きらめき高校吹奏楽部 ~もしきら高に歴代ヒロインがみんな居たら~  スーサイド・セデーション 

ジオウにウィザード回到来した感想


ウィザードの主人公ハルトは、絶望しかけた他人に対してエンゲージリングを使い、アンダーワールドに入ってファントムを倒すことで、手を差し伸べることができます。ファントムという驚異に対抗できる魔法使いは、まさにヒーローだといえるでしょう。


しかしその構図だと、仮にハルトが絶望してしまうようなことになったら、誰がハルトを助けるというのでしょう。同じ魔法使いのビーストという答えもあるといえばそうです。ハルトは劇場版で「俺は自分の中の希望を信じてる」といって絶望を跳ね除けていますが、続く鎧武との劇場版では「俺にとっての希望がこんなにもあふれる場所で、俺が負けるはずがない」と、数々のコヨミとの思い出を背景に、強く言い切ってもいます。


ですが結果的にハルトのアンダーワールドがオーガによって荒らされかけた際、周囲の人がハルトを助けたのではなく、周囲の人の力を借りつつも、最後はハルト自身によってアンダーワールド(心の中)は守られ、それまで「俺にとっての希望」であったコヨミとの別離を受け入れることを決めました。コヨミという希望を失い絶望するのではなく、未だハルトが魔法使いとして生きているということは、次なる希望が彼の中に生まれた、ということかもしれません。


何を大切に想うか、何を愛するか。
それを決めるのは自分自身でしかなく、好きなものを大切にする=自分を大切にするという行為もまた、人任せにはできません。自分こそが自分にとっての最大の救い手となりえる、そういうメッセージが、ウィザードの劇場版にはあったと思います。


ジオウのウィザード回に登場したウィザード早瀬も、自分の力で人の希望を守ることはできましたが、自分の希望は代償として失われました。そのウィザード早瀬の希望はジオウによって守られる…のではなく、ジオウの力添えを借りたウィザード早瀬本人によって「後悔のしない希望との別離」を自身に促すことで、こだわっていた希望と別離し、新たな希望を見つける方向へ足を進めることができました。


ハルトも、早瀬も、似た点が非常に多く、ウィザード回として満足の出来るものでした。懐かしさがあって、これぞライダーとの再会と別離を同時に味わえるノスタルジックなジオウならではの回だったなーと感じて、よかったです。あとビーストもやっぱめちゃくちゃ好きだわハルト本人じゃなくても仁藤出てくれたら超満足です。


はい、関係ない話終わり!!w


以下本文
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蝉の声。
逸らした目線。目の前には、直視するのが辛かった後輩の顔。時々思い出す中学の一階渡り廊下の光景は、高見 直人にとって、自己嫌悪という絵画を彩る一色だ。



「――もうお前、ここには来ない方がいいかもな…」
「が、がんばります!
 やります…!」
「…やりますとかじゃなくて。


 ……やってもお前、できないだろ」
「……」
「…これからもっと練習は厳しくなる。
 そうなったら、俺以外の奴からもめちゃくちゃ
 攻められることになる…。


 …今の内なんじゃないの」
「それは……辞めろって、ことですか…?」
「…俺の口からは言えないけど。 
 でも、そこまで吹部にこだわりがないなら、
 抜けられる内に抜けるっていうのも、アリかもね…」


……俺には罪がある。


思い出したくもない傷跡をなぞると、キリがない。痛みに胸が痛んで、指先に血がにじんで、自分がここに居ることを感じられる。そうすることでしか今の彼は、本当の自分を立てることができなかった。




…だって、他人は本当の俺のことなんて、見てくれないから。
……見せたら、終わるから…。



「――お前さ、何回練習してもできないよね。
 カットしてもらったら?」
「…嫌よ、ちゃんと練習する、だから…」
「したってできるようにならないじゃん。

 ぶっちゃけ居るだけで迷惑なんだけど」
「…そんな風に人を責めて、追い出して。
 あなた一人でコンクールで出られるとでも思ってるの?
 
 そんなにあなたは吹けているの?
 …違うでしょう。あなただって、出来ていないところばかり…」
「は?じゃあ俺が辞めればいいわけ?」
「そんなこと言ってないじゃない!
 
 …ただ他人が嫌いなだけでしょう?
 人を責めたいだけなんでしょう?」
「…俺が嫌いなのは、お前だけだよ」


……思い出すたびに、ごめん、しか頭の中に思い浮かばない。
本当に伝えたい言葉は、そんな言葉じゃないはずなのに、あんなことばかり言って…。


「…はぁ。
 部活、行きたくない…」
「……。
 じゃあ起こしに来なくてじゃん。
 寝てろよ」
「あんた一人で起きられない癖に」
「別に頼んでねーっしょ…。
 結局ぶっちゃけて、愚痴聞いてもらいだけだろ。

 
 …ウザいんだよ、女子のそういうとこ」
「……ごめん」
「…そうやって謝るのもウゼぇ」


…いつも誰かを傷つけてた。
そのせいでやり返されて、俺もやり返して…その繰り返しだった。


――なぜ?
その理由をわかっていながら、目を背け続けてきた。



…意地になってた。負けられなかった。
それもある。でも本当は…怖かった。


先輩たちのやり方をずっと見てきたから…ああすることが、ケンカし合いながらコンクールまでやってくことが、あの部活の普通だっていうこと、よくわかってた。


俺は…普通で居たかったんだ。



――普通で居るということ。
それは、どういうことなのか。


首をかしげられないこと、人ごみの中で異臭異彩を発しないということ、疑われないこと、ペアを作ってくださいと言われた時に何の苦労もせず誰かとペアになれること。



…普通じゃなきゃいけないんだ。
ミスりたくない。一人になりたくなんてない。みんなの中に俺の居場所が無きゃ嫌だ、そうじゃなきゃ怖い…。




だから、仲間を責めていた。
自分はこの部活における「普通」だ、だから他人の出来ていなさ加減を糾弾して自分を持ち上げ、周りの目を浴びて「あいつは部活のために動いている」と思われるように振る舞う。そうすることで、普通を演じていた。


……でも、俺には力も才能も無い。
先輩に言われてた通り、渡瀬や先生、みんなにキレられてたように、俺だって全然出来てなかったんだ…。



けれど、人に責められること、それもまた、直人にとっては都合の良いことだった。当然腹も立つし、相手に嫌悪感や恐怖を感じて然る。けれど、相手にまた「普通」を返されることは、より「普通」の中に溶けているようで、安心感もあった。


いや、それだけではない。
見られたくもない「本当の俺」は、人に責められて、「これでいい」と感じていた。


…みんなに本気で責められること…それは何か、「本当の俺」を見てもらってる気がしてた。俺には実力が無いから、怒られて当然なんだ。それをはっきり言ってもらうのは、悔しいけど、仕方ないって思いもあった…。それに!それに…。



それに……。
俺には、罪があるから。



――それは何か?
みんなを責めて自分の居場所を守ろうとする、そんな自分勝手な人間である自分。それが許せなかった。




…本当は嫌に決まってる…!
あんな風に言い合って、毎日死にたくなるような言葉かけられて、存在を全否定されて、居なくなれとか死ねとか言われて…。



…でも、間違ってないんだ。
「本当の俺」は、最低な人間だから。



責めて、責められて。
罪を重ねて、言葉の刃を甘んじて受けることを贖罪と感じて。その繰り返しの中で、高見 直人の価値は、徐々に減衰していった。他人にとってどう見えていたかはわからないが、少なくとも自分の中では、「最低」だといえるほどに。



…ああしなきゃ俺が追い出されてたんだ。
仕方ないんだ。俺は生き残りたかった。死にたくなかった。



――なぜ?
苦しいはずの中学時代の吹奏楽部。そこで生き残り続けることに、何の意味があるのか。



……最後の、居場所だから。



「……。


 ……もしもし」


普通がぎゅうぎゅうに詰まってひしめき合う教室棟の校舎。それを柵越しに背負って、理科棟の屋上の上、ぼそぼそと救いを求めて、左手のケータイにすがる。


[…何だァ、用件があるなら早く言え]
「……。
 あの…。
 
 練習。うまく…行かなくてさ…」
[…あ?高見ィ…お前ェが練習うまくいってる時なんて
 あったかァ…?]


皮肉な責め言葉に、胸が躍る。
ああ、やっぱりだ。こいつは、俺をちゃんと見てくれる。本当の俺を、最低な俺をちゃんと知っている…。そういう安心感が、ニタニタと口許を緩ませて、滑り落ちていく。


「いや…そう、そうなんだよ、
 無いよな…。


 …俺みたいなのがソロのオーディション
 受けさせられるのがおかしいんだ」
[……あァ?
 ハッ、そうかもなァ…] 
「……誰も見る目が無いんだ。
 ちゃんと見てない…ありもしない希望を
 勝手に押し付けて、いい迷惑だっつの…。


 …俺なんて何吹いたってダメだし、
 お前や、あいつにキレられて当然なんだ、
 居ない方がいいくらい……なんだ」


……居なくなりたくない癖に。

自分で分かっていながら述べた言葉に拒絶反応が混じって、語尾がごにょごにょと小さくなる。そんな態度に電話の相手は、怒ったらしかった。


[…おい。
 愚痴か何か知らねェが…。 
 
 誰がお前ェにソロが向かねェとか
 ダメだとか言った…?

 …文化祭を聞く限り…俺には、お前ェの音を
 全カットしてでも聞きたい味なんざ、無かったように
 思うがな]
 

……は…?
何でキレてんの…?



よく顔を合わせた相手だ、電話越しでもなんとなく表情が思い浮かんで補完される。それが逆に、直人にとっては理解し難かった。過去のように渡瀬を非難したり怒鳴ったりしているわけではない、なのに電話の相手がキレている、しかしいったい、何に対して…?狼狽しながら直人は、何とか謝って取りなそうとする。


「…ご、ごめんって。
 愚痴るみたいなことして。

 
 …俺、どうかしてたよ、じゃあ、これで…」
「――おい。
 …高見ィ、お前ェ、腐っちまったのか…?


 誰がテメェに死ねだの消えろだの言ったのかは知らねェ、
 けどな、何とかしろ」
「は?何とかって、なんだよ、それ…」
「…俺らが中学ってやってきたことが
 無駄だって言われてる感じがして、クソ不味ィんだよ……。


 …いつもみたいにアホみてェに練習して、
 ソロのひとつでも奪ってやれ。じゃなきゃちっとも
 おいしくねェだろうが……」


……憤慨してる…?

それも、俺が誰かに怒られたと思って…?



空いた右手が頭をかきむしる。違う、これは違うと首を横に振り、何かを必死に否定しようとする。言葉に、ならない。


……違う、違う、違う、違う、違う…!

俺は中学の頃のみんなを背負うような存在じゃない、俺は、渡瀬…お前にめちゃくちゃにどやされて当然の人間なんだ、言われて当たり前なんだ、褒められたりかばってもらったり、そんな資格なんてない、なんで、なんでわかってくれないんだよ…。


「……おい。
 高見ィ…?どうした、おい」
「…はぁ、はぁ……。

 ……。

 

 …いや。
 別に……。


 ごめん、じゃあ……」
 

まだ向こうから「おい」と声がしているにも関わらず、直人は電話を切った。本当はスマホを床に投げつけてでも一人になりたくて焦っていたから、電話が切れた後も、目の前の柵に手を乱暴にかけてがしゃがしゃと揺らすことで、気持ちの高ぶりを何とかやつあたりに繋げることしか、できなかった。


かきむしって髪型も乱したまま、教室棟の方をわずかばかり見る。同じ高さ、向こうの屋上には、自分と同じように柵に手をかけた女子生徒が、ひとり佇んでいるのが見えた。


……ごめん、ごめんしか、言えない…。


人の中に生きることは、八重さんの言う通り、辛いことだよね。それなのに俺は、自分の居場所を作るために色んな人を巻き込んで、吹奏楽部に無理やり引き込んで、嫌な思いを強いてきた。



……マジで、最悪だ、俺…。
気持ち悪い、罪悪感が胸の中で炭酸みたいに泡立って、骨も皮も溶かして俺を殺してしまいそうだ。


いっそ死んだらいい、でもそれはだめだ、わかってる…。
俺は……到底謝るくらいじゃ済まされない罪を、あいつに対して、抱えたままなんだから……。



「日差しが  ビルに反射して」


瞬間、心臓に刃物でもつきたてられたように、驚きが走った。聞こえてきた歌声は、まるで自分を非難するみたいに、後ろ指でもさすみたいに、彼の心境とは対局の、楽し気なフレージングで脳裏の楽譜をソルフェージュしている。


「……あらら。
 Tenorさんのおっかけが聞こえてこないわね」
「……。


 …ごめん。何?」
「別に、謝ることないけど。

 何も無いわよ。歌いたいから歌ったの。
 


 あなたは?
 頭が痛いから抑えてるの?」
「…まあ、うん」
「woops!
 だめじゃない、ならこんな寒いとこ居ないで
 保健室行かなくちゃ!」
「ああ、うん…そうする。


 じゃあ」


相手の目をまったく見ずに応じて、逃げるようにこの場を立ち去ろうとしたせいか、握っていたケータイを落としてしまった。画面に少しヒビが入ったが、それも気にせずに直人は、それよりもここから逃げることを優先する。


しかしスマホを落としたこともあってもたついた彼は、追い打ちをかけられてしまった。


「高見君。


 オーディション。ベストをつくしましょうね」
「……」
「楽しみましょ。
 ね…?」


負けるとわかってるオーディションを?楽しむ?
都子や好雄の前で吹くのに、どの面下げて今更吹部になりきれる?


そんなことを考えると、もはやなけなしの「うん」すら受け答えができなくなっていた。


ひたすら脱兎のごとく階段を駆け下り、男子トイレの個室に入ると、



「うっ、


 うげええええええええええええええおあああ……」



胸の中で泡立っていた何かを、思い切り吐き出した。それが喉を通る時、焼けるように熱くて、やけどするかと思った。でもそれが、鳥肌が立つほどに気持ちが良くて、情けなくて、自分に似つかわしいと思うと、居るはずも無い、魂の救済を行う高名な天使から許しの札を得たかのように、現実感を通り越した精神の世界の自分が、満たされていくのを感じて、震えた。



ああ、死にたい。
……いや、違う。死ぬのは簡単だけど、死んで許される罪じゃない、きっとあいつは俺を許さない、今も恨んでいるから。



ああ、助けて。
……いや、ダメだ。誰も本当の俺なんて見ない。俺は助けられて幸せになるような資格もない。




――じゃあ、どうすれば生きていける?
どうすれば罪を償える?



具体的に、建設的に考えれば、いつもの「吹奏楽部のフリ」をした高見 直人なら、かっこいいことをサラりと言ってのけ、魔法だ何だと奇跡を起こすのだろうか。


…でも本当の俺はそうじゃない。
卑怯いんだ、自己中で人のことなんてまるで感心が無い、他人に嫌われるのが怖くて仕方ない、そういう人間なんだ…。



――そんな俺ができる罪滅ぼしなんて、もう。


「直人君!
 部活、一緒に行こっ!」
「…ごめん。ちょっと用事あるから」
「…あ、そうなんだ!
 じゃあ、後でね!」
「…チッ。
 
 …頭にガンガン響くから
 あんま大きい声出さないで」
「あ…ごめん……」


…光にもこれ以上悪く思われたくなんてない。
ならいっそ、話さない方がいい。



敬愛する他人を傷つけて、自分を貶めて、本当に欲しいものから自分を遠ざけること。それが、一番自分を傷つける。自分が傷つけば傷つくほど、罪滅ぼしになった気がして、誰かからやり返されるのもまた気持ち良くて、また自己嫌悪に陥って、背負う罪は増え、循環は続いていく。



それが、内に眠る高見 直人の正体だった。
彼が見てほしいのに見られたら困る、厄介なこと極まりない、本当の俺。結局自分は、失敗したのが悪いのかもしれない。和泉に対して罪を作らなければ、中学の吹奏楽部で自分が早くからドロップアウトしていれば、こんなに罪だらけの背中にはならなかっただろうか。


もう取返しはつかない、音楽と同じだ。
一度やってしまったミスは消えない。時間の流れの中に刻み込まれ、人の目や耳に睨まれて、吹奏楽コンクールの評価みたく、その人間の価値を下げるのだ。


手遅れだ、高見 直人の人間評価は、姿も見えぬ悪魔や天使によってCだのDだの好き勝手をつけられた、これ以上挽回を試みようとも、犯した罪は消えることなど無い。


―と、高見 直人はどこか考えている節があった。

潜在的なものでもあり、言葉や考えにはまとまりきっていないが、中学で音楽を厳しく突き詰めてきた彼にとって、ミスは許せないものであり、やってはいけないことなのだ。後始末は利かず、「まず、やってしまうこと自体が罪」だからやってしまった後のことは考えてはいけない。だからやってしまった者は脱落者、そういうものなのだろう。


失敗など、したくもなかった。
罪を背負わず、みんなと居たかった。


みんなって誰?
それは、初めて「失敗」を犯した時から意識し出した、あのコミュニティ。


…詩織とケンカして、光ももう居なくなって、都子もなんかよそよそしいって思うことが増えて。


もうみんなと普通に遊べないのかって思ってた。
俺は…怖かったんだ。みんなと居られなくなることが。



けれど彼は、まだ完全に失敗したわけではない。小さい頃からの居場所は、未だ彼からすべて奪われたわけではなかった。





またサックスになりきった練習の後、すぐに逃げ込んだのは、職員室。


「…失礼します」
「あら、直人君…。
 
 どうしたの?今日は、居残りは…?


 ……何か、あったの?」
「先生。


 話、聞いてもらえませんか」
「話…?


 うん…。戸締りが終わったらいつものところ、
 いらっしゃい。どこかで話しましょう」
「うん…。


 ありがとう、」




華澄お姉ちゃん。




多分、つづく








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