うことだけ聞いていればいい」
…だいたい、会った時から気に入らなかった。
俺達が現役の頃は、校内屈指の実力を持つ部活だからこそ、皆に応援されるべき生徒であるよう振る舞うように、顧問の先生からも言われていた。当然、部長を中心に俺達自身も自ら率先して服装などを統一していた。
眉も剃らないようにし、スカートの丈だって短くしすぎないようにみんなで合わせた。おしゃれをしたい部員は当然居たし、遊びたい部員だって大勢居たに違いない。
…それが、今の部活はなんだ?
日曜日は部活が無くて当たり前、スカートもやけに短い連中も居て…それに、あの男のようにチャラチャラした奴もいる。
あんなにズボンも下げて、チャラチャラして…あんなのが皐月先輩も居たサックスに居るのがもう、モテようとしてサックスを吹いているようにしか思えない。どうせ見た目や人気で楽器を選んで吹いてるんだろ。あんなのがきらめき高校の吹奏楽部に居るとおもうと、虫唾が走る!
それなのに…寿君は練習中にこの男の名前何度も出した。
「美幸ができたときはー、
高見君、誉めてくれるしー、
それにすごく楽器上手だしー…」
「えーとー…。
でもー、直ちゃ…じゃなかったー、
高見君はー、前に進みながら吹くってー…」
…なぜかわからないけど、寿君があの男の名前を出すたび、胸の内がざわざわする。無性に腹が立つ。
それに、どうして寿君はあいつのことをあだ名で呼んだりする?
…だめだ、あの男は危険だ。これからも寿君に出鱈目な知識をひけらかし、そうしてたぶらかすに決まってる!
憤りが怒りになって、胃の中でぐつぐつと燃え滾る。
波打ちながら、今にも水面下から顔を出しそうなそれを、これ以上堪えているのは、もう困難だった。
なまじ自分の感性に拘りを重ねる芸術の部活を本気でやってきたせいか、自分の癪に強烈に障るあの男子を、これ以上野放しにするのはもう堪えらない。
…部活が終わり、居残り練習の時間になってから池上は、練習に行こうとする直人を呼び出した。
「あの、話って…なんですか?」
「……寿君から聞いた。
君は、アドリブソロを吹くそうだな。
吹いてみろ。ここで、今すぐに」
それを聞いて、見事なソロを吹くならまだ、服装の注意をするくらいにとどめてやろう。
そう思っていたのだが、直人はこれに、こう答えるしかなかった。
「…できません」
楽器が無いからではない。首からぶらさげた楽器も持ってきてあるし、楽譜を決めていないわけではない。
だが、試行錯誤して作ったはずのあの楽譜は、響野 里澄に酷評された。自分でも納得できていないこのソロを、堂々と先輩に披露する神経も勇気も、直人は持ち合わせていなかった。
「…どういうことだ?
部外者に聞かせるソロなんてないということか?」
「ち、違います。
ただ、聞かせられる段階まで煮詰まっていなくて…」
だが、そんな事情を説明せずに相手に伝えられるはずもない。
より池上の神経を逆撫でする結果にしかならない。
「…もう本番まで二週間だぞ!?
まだ吹くことすらできないのか?…呆れたな。
…所詮君は、格好つけのためにいい加減な気持ちで
吹奏楽をやってたんだろう?
だから、アドリブソロだなんて高度なことをこの崖っぷちで
要求されて、戸惑っているんだろ?」
「…なっ!
格好付け…?
お、俺が、いつ!?
格好付けのために毎日音楽を…」
「…事実そうじゃないか。
だらしない服装して、髪も決めて、
女子をたぶらかして…。
…君のような浮ついた気持ちで音楽をするような人間が、
今の吹奏楽部に居るのは害でしかない。
大した覚悟もないのなら、辞めてしまえ!
……そして、二度と寿君に近付くな。
いいな?
話は、それだけだ」
…その場に残された直人は、後を追って言い返すことができなかった。
事実だったから?
あまりにショックだったから?
…わからない。
でも、何も言えなかった。何も言い返せなかった…。
はっきり理由なんて言えない。
けどわかるのは…たとえここで言葉を返しても、吹く音がないことは、否定できないこと。
…ソロ吹けない俺が居ても、この部活を救えない。
もしかして本当に…俺が居ても、何の、意味も…。
多分、つづく
おはよう、バギクロスです。
あいかわらずねえ、はじめの一歩を最近見てるんですけど、バトルものがかきたくなりますねえw
なんつうか一生懸命努力した何かを必死に出す姿とか、命をかけた戦いってのはやっぱりすげえ。だからこそ生き残るために模索して個々が作ったファイトスタイルが輝いてくるし、感動してしまう。
ときめきメモリアルは、命は賭けませんからねww
お腹の痛くなるようなやりとりはあっても、種類が違うんですよねぇ
つまり、インスピレーションが浮かんでもマネしぃはできないっつうことです。うーん悶える。
あっやばい。漏れそうトイレいこうっと。
以下本文
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あの日から、完全に頭の中には雑草が蔓延ってしまった。
ありとあらゆる素晴らしいイメージ、大逆転の目、他者の感動を喚起する何かと自己満足を両立する至高のメロディ、それらは深々と生い茂る雑草に覆い隠されてしまって、いくら刈り取ろうともその姿を現してこない。
思いつく旋律の数々、それらがすべて駄目なような気がして、まったく自信が持てない。…というのも、あの時、あの音楽のギフテッドに言われた言葉が、稲妻のごとく鮮烈に、心の中に残ってしまったからだ。
――今のままならいっそ吹かない方がいい。
…こんなこと、今までだっていくらでも言われてきた。
先輩に、お前の音はいらないとか、お前の音は使い物にならないから吹くなとか、何度も言われたことがある。
でも、そういうのは、本当のところを言うと、俺になんとか上手くなってほしかったから、厳しいことを言ったんだと思う。
けど、響野さんは俺に上手になってほしくてそう言ったんじゃない。
多分、中途半端な音楽なんて聞きたくないから、ああ言ったんだ。
今までは、こんな風に厳しいことを言われても、先輩や先生に合格の印を貰えれば、それでなんとかなった。けど…今回は、プロの音楽家を納得させないといけないなんて…。
しかも、正真正銘のプロだ。
生半可な実力じゃない。本物の天才っていうのはああいうのを言うんだろうな、っていう存在が、俺達の息の根を止めにかかってる。
…俺は、それが怖い。
俺が片桐さんとSoli吹いて、この前みたいにいい加減な演奏だ、って酷評されて、それで部活が無くなったら…。
…こんなに、ソロ吹くのが怖いのなんて初めてだ。
ワクワクするどころか、もうメロディひとつ思いつかない。正解を出さなきゃいけない…そう思うと、思い思いに吹くどころか、ものすごく緻密に作らなきゃいけないじゃないか。
…今から、音楽理論を勉強するのか?
いや、遅い…。勉強したところで、何から入っていいのかわからないだろ。…いっそ響野さんにSoliのデザインを考えてもらうか?…いや、プロが作った楽譜だろ。難しくて吹けない可能性がある。吹けなくて減点されたらどうする…しかも、片桐さんだって自由に吹くはずだ。そうなったら合わなくなるのは必至だ。
…とにかく、もともと楽譜が無い以上、あたりさわりの無い音楽をするしかない。
調合はとにかく守って、カエルの唄みたいに後を追いかけるみたいにして吹けば、それで問題はないはずだ。…いや、そんなことしてどうする。全然面白くない演奏になるだろ、そしたらわざわざ俺がSoli吹く意味なんかない。
だめだ。全然思いつかない。
…やっぱあの人の言う通り、吹かない方がいいのか…?
色々考えても、直人には、良い案も良い音符の並べ方も思い浮かばなかった。
そもそも今まで、光や、鏡に見せてきたアドリブソロも、響野に言わせれば間違ったものだったかもしれない。自分の音楽性なんて、ただの小さい子の遊びと変わらないそれだったのかも…。
そう思うと部活に行くのが、気が重くなる。
楽器を手にしても、何もいい案も思いつかず、大した練習もできないまま合奏を迎えてしまう。まだ「Tomorrow」の合奏が進んでないだけマシだ。アドリブSoliのところまで合奏が進んでいないから、考える時間は一応ある。
だが、もう本番までは二週間と少しくらいしかない。
いい加減吹き方くらい決めないと、本番まで間に合わない。
なのに、時間の重圧だけでなく、響野 里澄という大きな壁が自分の前で手を広げてくる。でも、都子に言われた通り、いい加減楽譜を作らないと本当にまずいことになる。
マジやべーよこれ…。どうすんだ俺…。
こんな時、大門に行ったあいつなら俺になんて言うかな。あいつでも、Soliは吹かない方がいいって言うんだろうか。
…掃除が終わった後、部活が始まるまでまだ時間があるからといって、直人は自分の教室の席で、考え事をして、ため息を漏らす。もうクラスには人もいない。みんな掃除も終わって、部活に行くか、遊びに帰ったかのどちらかだろう。
風にそよぐ伝説の樹を見ながら、いろんなことが頭の中をめぐるのを、うざったいなと思いながら頬杖をついて席に座る彼の表情は、突然の失恋を経験したときのように無表情だった。
このままではよくない。それはわかっているけれど、何の策も無い。
そんな様子で、部活までの時間を一分、また一分と逃していく彼のところに、隣の組からの来客が来る。
「直人君!」
元気で明るい声。声のした方、教室の入り口に目をやると、かばんを手にした幼馴染の姿があった。
「ああ、光…」
返した声は、光のそれに比べて張りもなく、元気もない。
光が自分の席のところまで歩いてくるのを見て、直人はまるでちょうど今から部活に行こうとしていたかのように、席を立つ。
だが、ごまかしきれなかったらしい。光は心配そうに声をかけてくる。
「…考え事?」
そう言って気を遣われるのが、今、一番心苦しい。
光は、並々ならぬ決意で陸上を捨ててまで吹奏楽に来てくれた。なのに、その部が無くなろうだなんて。しかも、自分がSoliをうまく決められないせいでなくなるかもしれない。そうなったら、光に合わせる顔がない…。
「いや。まあ…大したことじゃない」
「…そう?
話してくれるだけでも、構わないよ。
私じゃあんまり力になれないかもしれないけど、
1人で抱えこむよりずっとすっきりすると思うし」
「ああ、ありがとう。
でも、本当に大したことじゃないから」
そう何ともなさそうに言う彼の目線と、心配そうにする光の目線は合わなかった。
「…そっか。
あっ、でも、何かあったら相談してくれていいからね。
…私、待ってるから」
「ああ。
…悪いな。
さてっ、と…部活、いこうか。
今日こそ、ときめきスウィング最後まで聞きてーな」
彼はそう言うと、かばんを手にし、それから光の頭をぽんっ、と軽く叩いて音楽室へと歩き出す。
「……」
その後ろ姿を見て、光は少し悲しくなった。
…わかるよ。
君は大したことじゃないって言ってたけど、君が苦しんでるの、すごくよくわかる。
昨日も、渡り廊下で君が楽器吹いてるのを見た時、辛そうな顔をしてたよね。誰にも何も言わないけど、君が悩んでるのなんて、幼馴染だもん、わかるよ。
直人君は、音楽に対してすごく真剣だから、だからこそ、辛いんだよね?
好きなことなのに、うまくいかなくて、どうしたらいいのかわからなくて。私も、そういう経験があるから、なんとなくわかるよ。
…私じゃ、音楽のことなんてわからないし、相談だって乗ってあげるだけしかできないけど…。でも私、君の力になりたいよ。やっと再会して、こんなに近くに居られるのに…それなのに、辛い顔してる君に何もしてあげられないなんて…私だって辛いよ…。
「ん?光、何つっ立ってんだよ。
いこうよ、部活」
「あ、う、うん!ごめんごめん。
目にゴミ入っちゃって。えへへ」
「そう?…取ってやろうか?」
「へへ、ざんねん、もう取れました!」
…私だって、もう泣き虫のあの頃のままじゃないんだよ。
だから、頼ってくれていいからね。何があっても私、君の味方だから…。
実際に部活に行ってみると、ソロも大事だけれどその練習ばかりしていられない。
バリトンサックスの経験者として語堂 つぐみを教えたり、低音の経験者として寿 美幸を教えたりもしなければならない。まだ光と語堂は、皐月が見てくれる日もあるし、美幸も池上が見てくれるだけなんとかなっているが、毎日自分の練習だけしている時間は流石に無い。
数日前も池上が不在だったので、美幸を教えたのだが、池上の指導のおかげか、だいぶときめきSwingが吹けるようになっていた。Tomorrowはまだ手をつけてないところもあるらしく、全部を譜読みしきってはいなかったが、それでも一週間で、何かとトラブルが付き物な彼女をここまで教えた池上の手腕は流石だった。
「池上せんぱいってすごいねー。
真面目だし、頭いいしー」
「へぇー、そうなの。
頭いいんだ、池上先輩…。
…じゃあ今日は真面目じゃないし頭も良くない俺が
教えるけどいい?」
「うん!だいじょびだいじょび!
なんかー、ひさびさだねー!
直ちゃんにおしえてもらうのさー」
「あー確かにそうかも。池上先輩居たから、
つい任せちゃってたわ」
そういえば、美幸とこうして話すのも、久しぶりだなと思う。
…相変わらず、ゆっきーは元気そうだな。
部活全体があんま良い空気じゃないし、負けたら廃部って決まってるから、多少は元気なくなってたかと思ってたけど…。
…もしかして、部活のことなんて、どうでもいいのか…?
い、いや。そんな風に思ったらだめだ。
ゆっきーだってきっと、大変なときだからこそ空気を悪くしないようにしてくれてるんだ。なんてこと考えてんだ俺は…。
雑念を振り払って、目の前の女の子を教えることだけに専念する。
スタッカートの止め方、推進力を失わないマルカートの吹き方、重い音の出し方…それらの内には、池上がすでに教えたこともあった。その際は、先輩の顔を立て、先輩の指示に従うように勧める。
複数の人間が1人を教えると、どうしてもスタイルの違いや好みが出てしまう。初心者を混乱させないためにもどちらかに絞った方がいいと考え、我を出しすぎないように注意を払いながら、美幸を教えた。
こうしてしばらく直人が苦心しながら違う楽器の初心者を教えていていると、そこに突然ストップがかかった。
「…高見君、ありがとう。もういい」
…これ以上余計なことをしないで欲しい。
まるでそう言いたげな言葉を投げかけて練習を止めに入ったのは、彼らの1つ上の学年の、元バスクラ吹き。
「…遅れてすまなかった。あとは、寿君は俺が見る。
君は、自分の練習に専念するんだ」
池上は、そう言うと直人にはもう見向きもせずに、美幸の横に着く。
「あっ、はい…ありがとうございます…」
…確かに先輩、真面目だけど…。
なんか、業務的すぎないか?
でもまあ、先輩の言う通りか。
俺だって自分の練習しなきゃいけないし、先輩がゆっきーのこと見てくれるからすごく助かってるじゃないか。
…変なこと、考える必要ないよな。
最近、色々ありすぎて、滅入っちゃってるんだろうな、俺。
「ありがとねー!直ちゃん!じゃあねー!」
そんな声に応じて軽く手を挙げ、自分の練習場所に戻る。
…気持ち入れ替えていかなきゃ。
余計なこと考えてる暇なんかない。アドリブも完成させなきゃいけないし、ときめきSwingだってまだまだちゃんとは吹けてない。だから、練習しないといけない。
だがしかし、後輩がそうして汲み取った先輩の心境のそれは、実際に池上が腹に抱えているそれとは、違った。
直人に代わって美幸の指導に入った池上は、開口一番すぐにこう言ったのだ。
「今、彼に教わったことは全部忘れるんだ」
「えっ?で、でもー…」
「…彼はバスクラ奏者じゃない。
彼が教える内容には、何の意味も無い。
…君は、俺の言うことだけ聞いていればいい」
…だいたい、会った時から気に入らなかった。
俺達が現役の頃は、校内屈指の実力を持つ部活だからこそ、皆に応援されるべき生徒であるよう振る舞うように、顧問の先生からも言われていた。当然、部長を中心に俺達自身も自ら率先して服装などを統一していた。
眉も剃らないようにし、スカートの丈だって短くしすぎないようにみんなで合わせた。おしゃれをしたい部員は当然居たし、遊びたい部員だって大勢居たに違いない。
…それが、今の部活はなんだ?
日曜日は部活が無くて当たり前、スカートもやけに短い連中も居て…それに、あの男のようにチャラチャラした奴もいる。
あんなにズボンも下げて、チャラチャラして…あんなのが皐月先輩も居たサックスに居るのがもう、モテようとしてサックスを吹いているようにしか思えない。どうせ見た目や人気で楽器を選んで吹いてるんだろ。あんなのがきらめき高校の吹奏楽部に居るとおもうと、虫唾が走る!
それなのに…寿君は練習中にこの男の名前何度も出した。
「美幸ができたときはー、
高見君、誉めてくれるしー、
それにすごく楽器上手だしー…」
「えーとー…。
でもー、直ちゃ…じゃなかったー、
高見君はー、前に進みながら吹くってー…」
…なぜかわからないけど、寿君があの男の名前を出すたび、胸の内がざわざわする。無性に腹が立つ。
それに、どうして寿君はあいつのことをあだ名で呼んだりする?
…だめだ、あの男は危険だ。これからも寿君に出鱈目な知識をひけらかし、そうしてたぶらかすに決まってる!
憤りが怒りになって、胃の中でぐつぐつと燃え滾る。
波打ちながら、今にも水面下から顔を出しそうなそれを、これ以上堪えているのは、もう困難だった。
なまじ自分の感性に拘りを重ねる芸術の部活を本気でやってきたせいか、自分の癪に強烈に障るあの男子を、これ以上野放しにするのはもう堪えらない。
…部活が終わり、居残り練習の時間になってから池上は、練習に行こうとする直人を呼び出した。
「あの、話って…なんですか?」
「……寿君から聞いた。
君は、アドリブソロを吹くそうだな。
吹いてみろ。ここで、今すぐに」
それを聞いて、見事なソロを吹くならまだ、服装の注意をするくらいにとどめてやろう。
そう思っていたのだが、直人はこれに、こう答えるしかなかった。
「…できません」
楽器が無いからではない。首からぶらさげた楽器も持ってきてあるし、楽譜を決めていないわけではない。
だが、試行錯誤して作ったはずのあの楽譜は、響野 里澄に酷評された。自分でも納得できていないこのソロを、堂々と先輩に披露する神経も勇気も、直人は持ち合わせていなかった。
「…どういうことだ?
部外者に聞かせるソロなんてないということか?」
「ち、違います。
ただ、聞かせられる段階まで煮詰まっていなくて…」
だが、そんな事情を説明せずに相手に伝えられるはずもない。
より池上の神経を逆撫でする結果にしかならない。
「…もう本番まで二週間だぞ!?
まだ吹くことすらできないのか?…呆れたな。
…所詮君は、格好つけのためにいい加減な気持ちで
吹奏楽をやってたんだろう?
だから、アドリブソロだなんて高度なことをこの崖っぷちで
要求されて、戸惑っているんだろ?」
「…なっ!
格好付け…?
お、俺が、いつ!?
格好付けのために毎日音楽を…」
「…事実そうじゃないか。
だらしない服装して、髪も決めて、
女子をたぶらかして…。
…君のような浮ついた気持ちで音楽をするような人間が、
今の吹奏楽部に居るのは害でしかない。
大した覚悟もないのなら、辞めてしまえ!
……そして、二度と寿君に近付くな。
いいな?
話は、それだけだ」
…その場に残された直人は、後を追って言い返すことができなかった。
事実だったから?
あまりにショックだったから?
…わからない。
でも、何も言えなかった。何も言い返せなかった…。
はっきり理由なんて言えない。
けどわかるのは…たとえここで言葉を返しても、吹く音がないことは、否定できないこと。
…ソロ吹けない俺が居ても、この部活を救えない。
もしかして本当に…俺が居ても、何の、意味も…。
多分、つづく
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